artscapeレビュー

ルーシー・リー展──ウィーン、ロンドン、都市に生きた陶芸家

2011年03月15日号

会期:2010/12/11~2011/02/13

大阪市立東洋陶磁美術館[大阪府]

陶芸家ルーシー・リーの没後初の本格的回顧展として、約200点の作品が展示された。土や釉薬の研究を繰り返しながら技法、制作ともに独自のスタイルを模索したウィーン時代。バーナード・リーチなど、亡命当時、英国で熱狂的に支持されていた陶芸家たちや、陶芸環境とは相容れなかったものの、新たな技術や様式にも積極的に目を向け、高温で焼成する陶器や磁器に取り組んだロンドン時代。ロンドン時代からはじめた掻き落とし技法によりさまざまな文様のバリエーションを展開した鉢や、個別に作成した各パーツを組み合わせ、ひとつのフォルムに成すという手法で独自のスタイルの花器を生み出した円熟期と、会場は大きく三つのセクションに分かれていた。時代を追うごとに洗練されていく作風の変化とその見応えもさることながら、バーナード・リーチやハンス・コパーに宛てた手紙、直筆の釉薬の研究ノートなど、ひたむきに制作に取り組む姿勢や人となりをうかがわせる資料が作家自身への親しみを覚えるもので、いっそう作品が魅力的に感じられる。会場の混雑ぶりにその人気も改めて思い知る機会でもあったが、贅沢な気分になる充実した内容だった。

2011/02/05(土)(酒井千穂)

artscapeレビュー /relation/e_00011486.json l 1231257

2011年03月15日号の
artscapeレビュー