2018年04月15日号
次回5月15日更新予定

artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

小島久弥「Critical Point True Colors of the Ghost -お化けの正体-」

会期:2018/02/17~2018/03/10

CAS[大阪府]

「1945年、ニューメキシコにおける人類初の核実験の写真」に着想を得た新作インスタレーションが発表された個展。DMに印刷された写真には、上空に出現した巨大な火の球と、その真下の発射台を包むようなドーム状の半円形の球体が写っている。会場では、この光景を「再現」した映像が、アナログな仕掛けの露呈とともに提示されている(特撮のようにミニチュア模型を用いて撮影した衝撃的な「映像」とそのからくりを同時に見せる手法は、伊藤隆介とも共通する)。スクリーンに映し出されるのは、街並みのシルエットと上空で炸裂する巨大な火の球だが、実は「街並みのシルエット」は手前の机の上に置かれた文房具やミントの容器、糸巻などの投げる影であり、スクリーンの裏側では蛍光灯が明滅を繰り返しているのだ。よく見ると、「発射台」の位置には「大阪の通天閣のフィギュア」が置かれており、「通天閣」が「第二の原爆ドーム」になるような悪夢的な未来のビジョンがギャグのように提示される。

「チープで典型的なお土産品」を用いた悪ノリのような手つきは、「原爆ドーム」と「大浦天主堂」の自作のスノードームへと引き継がれる。小島によれば「ニューメキシコでの核実験の写真がスノードームを思い起こさせた」と言うが、「半円形の球体」という形状的な連想は、原爆ドーム、「傘」すなわち核の傘、シェルターといった連想を経て、ミニチュアの世界へと再び着地する。しかしこの「スノードーム」に閉じ込められた空間は、シェルターのように保護された空間なのか、それとも隔離された立ち入り禁止の空間なのか。舞い散る「スノー」は、実は「死の灰」ではないのか。私たちはそれを、「映像的体験」としての原爆とともに、無害なお土産品として──つまりキッチュな記号として消費してしまうのだ。そうした感性への批評こそを本展の根底に見出すべきである。


《Critical Point -True Colors of the Ghost》
映像インスタレーション/2018 サイズ可変

2018/02/17(土)(高嶋慈)

DOMANI・明日展PLUS×日比谷図書文化館 本という樹、図書館という森

会期:2017/12/14~2018/2/18

日比谷図書文化館[東京都]

文化庁の海外研修制度(在研)の成果を発表する「DOMANI・明日展」の関連展示。きっかけは昨年の「DOMANI・明日展」の出品作家の折笠良が、ギャラリートークで彫刻家の若林奮の著書『I.W─若林奮ノート』について触れたこと。若林も在研の初期のころフランスに滞在した経験があり、そのとき訪れた先史美術の遺跡について書いたのが『I.W─若林奮ノート』だ。同展は、当時若林が収集した石片や絵葉書、写真、スケッチブックなどを中心に、「本」に関連する在研経験者の作品を選んだってわけ。会場をあえて日比谷図書文化館にしたのもそのためだ。手描きアニメの折笠や、ペラペラマンガみたいなアニメの原型を出した蓮沼昌宏、ヨーロッパの古い図書館を鉛筆で描いた寺崎百合子らの作品は直接的に本をイメージさせるが、小林孝亘や宮永愛子らはいささかこじつけっぽい。


帰りぎわに上階の図書室にも藤本由紀夫の展示があるといわれたものの、時間がないのでスルーしようと思ったが、やっぱり急ぎ足で見ることに。いやー見てよかった。本棚の隙間にアルファベットのパスタを散りばめたり、「Look」「Book」と1字ずつ変えながら「Head」「Read」へとアナグラムしたり、「ECHO」という文字を鏡の上にのせたり(天地逆転しても変わらない)、全紙サイズの種類の異なる紙を閉じた超大型の白紙本を置いたり、文字と本をテーマに遊んでいるのだ。これこそ「本という樹、図書館という森」を楽しむ作品群にほかならない。やっぱり図書館でやるなら展示室より書棚や閲覧室を使いたい。っていうか、よく使わせてくれたもんだ。

2018/02/17(村田真)

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伊丹豪「photocopy」

会期:2018/02/13~2018/03/03

The White[東京都]

伊丹豪が2017年にedition nordから出版した『photocopy』は意欲的な造本の写真集だった。ページが全部バラバラになっていて、一カ所だけピンで留めてある。つまり、横にスライド(回転)しないと写真図版が見えないようにつくられているので、否応なしに一枚の写真だけではなく、その前後の複数の写真が目に入ってくることになる。「何の疑いもなく本をめくること、見たような気になることへの批評」として組み上げられたこの写真集は、トリッキーだがスリリングな視覚的な体験を味わわせてくれるものだった。

今回の伊丹の個展では、「その本の構造を逆手にとり、逆のアプローチで空間構成を試み」ている。具体的にはプリントの大きさを極端に変え、フレーム入り、アクリル裝、直貼りなど多様なやり方で壁に写真を並べるやり方だ。こちらは一枚の写真に視線を収束させることを回避し、部屋全体の空間を一挙に体験させようというもくろみである。

それはそれでうまくいっているとは思うが、このような「ティルマンス展示」はこれまでも多くの写真家たちが試みているので、それほど新鮮味はない。それとともに、人、モノ、建物などが混在する都市空間を縦位置で切り取ったイメージ群が、どんな論理で(あるいは非論理)で構築されているのかが、あまり明確に伝わってこない。写真の見せ方へのこだわりから一歩進めて、一枚一枚の写真の意味(あるいは非意味)の連なりの必然性へと観客を導いていく枠組みが必要になるのではないだろうか。

2018/02/14(水)(飯沢耕太郎)

アーツ・チャレンジ2018

会期:2018/02/14~2018/02/25

愛知芸術文化センター[愛知県]

公募の審査を担当したアーツ・チャレンジのオープニングに出席した。会場となる愛知芸文センターは、現在、改修中だが、もともとこの企画は非展示室を使うことを主旨としていたことから、大きな影響は受けなかった。むろん、いくつかの展示場所は減ったが、作家の数が減ったことで、より精鋭が揃う結果となった。今年は第10回のアーツ・チャレンジになるが、アートの想像力によって、まだこんな空間の使い方もあるのかという発見がもたらされたり、逆にアーティストには普段のホワイト・キューブと違う空間に挑戦してもらうケースもあった。

まず地下の入口では、椋本真理子のポップでミニマルな土木彫刻(ダムやプール)が出迎える(いずれも円形であり、吹き抜けの上部から見ると面白い)。続いて、左のアートプラザ内のビデオルームでは、山本愛子が繭糸を使い、音を可視化する繊細なランドスケープを四畳半サイズの台の上で構築する。そして小宮太郎がさまざまな色のマスキングテープを駆使して、既存のドアを擬態する作品(このエリアは通常、絵画を置く)、通路に並ぶ8つの小さな展示ケースを漫画のコマに見立てた小笠原周によるボクシングの彫刻群、物語化されないドローイング群でスペースXを埋め尽くす小松原智史(期間中も会場にいて、描き続け、作品が増殖した)は、これまでのアーツ・チャレンジにない場所の使い方を提案した。音に誘われ、外部の地下階段を上ると、わらべうたのリサーチをもとにした佐藤美代による完成度が高い映像作品がさまざまなバリエーションを用意し、鑑賞者を飽きさせない。一通り映像を見たあと、階段を下りると、今度は大きな箱からピンポンがゆっくりと落ちていく段差を利用した道楽同盟の作品に気づく。最後は𠮷田絢乃である。渋谷のMONSTER展では小品だったが、今回、彼女はひだと地層の絵が壁を覆う大作に挑戦した。


椋本真理子《Disc-type-Dam 2 / POOL(big pink)》


小宮太郎《doors》

小松原智史《コマノエ》

𠮷田絢乃《レイヤー》

2018/02/14(水)(五十嵐太郎)

桑久保徹展「A Calendar for Painters Without Time Sense 1.3.4.5.7.8」

会期:2018/1/20~2018/2/17

小山登美夫ギャラリー[東京都]

最初に出くわすのは、数十本のイーゼルに掛けられたキャンバス画のある海辺の風景画。画中のキャンバスに描かれているのは《グランド・ジャッド島の日曜日の午後》や《アニエールの水浴》など、スーラの絵だとわかる。画面全体も点描で表わされている。タイトルは《ジョルジュ・スーラのスタジオ》。これを含めて、150号ほどの大作ペインティング6点の展示。いずれも海辺を背景にした巨匠たちのスタジオという設定だ。鮮やかな紺色の空の下、《タンギー爺さん》や《星月夜》が並ぶのはもちろん《フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホのスタジオ》。セザンヌのスタジオの背景にはサント・ヴィクトワール山がそびえ、ピカソのスタジオは《ゲルニカ》に合わせて白黒だ。うれしいことにフェルメールのスタジオもあって、フェルメール作とされる37点すべてを描き込んでいる。意外なのは《キリストのブリュッセル入城》をメインとしたアンソールのスタジオ。6点の中にアンソールを入れるというのはかなりの冒険だ。

さてこのシリーズ、方法は異なるけれど末永史尚の「サーチリザルト」と同じく、かつてコレクターがカタログ代わりに自分のコレクションを画家に描かせた「ギャラリー画」の現代版といってもいいものだ。それだけではない。この6点に対応して鉛筆のドローイングもあり、なぜかカレンダーがついている。ピカソは巨匠中の巨匠ということで1月、フェルメールは描き始めた時期に合わせて3月、アンソールはピンク色の印象が強いので桜の季節の4月、というふうに決められている。もうひとつおまけに、ドローイングの上に1枚ずつレコードがついていて、各画家にインスピレーションを得た日高理樹の曲が録音されているという。ほしくなってまうやろ!

2018/02/14(村田真)

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