2018年01月15日号
次回2月1日更新予定

artscapeレビュー

その他のジャンルに関するレビュー/プレビュー

東アジア文化都市2017京都 アジア回廊 現代美術展

会期:2017/08/19~2017/10/15

二条城、京都芸術センター[京都府]

日中韓3カ国から選ばれた3都市が、1年間を通じてさまざまな文化交流プログラムを行なう国家プロジェクト「東アジア文化都市」。今年は日本の京都市、中国の長沙市、韓国の大邱広域市で行なわれており、京都市の中核的な事業が「アジア回廊 現代美術展」だ。昨年の奈良市では、東大寺や薬師寺などの著名7社寺を会場に大規模な現代美術展を行なったが、今年の京都市は会場を二条城と京都芸術センターの2カ所に絞り、凝縮感のあるイベントに仕上げた。アーティスティック・ディレクターを務めたのは建畠晢で、出展作家は25組。うち日本人作家は13組を占める。その大半は京都出身・在住者だが、本展の意図を最も体現していたのは彼らではなく、小沢剛、チェン・シャオション(昨年11月に死去)、ギムホンソックの日中韓3アーティストから成る「西京人」ではなかったか。また、対馬、沖縄、台湾、済州島の祠をリサーチした中村裕太+谷本研(彼らは京都組)も本展にふさわしかった。展覧会としては普通に楽しめる本展だが、建畠がチラシに記したメッセージを読むと、同意しつつも無力感を禁じ得ない。

周知のように、今、世界では排他的で偏狭な思想が渦巻き、テロや紛争も絶えることがありません。しかしこうした時期だからこそ文化芸術による相互理解とコミュニケーションの可能性を推し進めようとする《東アジア文化都市》のプロジェクトの意義は大きいといわなければなりません[本展チラシより]

もちろん文化交流は大切だし、世界が緊迫している今だからこそ相互理解を深めるべきという意見には賛成だ。でも、このような展覧会をいくら繰り返したところでテロや紛争は減らないし、日中韓の関係は変化しない。むしろインバウンドの増加や日本製アニメの浸透のほうがよほど効果があったのではないか。筆者は最近、大規模芸術祭に同様の感想を抱くことが多い。芸術にはまだ失望していないが、芸術祭には飽きてしまったのだろう。

2017/08/18(金)(小吹隆文)

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第11回 shiseido art egg:菅亮平展〈インスタレーション〉

会期:2017/07/28~2017/08/20

資生堂ギャラリー[東京都]

ギャラリーを入った正面のいちばん大きな壁面に、真っ白くて作品のない(でもベンチはある)展示室を右へ左へ正面へと次々通過していく映像《エンドレス・ホワイトキューブ》が映し出されている。映像内の展示室は実物ではないし、ミニチュアかとも思ったがそうでもなさそうだし、たぶん資生堂ギャラリー(の大きいほう)をモデルにCGで作成したものだろう。対面の壁には縦横それぞれ70-80個ずつ正方形のマス目が書かれた4枚の《マップ》が掛けられている。なにかと思ってよく見ると、各マスの天地左右のいずれかの辺またはすべての辺に切れ目があり、これを出入口と見立ててマス目を展示室と見なせば、超巨大美術館または無限美術館の(部分的な)平面図であることが理解できる。白くて正方形の展示室が無限に連なるホワイトキューブ地獄、といってもいい。映像作品はこの無限の展示室を巡っていたのだ。
奥のギャラリーには白いプリントが5枚。よく見ると画面内側にもうひとつ白い矩形が浮かび上がり、いや浮かび上がるというより、パースがかかっているので奥に引っ込んでいるように見え、ホワイトキューブの壁を表象したものであることがわかる。これを壁にうがたれたニッチ(壁龕)または陳列棚と見ることも可能だ。タイトルは個展名と同じく《イン・ザ・ウォール》。映像ともどもホワイトキューブの壁の向こうに延々と展示室が連なる幻想を誘発させる優品だ。

2017/08/16(水)(村田真)

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美術館ワンダーランド2017 イロ・モノノ ハコニワ

会期:2017/07/08~2017/09/01

安曇野市豊科近代美術館[長野県]

再び安曇野へ行ったついでに、若手作家の企画展が開かれている豊科近代美術館に寄ってみた。美術館は一見ロマネスク風の瀟洒な建物に見えるが、中に入ってみると意外と安普請だったりする。1階は高田博厚と宮芳平の常設展示室で、2階が企画展示室。2階は中庭を囲むようにテラスがあり(ただし現在は立ち入り禁止)、テラスを囲むように展示室があり、展示室を囲むように回廊があり、回廊の外側にも展示室があるという入れ子状の構造で、外見ともどもヨーロッパの修道院を思い出させないでもない。ひとつだけ離れに大展示室があるほか、部屋は小さく分かれているため、今回のような個展の集合体としての企画展には向いているが、テーマ展には使いづらそうだ。
さて「美術館ワンダーランド」展は、80-90年代生まれの若手アーティスト6人による展示だが、どういう基準で選んだのか、カタログはつくってないようだし、会場にもチラシにも展覧会の趣旨を書いた文章は見かけなかったのでよくわからない。地方美術館の場合たいてい地元作家が選ばれるものだが、長野県出身は2人しか入ってないので特に優遇されてるわけではなさそうだ。そこでヒントを与えてくれるのが、サブタイトルの「イロ・モノノハコニワ」だが、漢字に返還すると「色・物の箱庭」となり、勝手に解釈すれば、色彩や物体の受け皿としての絵画・彫刻となろうか。これもなにか語っているようでなにも語っていないに等しい。ともあれ出品作家で知っているのは水戸部七絵と齋藤春佳のふたりだけで、作品もこのふたりが群を抜く。特に絵画と映像を出している齋藤は展示に工夫を凝らしていて、コーナーに台座を置いて0号の極小絵画を立て掛けたインスタレーションは、目立たないだけに心をくすぐられた。

2017/08/15(火)(村田真)

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追悼水木しげる ゲゲゲの人生展

会期:2017/07/26~2017/08/14

大丸ミュージアム・神戸[兵庫県]

2015年、93歳で亡くなった水木しげるの生涯を彼の作品とコレクションから振り返る展覧会。少年期から晩年に渡るまでのスケッチや絵画、『ゲゲゲの鬼太郎』や『悪魔くん』に代表される漫画の原稿から、エッセイ、出版物、愛蔵品等まで、幅広い展示物によって彼の人生と人となりを網羅的に知ることができる。水木は少年時代に天才画家と呼ばれたそうだが、それも納得するほどの画力。多彩なジャンルを手がけたなかでも、絵本や童画の愛らしい作品は、後年の妖怪画とは異なる水木ワールドで驚く。また彼は図案職人を目指したこともあり、本展では珍しいデザイン作品を見ることもできる。とはいえ、水木の仕事に決定的な影響を与えたのが、戦争の体験だったろう。本展では戦記漫画や手記原稿が展示され、生々しい体験を伝える。以後、紙芝居画家を経て、漫画家デビューしてから1960年代以降の活躍はファンならずとも、よく知っているところ。やはりなんといっても鬼太郎シリーズに見られる、水木のキャラクター造形の面白さには感服する。どんな先例にも負わない、個性的なキャラクターの数々は、水木がいかに作画資料を熱心に収集研究して、新奇性を追究したかを示している。水木の人生を追っていくと、彼のあらゆる経験や哲学が作品世界にいきいきと息づいていることに気付く。そして、自らの波乱万丈な生涯を感じさせないような、「なまけ者になりなさい」と記された水木のあたたかい言葉に、ほろっとさせられる。本展はこのあと、福岡、名古屋、沖縄に巡回する。[竹内有子]

2017/08/12(土)(SYNK)

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第6回新鋭作家展 影⇄光

会期:2017/07/15~2017/08/31

川口市立アートギャラリー・アトリア[埼玉県]

アトリアが主催する公募展「新鋭作家展」は、作品プランとファイルによる1次審査と、作家のプレゼンテーションによる2次審査が行なわれるが、ユニークなのは制作にあたってテーマや素材を川口市に取材したり、ワークショップや協働制作など住人との交流を推奨していること。いわば「サイトスペシフィック」で「ソーシャリー・エンゲイジド」な作品が求められているのだ。しかも選ばれてから作品発表まで1年近く制作期間を設けるなど、とても丁寧につくっている。なんでそんなこと知ってるかというと、今回ぼくも審査に加わったからだ。で、選ばれたアーティストは佐藤史治+原口寛子と金沢寿美の2組。タイトルの「影⇄光」は、偶然ながら両者とも光と影(闇)をモチーフにしていたのでつけられたという。
佐藤+原口は、川口市の妖しげな夜のネオンを背景に影絵で遊ぶ映像を、大小10台ほどのモニターやプロジェクターを使ってインスタレーション。川口の街の表情を採り入れつつ視覚的にも楽しめるため、プレゼンでは一番人気だったが、映像の見せ方や展示空間の使い方をもう少し工夫すればもっと楽しくなったと思う。それに対して金沢は、新聞紙を鉛筆で塗りつぶして宇宙を描いていくという地味ながら壮大な計画。100枚を超す新聞紙(見開き)をつなげて、10Bの濃い鉛筆でところどころ白い点(星)を残しつつ真っ黒に塗りつぶし、高さ5メートルほどある壁2面を覆う宇宙図を完成させてしまった。星や星座を表わす白いスポットに、新聞の見出しの「トランプ」とか「難民」といった時事的なキーワードや、広告の絵柄を入れ込むという技も見せている。その根気強さ(執念というべきか)には圧倒される。これはやはり経験の違いか。

2017/08/09(水)(村田真)

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