2018年01月15日号
次回2月1日更新予定

artscapeレビュー

五十嵐太郎のレビュー/プレビュー

模型世界──探求するかたちの蒐集──

会期:2017/09/29~2017/10/13

東北大学トンチクギャラリー[宮城県]

東北大の五十嵐研による「模型世界」展がスタートした。昨年の「先史のかたち」展では縄文土器を渦状に並べたが、今回は模型をテーマに多分野のコレクションを借り、屏風を共通モチーフとしながら、それぞれの展示物にふさわしいオリジナルの什器を制作し、現代における驚異の部屋を演出した。今回、アーティスト枠としては、宮城大の建築家、中田千彦による連作の模型も参加している。各ジャンルの作品解説やコラムを収録した「模型世界」展のカタログでは、1冊の本なのだが、四種類のページの開き方がある特殊な製本に挑戦した。せんだいスクール・オブ・デザインで制作した「S-meme」の実験と同様、紙ならではの読書をデザインしたものだ。また日本電気硝子が協賛した見えないガラスを一部の什器で用いたが、本当に映り込みがなく、目の前にガラスがないかのような視覚体験に多くの来場者が驚いていた。

写真:上=会場風景 中=中田千彦の模型 下=見えないガラスを用いた展示

2017/09/30(土)(五十嵐太郎)

アイリーン・グレイ 孤高のデザイナー

Bunkamura ル・シネマ[東京都]

字幕をチェックするために、一足早く、研究者、学芸員、コレクターの証言やコメントをもとに、アイリーン・グレイの生涯をたどるドキュメンタリー映画『Gray Matters』を見る。E.1027が共作でなく、彼女個人の作品という説も提出されるほか、ル・コルビュジエとの関係で知らなかった興味深い事実が多く、発見が多い。彼女の再評価において、ジョセフ・リクワートの功績も大きかった。先に公開されたアイリーンの映画『追憶のヴィラ』は、ル・コルビュジエとの関係や奇跡の住宅E.1027がメインであり、建築家として彼女を再評価するものだったが、この映画は家具やインテリアデザインの仕事に注目したことも特徴である。

2017/09/29(金)(五十嵐太郎)

窓学10周年記念 窓学展「窓から見える世界」オープニングトークイベント

会期:2017/09/28

スパイラルカフェ(スパイラル1F)[東京都]

窓学展のオープニング・トークの司会をつとめた。今回、窓の物語学で参加している原広司は、ラテン・アメリカの想像力の系譜をたどりつつ、レアンドロ・エルリッヒの登場から、シュルレアリスムを夜の夢(無意識)と白昼夢(論理的)に分ける視点を提出し、彼は後者だと論じる。レアンドロは、ヒッチコックの映画『裏窓』をモチーフにした初期の作品から、「窓と梯子」のシリーズまで、自作から窓関係のものを紹介した。なお、スパイラルの新作は、かつて青山にあったかもしれない近代の看板建築的なイメージを重ねている。2人とも、物語に影響されて作品を制作するというよりも、まさに物語と同様に建築やアートをつくっていることが興味深い。

2017/09/28(木)(五十嵐太郎)

窓学10周年記念 窓学展「窓から見える世界」

会期:2017/09/28~2017/10/09

スパイラルガーデン(スパイラル1F)[東京都]

青山のスパイラルにて、筆者が監修した窓学10周年記念展がオープンした。内容は二部構成になっており、ひとつはこれまでの10年のリサーチの成果から、小玉祐一郎、五十嵐、中谷礼仁、村松伸+六角美留、佐藤浩司、塚本由晴の研究展示である。もうひとつは、窓に触発された新作を発表するレアンドロ・エルリッヒ、ホンマタカシ、鎌田友介による現代アートだ。会場がせっかくのスパイラルなので、ただの研究発表とせず、窓に関係する現代アートを軸にしながら、研究の展示という形式に挑戦し、建築以外の人も楽しめるような内容を目指した。最終的には入場者が1万5千人を超え、大盛況となったのも、アートの力が大きかったと思われる。

写真:上=研究室展示 左中=レアンドロ・エルリッヒ 右中=ホンマタカシ 下=鎌田友介

2017/09/27(水)(五十嵐太郎)

《聖ミクラーシュ教会》

[チェコ、プラハ]

ディーツェンホーファーが設計した《聖ミクラーシュ教会》は、東欧ゆえに、逸脱が激しいバロック建築である。一部修復中のためか、今回は上階も上がることができ、単眼鏡で天井近くの細部を観察した。おかげで、石材、木材、漆喰、絵画の空間イリュージョンという四種類の仕上げで、精度のレベルを巧みに使い分けしていることが確認できる。同じバロックでも、ボロミーニは精密だけど、結局、ここまで巨大な空間をつくらなかった。またサンティーニは東欧の片田舎できわめて独創的な形態ながらも、低予算で仕上げに難ありの作品を手がけている。これらと比べることで、大都市のプラハでディーツェンホーファーがなしえた教会建築の意味がだいぶわかった。

2017/09/20(水)(五十嵐太郎)

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