2018年06月15日号
次回7月2日更新予定

artscapeレビュー

村田真のレビュー/プレビュー

松下徹 開閉しろ都市 Part2「常磐の部屋」

会期:2018/01/12~2018/02/03

SNOW Contemporary[東京都]

白い放物線が少しずつズレながら何十本もきれいに引かれている。振り子から絵具を垂らして描いたそうだ。その曲線に沿って切り取った板を組み合わせて1枚の絵にしている。ほかにもペンキを塗った板を円や四角に切り抜いて別の板にはめ込んだり、厚さの異なる板をレリーフ状に重ねたり、余った端材を壁の下に並べたり。フランク・ステラのフォーマリズムとイミ・クネーベルの放置感とストリートアートの即興性をミクストアップした、最良のジャンクアート。

2018/01/24(村田真)

Unknown Sculpture #6 末永史尚「ジェネリック・オブジェクト」

会期:2018/1/11~2018/1/28

ギャラリー21yo-j[東京都]

塀に使われるブロックが8個×2段で計16個、床に斜めに置かれている。そのいくつかにはバツ印や井桁、半円を山型に3つ重ねた青海波などの装飾が描かれている。タイトルの「ジェネリック・オブジェクト」から推測するに、これは最大公約数的なブロック塀か。四角い物体ならなんでも「絵画化」してしまう末永の新作だ(これは床置きなので「彫刻化」かもしれない)。壁には高さ5センチ、厚さ2センチほどの正方形や円形を組み合わせたような物体が突き出ている。が、展示している高さがそれぞれ異なり、色も赤や青などさまざま。これはなんだか見覚えがあるな……、この形、この大きさから察するにメジャー(巻尺)ではないか。ちょうど壁の高さを測っている状態にも見える。

ギャラリーの隅に目を転じると、ベージュと水色の四角い平らな箱がひとつずつ。これはなんだろう? ヒントは手ごろなサイズと、側面にある、折り曲げてできたような三角形にありそうだ。作品リストを見ると、正解はコピー用紙の包み。ま、正解もハズレもないが、モチーフはどれもそこらにある身近なモノばかり。それを「ジェネリック・オブジェクト」に還元して、壁、床、壁と床の境界といった絵画や彫刻の生息場所に置いている。いやーおもしろい。ギャラリーを出たら右手に青海波のブロック塀が目に入って来た。ここにあったか。


2018/01/18(村田真)

村上華子展 ANTICAMERA(OF THE EYE)

会期:2017/12/11~2018/1/19

第一生命ギャラリー[東京都]

重厚な第一生命日比谷本店のビルを入ってギャラリーに向かうと、入口から金の額縁が目に飛び込んでくる。このギャラリーには似つかわしくない作品だなと思いつつ入室してみると、額縁ではなく、縁が黄金色をした大きなプリントであることがわかる。いやそれは最初からわかっていたんだけど、いちおう書き出しとして知らんぷりして書いてみました。第一生命がスポンサーを務める「VOCA展」で昨年、佳作賞を受賞した村上華子の個展。「ANTICAMERA(OF THE EYE)」と題するシリーズは、100年ほど前に生産されたものの、未使用のまま残されていた最初期のカラー写真「オートクローム」の乾板を現像したプリント作品。だからなにかが写っているわけではなく、100年のあいだにわずかながら光学的・化学的変化を起こしてシミのような偶然の模様が成長したのだ。額縁のように見えたのも、乾板の周囲にたまたま瑪瑙のような美しいパターンが現出したもの。作者もこれを見て「お、これは絵画だ!」と思ったのではないか。

2018/01/16(村田真)

中国革命宣伝画展

会期:2018/01/10~2018/01/30

明治大学博物館[東京都]

昨年、明治大学現代中国研究所編で白水社から出版された『文化大革命』の連動企画展。1966年から76年までの文化大革命時につくられたプロパガンダ用のポスターやビラなど100点以上を中心に、写真、毛沢東語録、バッジなども出品。ポスターやビラの原画は写真に基づいた絵が多いが、なかには歴史画のようなリッパな図柄もある。中国に現代美術が到来するずっと昔のことだが、こうした西洋的なリアリズム表現は、1938年に革命の聖地といわれる延安に創設された魯迅芸術学院が大きな役割を果たしたらしい。パンフレットによれば、「その手法は単純で、中国共産党史観に基づいて善悪を明確に区別し、無産階級の労働者(工)、農民(農)、軍隊(兵)のいわゆる「工農兵」を、それらを指導する毛沢東や共産党とともに大きく、明るく、爽やかに描き、国民党や日本軍、そして有産階級を卑屈に、小さく、暗く表現した」。なるほど毛はひときわ大きく、明るく、ハンサムに描かれている。あれ? 日本人は卑屈に、小さく、暗く描かれてたっけ? 小さすぎて暗すぎて気づかなかったかも。

2018/01/13(土)(村田真)

TOP Collection アジェのインスピレーション ひきつがれる精神

会期:2017/12/02~2018/01/28

東京都写真美術館[東京都]

20世紀初めにパリの街角を撮り続けたウジェーヌ・アジェと、その写真が後世に与えた影響を探る展覧会。アジェのほか、マン・レイ、ベレニス・アボット、リー・フリードランダー、森山大道、荒木経惟らの作品が出ているが、なんてったって見ごたえがあるのはアジェだ。いってしまえばただのパリの街角を写した風景写真なのに、なんでこんなに見飽きないんだろう? たぶん、それがいまもほとんど変わらないパリの街角だからであり、また、建築の細部まで写し込まれているからであり、モノクロゆえに郷愁を呼び、想像力をかき立てるからでもあるだろう。もっと簡単にいうと、記録性、情報量、芸術性を兼ね備えているからだ。なんだ、写真の重要な要素ばかりじゃないか。後続の写真家に影響を与えたというのもうなずける。

さて、こうしてあらためてアジェの写真を見てひとつ気づいたのは、意外と人が写ってるということ。なんとなくアジェの写真はパリの無人の風景、つまり人のいない時間帯を狙って撮影したものだと思っていたが、そんなことはなさそうだ。彼は人の有無にかかわらず撮影したが、長時間露光のため人が消えたりぼんやりと写ってしまい、結果的に無機質の建築ばかり目立ち、人がいたことに気づかないのだ。なるほど、こういうのを「不動産写真」と呼んでみたい。今回はアジェの油絵も出ていて、これがなかなか興味深い。《(樹)》というタイトルどおり樹を描いているのだが、ふつう木らしさの出る枝葉を描くものなのに、彼は地面から幹が生えてる下のほうしか描かず、代わりに背景に下生えの低木を描いているのだ。アジェがなにを見ようとしていたかがうかがえる絵だと思う。

2018/01/12(金)(村田真)

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