artscapeレビュー

池田龍雄──アヴァンギャルドの軌跡

2011年02月15日号

会期:2010/10/09~2011/01/10

川崎市岡本太郎美術館[神奈川県]

40年代の自画像から、50年代のシュルレアリスムや社会的テーマを描いたルポルタージュ絵画、60年代の「百仮面」シリーズと「楕円空間」シリーズ、70年代から始まるパフォーマンス《梵天の塔》、70~80年代の「ブラフマン」連作、90年代の「万有引力」シリーズ、そして2000年代の「場の位相」シリーズまで、池田は60年以上にわたり変転を重ねてきた。アヴァンギャルドらしく、ときにオブジェやパフォーマンスにも手を染めたが、一貫して絵画を捨てなかったことは時代相を考えれば驚異的ですらある。しかし併設されている同時代を生きた岡本太郎や山下菊二らの作品と比べると、はたして池田の代表作はなんだったんだろうと考えてしまう。池田の場合「これ1点」というより、シリーズもの(とりわけ初期の)で記憶に残る画家なのかもしれない。ホームランバッターではなく安打製造機というか。

2011/01/10(月)(村田真)

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