2018年01月15日号
次回2月1日更新予定

artscapeレビュー

建築に関するレビュー/プレビュー

《神石高原町営小畠住宅》

[広島県]

土井一秀が手がけた《神石高原町営小畠住宅》は、平屋が直線二列で並ぶ町営住宅の老朽化に伴う建て替えである。その結果、雁行形による再配置で、各戸の視線をずらし、小さな集落のような空間のまとまりをつくる。全体の入口にある土を盛った部分も魅力的だ。各戸はすべて同じではなく、微妙にプランが違い、バリアフリー対応の室内を見学した。片流れ屋根は、天井高を上げることで、面積以上に広く感じる空間をもたらしつつ、外観にはキャラを与える。

2017/09/05(火)(五十嵐太郎)

《三次市民ホール きりり(KIRIRI)》

[広島県]

青木淳が設計した三次市民ホールを見学する。災害対策として、ピロティの上に施設全体が載っているが、下はすべて駐車場なので、郊外のファミレス型の空間構成とも言える。ただし、この建築にはいわゆる正面性がない。中庭や開口をあちこちに散りばめながら、ホールや楽屋も上部からの採光を可能とし、自然光を生かすのも、電源を喪失しても内部が明るさを維持することを想定しているからだ。なお、スタジオ群の上部空間は冗長性をもつ、リノベーション風のデザインであり、青木らしさが感じられる。

2017/09/04(月)(五十嵐太郎)

《ONOMICHI U2》

[広島県]

尾道の谷尻誠/SUPPOSEによる《ONOMICHI U2》を訪れる。外から見ると、ほとんど手を加えていないように見える倉庫だが、内部に入ると、カッコいい空間が展開する。水辺のデッキも気持ちがよい。立地を生かした、見事なリノベーションによる成功例である。またソフト面に注目すると、サイクリスト向けのホテルもユニークなプログラムだが、飲食店やショップのセンスがよく、これと比較すると、残念ながら横浜の赤煉瓦倉庫の商業空間がださく思えてしまう。

2017/09/04(月)(五十嵐太郎)

徳正寺《矩庵》

[京都府]

京都の徳正寺を訪問した。住居部分の奥、庭の隅に持ち上げられた藤森照信の《矩庵》がある。もともと外の便所があったところで、阪神淡路の震災で壊れ、それを契機に藤森にとって初の独立茶室がつくられた。いまでこそ、彼は数多くの茶室を手がけているが、これ以前は《ニラハウス》の内部のロフトにある茶室しかなく、これが初めての独立した茶室建築となった。大きな開口や椅子の導入など、藤森茶室の原則が最初からもう採用されている。なお、施主は縄文建築集団のメンバーでもある。

2017/08/26(土)(五十嵐太郎)

プレビュー:神戸港開港150年記念「港都KOBE芸術祭」

会期:2017/09/16~2017/10/15

神戸港、神戸空港島[兵庫県]

今年は神戸開港150年ということで、神戸市内ではさまざまな催しが行なわれている。本展は美術系イベントの中核を成すものだ。出展作家は、小清水漸、新宮晋、林勇気、藤本由紀夫、やなぎみわなど国内組16組と、韓国・広州ビエンナーレ参加作家と中国・天津の作家から成る海外組。地元組で手堅くまとめた印象で、目新しさに欠ける感もあるが、ここは彼らに頑張ってもらうしかない。注目すべきは鑑賞法で、「アート鑑賞船」に乗って神戸港を遊覧しながら、全体の2/3程度の展示が見られる。このプランは過去に「神戸ビエンナーレ」でも実施されたが、港町・神戸の魅力を肌で感じられてとても良かった。問題は船と作品の距離。どうしても遠距離からの鑑賞になるので、強烈な存在感を放つ作品を揃えることがポイントになるだろう。神戸空港島での展示は未知数だが、地元民でも馴染みが薄い場所なので逆にポテンシャルを感じる。今回の展示が上手くいけば、将来的に空港島でのアートイベントが増えるかもしれない。この芸術祭は単発イベントであり、規模やラインアップを見ても中庸感が否めない。大風呂敷を広げるのではなく、地元市民にどれだけ認知され、体験してもらえるかが勝負だ。

2017/08/20(日)(小吹隆文)

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