2018年01月15日号
次回2月1日更新予定

artscapeレビュー

デザインに関するレビュー/プレビュー

追悼水木しげる ゲゲゲの人生展

会期:2017/07/26~2017/08/14

大丸ミュージアム・神戸[兵庫県]

2015年、93歳で亡くなった水木しげるの生涯を彼の作品とコレクションから振り返る展覧会。少年期から晩年に渡るまでのスケッチや絵画、『ゲゲゲの鬼太郎』や『悪魔くん』に代表される漫画の原稿から、エッセイ、出版物、愛蔵品等まで、幅広い展示物によって彼の人生と人となりを網羅的に知ることができる。水木は少年時代に天才画家と呼ばれたそうだが、それも納得するほどの画力。多彩なジャンルを手がけたなかでも、絵本や童画の愛らしい作品は、後年の妖怪画とは異なる水木ワールドで驚く。また彼は図案職人を目指したこともあり、本展では珍しいデザイン作品を見ることもできる。とはいえ、水木の仕事に決定的な影響を与えたのが、戦争の体験だったろう。本展では戦記漫画や手記原稿が展示され、生々しい体験を伝える。以後、紙芝居画家を経て、漫画家デビューしてから1960年代以降の活躍はファンならずとも、よく知っているところ。やはりなんといっても鬼太郎シリーズに見られる、水木のキャラクター造形の面白さには感服する。どんな先例にも負わない、個性的なキャラクターの数々は、水木がいかに作画資料を熱心に収集研究して、新奇性を追究したかを示している。水木の人生を追っていくと、彼のあらゆる経験や哲学が作品世界にいきいきと息づいていることに気付く。そして、自らの波乱万丈な生涯を感じさせないような、「なまけ者になりなさい」と記された水木のあたたかい言葉に、ほろっとさせられる。本展はこのあと、福岡、名古屋、沖縄に巡回する。[竹内有子]

2017/08/12(土)(SYNK)

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神戸港と神戸文化の企画展 神戸 みなと 時空

会期:2017/01/25~2017/12/28

デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO[兵庫県]

神戸開港150周年を記念して、デザイン・クリエイティブセンター神戸KIITO(旧神戸市立生糸検査所)では、①「TOY & DOLL COLLECTION」②「陳舜臣と神戸ミステリー館」③「鈴木商店記念館」の三本立ての展示が行なわれている。それぞれ、神戸ゆかりの文化/文学/産業を軸にして、①は世界と日本の玩具を、②は陳舜臣の神戸を舞台にした推理小説『枯草の根』『三色の家』等に登場する場所を再現、③では小説やテレビドラマ『お家さん』でも知られ、大正期に日本一の総合商社となった神戸の「鈴木商店」の歴史を扱う。なかでも興味深いのが、日本玩具博物館との共催による人形文化の展示。日本の郷土玩具、世界の乗り物玩具のほか、とりわけ目新しかったのは、企画展示の「神戸人形」。これは明治中期に神戸で生まれたからくり人形で、土産物として海外にも輸出されるほど人気を博したという。なんとも面白いのが題材のほとんどがお化けであること、当時は「お化け人形」とも呼ばれた。木目を生かした素朴な木の造り、からくりは目が離れたり口を大きく動かしたり、夕涼みしたり釣鐘を持ったりするユーモラスなお化けは日本文化ならでは。大正期以降には量産されて、色調が黒地と赤に統一されたが、戦後に生産は衰退した。阪神淡路大震災で廃絶するも、現在は同館が復元の形をとって再興を目指しているところだという。港町で栄え世界へ渡った神戸人形、次世代への伝承を望みたい。[竹内有子]


「お化け人形」の展示風景

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創造性を紡ぐ拠点を目指して──デザイン・クリエイティブセンター神戸|近藤健史:キュレーターズノート

2017/08/05(土)(SYNK)

拡がる彫刻 熱き男たちによるドローイング 植松奎二 JUN TAMBA 榎忠

会期:2017/07/04~2017/09/28

bbプラザ美術館[兵庫県]

「彫刻とドローイング」をテーマに、現代美術家の3人植松奎二、JUN TAMBA、榎忠の作品と空間展示を月替わりで紹介する展覧会。現在、デュッセルドルフと日本にアトリエを構え活動する植松奎二の展示は、最新作のインスタレーション《見えない軸─水平・垂直・傾, Invisible axis Horizontal, Vertical, Inclination》を会場の中央に設置、四方を1969年から2017年までのドローイング作品群で囲むように構成した。《見えない軸》は、中央に据えられた石とさまざまな角度で傾く金属の柱(真鍮)とワイヤーを用いて、本来は不可視の「重力」を、事物のあいだに看取される関係性を通して表わそうとする。また、2×4メートルを超える大きさのドローイング《浮く石, Floating stone》は、同館で公開制作されたもの。タイトルが示す通り「巨大な石が宙に浮かぶさま」の描写は、現実にはありえない奇想の空間を創出する。このような、普段私たちが知覚することのない「重力」についての気づきは、ひいては、宇宙/地球/人間の存在に関わって「大事な見えないものとは何か」を考えることにもつながってゆくだろう。植松の作品は、世界の構造への普遍的な問いから鑑賞者個人の内面に至るまで、多様なレヴェルの気づきを与えてくれる。[竹内有子]

2017/07/30(日)(SYNK)

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日本の家 1945年以降の建築と暮らし

会期:2017/07/19~2017/10/29

東京国立近代美術館[東京都]

このところ、日本の住宅建築に関する展覧会が連続している。2014年7月から埼玉県立近代美術館ほかを巡回した「戦後日本住宅伝説」展は、1950-70年代まで、高度成長期に手がけられた住宅を見せるものだった。2017年4月にパナソニック汐留ミュージアムで開催された「日本、家の列島」では現代の建築家による住宅に焦点が当てられた。そして本展は戦後70年にわたる住宅建築だ。「日本、家の列島」と「日本の家」はいずれも海外巡回展の日本展。ただし、「日本、家の列島」はフランス人建築家の視点によって紹介するもの。「日本の家」は、2016年、日本イタリア国交150周年を記念して日本で企画し、ローマおよびロンドンで開催されたもの。いずれも「戦後の」「日本の住宅」を扱っているが、時代や視点の所在が異なっている。これらのなかで、本展「日本の家」が戦後70年というもっとも長いスパンを取り上げているのだが、展覧会は時系列ではなく、「系譜」を基準とした13のテーマに分かれている。まったく時間軸が無視されているわけではないのだが、1945-1970、1970-1995、1995-2015の3つに分けられたマトリクスが用いられている。はたしてこの分類、系譜はどこまで日本の住宅建築を上手く説明できているのか、現時点ではいまひとつ判断できないでいる。会期中にもう少し考えてみたい。海外に紹介することを目的とした企画のためか、なぜ日本の、住宅建築の展覧会なのかという主旨は分かりやすい。著名建築家が個人住宅を手がける例は海外には少ない。海外と比較して日本には戸建て住宅が多い。それは戦後推進された持ち家制度ゆえでもある。そうした住宅の大多数を手がけたのがハウスメーカー(本展では積水ハウスのプレファブ住宅が紹介されている)で、それらのメーカーが手がけ、私たちの街をかたちづくってきた規格化された住宅に対する批評として、建築家による住宅がある。その批評の類型がここでいうところの「系譜」である、と考えればよいか。[新川徳彦]


会場には、清家清「斎藤助教授の家」(1952)の原寸大模型も展示されている

左上ちらし:Design by Norio Nakamura

2017/07/18(火)(SYNK)

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NO PROBLEM展

会期:2017/06/20~2017/07/17

GOOD DESIGN Marunouchi[東京都]

モノがつくられ、売られ、私たちの手元に届くまで、ふだん私たちがあまり意識しない工程に「検品」がある。製造時、工場出荷時、商品受け入れ時、さまざまな段階でモノは「検品」され、はじかれる。たいていのばあい私たちが手にするのは既にいくつかのふるいに掛けられた製品なので、そもそもふるいの存在を意識することは少ない。では、検品によってはじかれる製品はどのようなものなのか。機能的に不具合のある製品、安全性に問題のある製品、すなわち不良品や欠陥品がはじかれるのは当然だが、実際には良品と不良品の間にはグレーゾーンがあり、実用上は問題なくてもなんらかの基準によってはじかれる製品(B品)がある。この展覧会は検品におけるこうしたグレーゾーンに焦点を当て、モノの価値を問いかける、とても興味深い企画だ。
本展のきっかけは、インドの理化学ガラスメーカーBOROSIL社の製品VISION GLASS。その日本への輸入元である國府田商店株式会社/VISION GLASS JPが輸入後に検品した結果として日本の市場に出さなかった製品が多数生じている。わずかなキズやこすれた跡、出荷時にメーカー側でも検品しているので、そのほとんどは実用上の問題がない。実際インドでは普通に販売されており、クレームもほとんどないという。それにも関わらず、輸入された製品には日本の市場では販売が難しいと判断されるものがある。この違いは何に起因するのか。価値観の差なのか。誰が判断するのか。本展ではこれらの疑問を起点に、日本のメーカーや商店にものづくりの意識や検品の基準を取材し、それを実物とともに解説、紹介している。 展示全体を見ると、その基準は、素材や工程、製品の用途、ブランドによってさまざまだ。たとえば土人形は手作りゆえに一つひとつが異なっており、基本的に「B品」はないという(とはいえ、売れないと判断して廃棄されるものはある)。木工家具の業界では木の節が敬遠されるために、部品として利用できなかったり、塗装して利用されたりするが、同じものが海外の市場では問題なく受け入れられている。荒物を扱う商店では、製品のばらつき、サイズの不統一があってもすべて通常品として売っている。木工製品や革製品は自然素材であるがゆえに、工程に由来しない差異は買い手に受け入れて貰いたいと考える作り手もいる。基準が厳しいメーカーもあれば、それほどでもない店もある。基準がはっきりしているメーカーもあれば、オーナーの目が基準でマニュアル化できないでいる店もある。B品をアウトレットで販売するメーカーもあるが、VISION GLASS JPではB品を「NP品(No Problem品)」として、通常価格で販売する試みをしている。そこには作り手、売り手、買い手の、モノに対する多様な価値観を見ることができる。おそらく正解はない。ぶれのない高品質を売りにするブランドもあるし、手作りによる差異を楽しむ商品もある。相応に安ければ問題ないと考える買い手もいるだろう。対象が自然素材であっても、その特質を見極めることも技術のうちという考えかたもあろう。必要なことは買い手に対する丁寧な説明だ。
展示パネルでは取材先が生産・流通・販売のどの段階にあるのかが図示されていて、問題の所在が分かりやすい。チラシの黒ベタ部分には「ひっかき傷」「指跡」があり、一瞬「不良品」を手にしたのかと思ったが、数枚のチラシの同じ場所に傷があり、それがニスによる印刷で表現されたものであることに気づいてニヤリとする。欲を言えば、そこは量産化された「傷」ではなく、用紙にザラ紙を用いるなどして生じる「意図せざる不良品」でありたかったところだ。
なお、東京展は終了しているが、7月29日から8月13日まで、KIITO デザイン・クリエイティブセンター神戸(兵庫県)に巡回する。[新川徳彦]

2017/07/15(土)(SYNK)

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