2018年01月15日号
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artscapeレビュー

書籍・Webサイトに関するレビュー/プレビュー

カタログ&ブックス|2016年06月

展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。

日本おとぼけ絵画史──たのしい日本美術

著者:金子信久
発行:講談社
発行日:2016年3月3日
定価:2,600円(税別)
サイズ:A5判、192ページ

平等院鳳凰堂の阿弥陀如来坐像、運慶の仏像、尾形光琳の屏風──これら「見事な」造形作品とは対極に位置する「へそまがりな感性」に注目しながら日本美術を眺める。きれいなもの、立派なものだけではない、へんてこでややこしい感性から生み出されたもうひとつの日本の美術の数々を、「苦い」「素朴」「ヘタウマ」などのキーワードとともに紹介。いわゆる「日本らしい美術」のステレオタイプな見方をゆるくときほぐす。



エクソダス──アートとデザインをめぐる批評

著者:暮沢剛巳
発行:水声社
発行日:2016年6月2日
定価:3,200円(税別)
サイズ:A5判、331ページ

現代アート/デザイン批評の分野で注目されてきた著者が、新聞・雑誌・展覧会カタログなどに寄せた文章を集成する批評集。現代美術、展覧会、デザインを論じるほか、マンガやアニメの批評も収録。

[商品説明より]


ルノワールの犬と猫 印象派の動物たち

著者:安井裕雄
発行:講談社
発行日:2016年4月21日
定価:1,600円(税別)
サイズ:148×148mm、96ページ

ルノワールを中心に、同時代を生きた画家たちの作品を、そこに描かれる犬や猫などの動物に焦点をあてて紹介。19世紀フランスの多幸感に満ちたぬくもりを、小振りな1冊に凝縮。


「高齢社会における、人生のつくり方。」の本
LIFE IS CREATIVE展ドキュメントブック

企画・制作:デザイン・クリエイティブセンター神戸
アートディレクション&デザイン:TRITON GRAPHICS
発行日:2016年3月
定価:非売品
サイズ:B5判、48ページ

2015年10月にデザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)で行なわれた「LIFE IS CREATIVE展」のドキュメントブック。高齢社会に対するクリエイティブなアプローチを探り、実践していく取り組みを報告。「身近な人が認知症になったらどうしますか?」「定年って必要ですか?」「シニアが恋しちゃだめですか?」など、18の問いかけから議論の手がかりを紐解いていく。また、「年をとったら、本を読もう。」をキャッチコピーにした「65歳からのブックリスト」35冊を選書コメント(一部)とともに紹介。


水屋・水塚─水防の知恵と住まい─

企画:LIXILギャラリー企画委員会
アートディレクター:祖父江慎
デザイン:小川あずさ(cozfish)
発行:LIXIL出版
発行日:2016年6月15日
定価:1,800円(税別)
サイズ:A4判変型、84ページ

平野に聳え立つ孤高の雄姿。人の背を越す高さの盛り土や石垣を「水塚」、その上に建てられた蔵を「水屋」という。かつて頻繁に洪水に見舞われた地域には、そこに住む人々の知恵から生まれた水防建築がある。人、食物、大切な家財道具などを避難させ守ってきた。
日本大学理工学部畔柳研究室での約15年にも及ぶ調査研究を土台に、本書では、中部の木曽三川、関東の利根川や荒川、また四国の吉野川流域などの洪水多発地域に見られる身を守るための10種類の建築構造物類を、撮下し図版と代々受け継ぐ持ち主の声を織り込んだ文章で紹介する。人間サイズを超える堤防が造築される昨今、個人や小さな共同体でつくられた水防建築類の今日的意味合いを巻末の論考で語る。川とともにある暮らしにはその動きを柔軟に受け入れる文化があり、その姿は地域のプロフィールとなって美しく印象づける。

ウェブサイトより]

触発するミュージアム──文化的公共空間の新たな可能性を求めて

編著:中小路久美代、新藤浩伸、山本恭裕、岡田猛
発行:あいり出版
発行日:2016年5月1日
定価:2,700円(税別)
サイズ:B5判、266ページ

書名の「触発」とは、「外界の事物に接することで、驚きやワクワク感などの感情が喚起され、モチベーションが高まり、新しいアイデアやイメージが生成されるプロセス」のことである。では、ミュージアムにおける触発とは何か、触発するミュージアムにはどのような条件が関わっているのか、そしてどうやってそれを研究していけばよいのか──。本書はこうしたリサーチクエスチョンを設け、認知科学やデザイン学の視点からの理論的考察や、国内外のミュージアムの現状分析、ミュージアムでの教育普及活動での実践研究など通して「ミュージアムにおける触発」にアプローチする。


共にいることの可能性、その試み、その記録
──田中功起による、水戸芸術館での、ケーススタディとして

企画:水戸芸術館現代美術センター
デザイン:森大志郎
制作・発行:グラムブックス
発行日:2016年3月31日
定価:1,800円(税別)
サイズ:小B6判、216ページ

2016年2月から5月に水戸芸術館現代美術ギャラリーで行なわれた「田中功起 共にいることの可能性、その試み」展のカタログ。ワークショップから展示に至る、「共にいることの可能性、その試み」の軌跡のほか、ふたつの対談(田中功起×毛利喜孝、甲斐賢治×藤井光)および、キュレーターによるテキストを収録。


2016/06/14(火)(artscape編集部)

カタログ&ブックス│2016年5月

展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。

発酵の技法──世界の発酵食品と発酵文化の探求

著者:Sandor Ellix Katz
発行:オライリージャパン
発行日:2016年4月23日
定価:3,888円
サイズ:24×19×3cm、524ページ

本書は、ザワークラウト、ヨーグルト、ケフィア、ビール、納豆など、世界中で伝えられてきた発酵食品の製法を食材別に解説。大量生産された食品を食べるだけの消費者として飼いならされた私たちが、再び生産者になるためのガイドブック。
もとより人類はより大きな生命の網の中で共進化してきた存在だが、次第に自然界から遠ざかり、動物や植物、菌類、そして体内のバクテリアの認識を失い、それらと意識的に対話することがなくなってしまった──本書は目に見えるかたちでこれを意識すること(生命愛、biophilia)や、関係を涵養するための方法として「発酵」を位置付ける。私たちはバクテリアを自身の細胞の起源や、相利共生のパートナーとして認識するだけでなく、私たちの廃棄物を処理してくれる唯一の存在として、生物学的な将来の進路とみなさなくてはならないと著者は主張する。



明日に架ける橋──ggg展覧会ポスター1986-2016

発行:公益財団法人DNP文化振興財団
監修:永井一正
デザイン:Kijuro Yahagi
定価:3,000円(税込)
サイズ:26.3×19.7×3.4cm

2016年4月15日から5月28日までギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催された企画展「ggg30周年記念展 明日に架ける橋 gggポスター1986-2016の公式図録。同展で展示された1986年3月の第1回企画展「大橋正展」から、日比谷図書文化館で開催された特別展「祖父江慎+コズフィッシュ展」まで、360枚におよぶポスターを通して、ggg展覧会の軌跡を一望する。


YCAM GUIDBOOK 2016-2017

発行:山口情報芸術センター[YCAM]
発行日:2016年4月
サイズ:18.2×25.7cm、34ページ

山口情報芸術センター[YCAM]の2016年度の事業をまとめたガイドブック。
YCAMの活動の特徴であるアーティストとのクリエイション、教育プログラム、地域開発の事業を紹介するほか、山口の観光地や宿泊、飲食店の情報を掲載。特集では俳優・染谷将太とメディアアーティスト・真鍋大度によるYCAMでの制作活動に関する対談や、2013年に『d design travel 山口』を上梓したD&DEPERTMANTのナガオカケンメイのインタビューを収録。


日産アートアワード2015:ファイナリスト7名による新作展

発行:「日産アートアワード」企画運営事務局
発行日:2016年3月31日
サイズ:29.7×22×0.5cm

日産アートアワード2015の公式カタログ。国際審査員による総評のほか、候補者推薦委員の飯田志保子、原久子、ロジャー・マクドナルド、服部浩之、崔敬華、近藤健一による作品講評を収録。



芸術公社アニュアル 2015-2016

発行:特定非営利活動法人 芸術公社
アートディレクション&デザイン:加藤賢策(LABORATORIES)
発行日:2016年3月31日
サイズ:21×14.7×0.5cm、56ページ

2015年1月に開催された設立シンポジウム以降、日本やアジア各地で、公演やシンポジウム、ワークショップ、レジデンス、ウェブ・プラットフォーム、リサーチなどを行なってきた芸術公社の公式アニュアル。本書は「芸術公社の個々のプロジェクトを横断的に記述し、芸術公社というコレクティブの総体を可視化する」ために編集されている。また、相馬千秋(芸術公社代表理事)とゴン・ジュジョン(台南芸術公社理事)が、東京と台湾の二つの芸術公社の発足から1年を振り返る対談や、ディレクター13名によるエッセイを収録。

2016/05/13(金)(artscape編集部)

カタログ&ブックス|2016年03月

展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。

地域アート──美学/制度/日本

編著者:藤田直哉ほか
発行所:堀之内出版
発行日:2016年02月25日
価格:2,500円(税別)
サイズ:四六判、456ページ

現在、日本のあちこちで「地域アート」が盛んです。
現代アートの最先端は、「地域アート」にあると断言することも可能です。 この本は、そこで作られている作品や起こっている現象について、真剣に考察することを目指した本です。第一線で活躍するアーティストや、学者、批評家の方々に参加していただき、現在の日本で隆盛している「地域アート」について、真剣に考察し、討議し、提案しようとするものです。[出版社サイトより]

米軍が見た東京1945 秋──終わりの風景、はじまりの風景

著者:佐藤洋一
発行:洋泉社
発行日:2015年12月09日
価格:2,400円(税別)
サイズ:A5変型、224ページ

著者が冒頭で大島渚の言葉──「敗者は映像を持たない」──を引用するように、終戦前後の日本は日本人自身による写真記録が空白となる時代である。「都市の記憶における空白を埋める」ために編まれた本書は、米軍が1945年に撮影した170点以上の写真によって構成されている。巻末には本書に掲載されている米国立公文書館の所蔵写真ナンバーを収録。

これからの建築士──職能を拡げる17の取り組み

編著者:倉方俊輔、吉良森子、中村勉
発行所:学芸出版社
発行日:2016年03月01日
価格:2,300円(税別)
サイズ:148 × 210mm、192ページ

建築への信頼が問われる今、必要なのは100万人の「建築士」のバージョンアップだ。専門性を活かしながら、新たな領域と関係性をつくり出して活動する17者の取り組みを、本人たちが書き下ろした方法論と、核心を引き出すインタビューによって紹介。日本全国の建築士が今できる取り組みを見つけ、仕事の幅を拡げられる1冊。 [出版社サイトより]

LIXIL BOOKLET 文字の博覧会─旅して集めた“みんぱく”中西コレクション─展

企画:LIXILギャラリー企画委員会
発行所:LIXIL出版
発行日:2016年03月15日
価格:1,500円(税別)
サイズ:B5変型、136ページ

2016年3月17日〜5月27日のあいだLIXILギャラリーで開催している「文字の博覧会─旅して集めた“みんぱく”中西コレクション─展」のブックレット。国立民族学博物館(通称“みんぱく”)に収められたた中西亮氏によるコレクションを中心に、世界のさまざまな文字の魅力を豊富な図版とともに紹介する。言語学者の西尾哲夫氏やアートディレクターの浅葉克己氏、グラフィックデザイナーの永原康史氏らのテキストを収録。

藤幡正樹 Anarchive No.6

著者:藤幡正樹
発行:éditions Anarchive
国内販売:左右社
発行日:2016年
サイズ:215 × 218mm

アンヌ=マリー・デュゲ氏の企画出版シリーズ「Anarchive」による、メディア・アーティスト藤幡正樹氏の作品集。1970年代のアニメーション作品や、CG作品、コンピューターによる彫刻、1990年代以降のインタラクティブ作品、GPSを用いた大型プロジェクトなど、ほぼすべてを網羅。作品に関する論考や資料、作家自身による作品解説などを収録。本書は作家のレトロスペクティブであると当時にメディア・アート史のアーカイヴでもある。さらに、専用アプリ(iOSのみ)を用いて、過去のインスタレーションの3Dモデルを、AR(拡張現実)技術によって体験することができ、テクノロジーとアーカイヴをめぐるこうした試みは藤幡氏の最新作でもある。

リアス・アーク美術館常設展示図録──東日本大震災の記録と津波の災害史

発行:リアス・アーク美術館
編集・デザイン・レイアウト:山内宏泰(リアス・アーク美術館学芸員)
発行日:2015年2月20日(第2版)
サイズ:B5判、176ページ

リアス・アーク美術館は、震災発生直後から約2年のあいだ行なった震災被害記録、調査活動によって約30,000点の写真、被災物約250点を収集。これらの資料は、「東日本大震災をいかに表現するか、地域の未来の為にどう活かしていくか」をテーマとして編集され、2013年4月に常設展示として資料の一部が公開された。本書は被災現場写真108点、被災物61点、その他歴史資料等約30点の写真を掲載し、写真解説、キーワード等のテキストをすべて収録している。 また、同常設展を東京地区で初めて大規模に紹介する展示として、目黒区美術館で「気仙沼と、東日本大震災の記憶」展が3月21日まで開催している。

2016/03/14(月)(artscape編集部)

金川晋吾『father』

発行所:青幻舎

発行日:2016年2月18日

何とも形容に困る、絶句してしまうような写真集だ。金川晋吾は、サラ金で借金を作っては「蒸発」を繰り返す父とその周辺の状況を、2008~09年にかけて撮影した。それらの写真群が写真集の前半部におさめられ、同時期に金川が執筆した「日記」をあいだにはさんで、後半部には「毎日自分の顔を一枚と、写す対象は何でもいいので何か一枚」撮るようにと父に指示して撮影してもらった「自撮り写真」1000枚以上が収録されている。
金川が、なぜ父の写真を撮り始め(撮ってもらい)、このような写真集にまとめたのか、その動機の明確な説明はない。だが、写真撮影を通じて、人間存在の不可解なありようを解きほぐし、見つめ直そうという強い意志を感じとることができる。否応なしに始まった写真撮影の行為が、次第に確信的になっていくプロセスが、ありありと浮かび上がってくるのだ。特に、父が撮影した「自撮り写真」を見ていると、それらが何とも言いようのない力を発していて、じわじわと見えない糸に絡めとられていくような気がしてくる。ほとんど無表情で、カメラを見つめる中年男の顔、顔、顔の羅列は、写真を撮るという行為にまつわりつく「怖さ」(同時に奇妙な快感)を、そのまま体現しているように思える。気になるのは現在の父との関係だが、そのあたりをフォローした新作の発表も期待したい。
なお、作者の金川晋吾は1981年京都生まれ。神戸大学発達科学部卒業後、東京藝術大学大学院美術研究科(先端芸術表現専攻)で学んだ。本作が最初の本格的な写真集になる。

2016/02/23(水)(飯沢耕太郎)

田附勝『魚人』

発行所:T&M Project

発行日:2015年11月11日

田附勝は2006年頃からデビュー作の『DECOTORA』(リトルモア、2007)や、第37回木村伊兵衛写真賞を受賞した『東北』(同、2011)などの撮影で、東北地方に足を運びはじめる。『その血はまだ赤いのか』(SLANT、2012)や『KURAGARI』(SUPER BOOKS、2013)では、鹿狩りをテーマに撮影を続けた。その田附の東北地方への強い思いが形をとったのが、今回写真集として刊行された『魚人』のシリーズである。「八戸ポータルミュージアムはっち」が主催する「はっち魚ラボ」プロジェクトの一環として、2014年度から約1年かけて八戸市大久喜地区や白浜地区などの沿岸部で撮影された。
写真集は、6×9判の中判カメラでじっくりと腰を据えて撮影された写真群と、35ミリカメラによる軽やかなスナップの2部構成になっている。漁師たちの暮らしの細部を、舐めるような視線で浮かび上がらせた6×9判のパートがむろんメインなのだが、フィールド・ノートの趣のある35ミリ判の写真を、コラージュ的にレイアウトした小冊子もなかなかいい。むしろこちらのほうに、皮膚感覚や身体感覚をバネにして被写体に迫っていく田附の写真のスタイルがよくあらわれているようにも思える。
撮影中に、東日本大震災後の津波で大久喜地区から流された神社の鳥居の一部(笠木)が、アメリカオレゴン州の海岸に流れ着き、ポートランドで保管されているというニュースが飛び込んできた。田附は早速ポートランドに飛び、ガレージに保管されていた笠木を撮影するとともに、当地の漁師たちの話も聞いた。それらの写真が、写真集の後半部におさめられている。そこから「海に対する仕事の姿勢は日本もアメリカも変わらないこと」、つまり「魚人」たちの基本的なライフスタイルの共通性が、見事に浮かび上がってきた。
なお、この『魚人』は赤々舎から独立した松本知己が新たに立ち上げたT&M Projectの最初の出版物として刊行された。丁寧なデザイン・造本の、意欲あふれる写真集になったと思う(デザイナーは鈴木聖)。またひとつ、期待していい写真集の出版社が名乗りを上げたということだろう。

2016/02/22(月)(飯沢耕太郎)

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