artscapeレビュー

下平千夏─implosion point─

2011年01月15日号

会期:2010/12/04~2010/12/25

INAXギャラリー[東京都]

緊張と弛緩。人間の身体がこの相反する二つの運動によって駆動しているように、下平の作品には運動の基本的な原型が垣間見える。大量の輪ゴムを連結した線を一本により集め、一方をきつく縛り上げる反面、もう一方を放射状に拡散させて空間の隅々で固定する。すると、線であることを失念するほど硬化したゴムの塊がおそるべき内向的な求心力を連想させるのたいし、四方八方に飛び散る無数の線が爆発的な外向性を体感させるのである。空間を両極に引き裂く力の狭間に私たちを追い込むところに、下平の作品の魅力がある。

2010/12/09(木)(福住廉)

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