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2018年08月01日号
次回9月3日更新予定

artscapeレビュー

その他のジャンルに関するレビュー/プレビュー

六甲ミーツ・アート 芸術散歩2017

会期:2017/09/09~2017/11/23

六甲山カンツリーハウス、自然体感展望台 六甲枝垂れ、六甲有馬ロープウェー、六甲ガーデンテラス、六甲高山植物園、六甲オルゴールミュージアム、六甲ケーブル、天覧台、TENRAN CAFE、六甲山ホテル、六甲山牧場(サテライト会場)[兵庫県]

神戸市の六甲山上に点在するさまざまな施設を会場に行なわれる芸術祭「六甲ミーツ・アート 芸術散歩」(以下、「六甲~」)。その名の通り、散歩感覚で山上を歩き、芸術作品との触れ合いながら、六甲山の豊かな自然環境や観光資源を楽しめるのが大きな魅力だ。今年は39組のアーティストが参加し、例年のごとく多彩な展示が行なわれている。筆者のおすすめは、六甲山カンツリーハウスの川島小鳥、六甲高山植物園の豊福亮と楢木野淑子、六甲オルゴールミュージアムの奥中章人と田中千紘、六甲山ホテルの川田知志である。一方、今年の展示は全体的に小ぶりで、やや地味な印象。「六甲~」自体も2010年の第1回から8年目を迎えたこともあり、そろそろマンネリ回避策を考えねばならない。具体的には、これまでの総括と、新たなテーマ設定、目標設定だろう。それと関係しているのかもしれないが、第1回から企画制作を担当してきた「箱根彫刻の森美術館」の名が今回から消えていた。筆者は、この芸術祭のクオリティーが保たれてきたのは、彼ら美術のプロたちの存在が大きかったと思っている。今後の「六甲~」はどこへ向かうのだろう。若干の不安を覚えたのもまた事実である。

2017/09/08(金)(小吹隆文)

Under 35 廖震平

会期:2017/08/25~2017/09/13

BankART Studio NYK 1階ミニギャラリー[神奈川県]

35歳以下の若手作家に発表の機会を与えるU35シリーズの第2弾は、台湾出身の廖震平の個展。彼が描くのは一見ありふれた風景画のようだが、どこか変。例えば木が画面のちょうど中央に立っていたり、画面の枠に沿って四角い標識が描かれていたり、道路のフェンスが画面をニ分割していたり、不自然なほど幾何学的に構築されているのだ。そのため風景画なのに抽象画に見えてくる。というより具象とか抽象という分け方を無効にする絵画、といったほうがいいかもしれない。
1点だけ例を挙げると、巨大な木を描いた《有平面的樹》。右下から斜め上に幹が伸びているが、白くて丸い切り口が画面の中心に位置しているのがわかる。いったんそのことに気づくと、もうこの絵は風景も木も差しおいて、白い丸が主役に躍り出てくる。太い幹や暗い木陰や細かい枝葉は、白い丸を際立たせるための小道具にすぎないのではないかとすら思えてくるのだ。そもそも彼は風景を描いていない。風景を撮影してタブレットで拡大した画像を見ながら描いているのだ。その意味では「画像画」というべきか。だからなのか、彼の表象する風景からはなんの感動も伝わってこない。伝わってくるのは絵画を構築しようとする意志であり執念だ。そこに感動する。

2017/08/25(金)(村田真)

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そこまでやるか 壮大なプロジェクト展

会期:2017/06/23~2017/10/01

21_21 DESIGN SIGHT[東京都]

文字どおり「そこまでやるか」と思わずつぶやいてしまうほど壮大なプロジェクトを手がけるアーティストの活動を見せる展覧会。国内外8組の美術家や建築家らが参加した。いずれもアーティストならではの常軌を逸した想像力を披露しており、十分に楽しむことができる。
例えば西野達は美術館という既成の空間を鮮やかに裏切ってみせた。窓際のスペースに単管を組み上げ、最大で3段のベッドを設え、カプセルホテルとした。予約すれば、じっさいに宿泊することもできるという。また泥絵で知られる淺井裕介も、美術館の白い壁に土と水でダイナミックかつ繊細な絵を描くという点で言えば、美術館で想定されている空間利用を大きく逸脱していると言えるだろう。
一方、美術館という制度そのものから逸脱しているのがクリストである。本人のインタビューを交えた映像で詳しく紹介されているのは、昨年にイタリアのイセオ湖で行なわれた《フローティング・ピアーズ》。ポリエチレン製のブロック22万個を連結させた長大な桟橋で湖畔の街と島を結んだプロジェクトである。オレンジ色の布で覆われた桟橋は幅16メートル、全長3キロ。その上をおびただしい数の観光客が散歩する光景は、夢のように美しい。クリストは湖面に道を拓いたのだ。
アーティストの仕事が想像力を現実化することにあるとすれば、本展で紹介されているアーティストたちはいずれも類稀な想像力の強度と美しさを備えている。しかも、それらを根底で駆動させているのは、美術館あるいは「美術」という制度に依拠しながらも、同時に、それらから大きく逸脱する運動性である。絵画はキャンバスに閉じ込められているわけではないし、美術も美術館にしかないわけではない。グラフィティやアウトサイダーアートという例外的な周縁でなくとも、そもそもアーティストの想像力は、そのような制度とまったく無関係に飛翔することができる自由を誇っている(クリストのインタビュー映像は彼の作品履歴を振り返りながらプロジェクトに取り組むための真髄を明快に言語化している点で必見)。
既成の制度や歴史、与えられた条件の中だけで想像力を開陳しがちな、そしてそのことを不自由とも思わないほど飼い慣らされた、若いアーティストや美大生こそ見るべき展覧会である。

2017/08/20(日)(福住廉)

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プレビュー:神戸港開港150年記念「港都KOBE芸術祭」

会期:2017/09/16~2017/10/15

神戸港、神戸空港島[兵庫県]

今年は神戸開港150年ということで、神戸市内ではさまざまな催しが行なわれている。本展は美術系イベントの中核を成すものだ。出展作家は、小清水漸、新宮晋、林勇気、藤本由紀夫、やなぎみわなど国内組16組と、韓国・広州ビエンナーレ参加作家と中国・天津の作家から成る海外組。地元組で手堅くまとめた印象で、目新しさに欠ける感もあるが、ここは彼らに頑張ってもらうしかない。注目すべきは鑑賞法で、「アート鑑賞船」に乗って神戸港を遊覧しながら、全体の2/3程度の展示が見られる。このプランは過去に「神戸ビエンナーレ」でも実施されたが、港町・神戸の魅力を肌で感じられてとても良かった。問題は船と作品の距離。どうしても遠距離からの鑑賞になるので、強烈な存在感を放つ作品を揃えることがポイントになるだろう。神戸空港島での展示は未知数だが、地元民でも馴染みが薄い場所なので逆にポテンシャルを感じる。今回の展示が上手くいけば、将来的に空港島でのアートイベントが増えるかもしれない。この芸術祭は単発イベントであり、規模やラインアップを見ても中庸感が否めない。大風呂敷を広げるのではなく、地元市民にどれだけ認知され、体験してもらえるかが勝負だ。

2017/08/20(日)(小吹隆文)

川俣正「工事中」再開

会期:2017/08/18~2017/09/24

アートフロントギャラリー+ヒルサイドテラス屋上[東京都]

川俣正の「工事中」をリアルタイムで知ってる人はもう50歳以上のはず。1984年、川俣は代官山のヒルサイドテラスで「工事中」と題するプロジェクトを行なった。アートフロントギャラリーの企画で、この建物の内外を材木で覆っていく計画だったが、テナントから実際に「工事中」に間違えられて客足が遠のくとクレームがつき、途中で断念。ところがこれを写真週刊誌がスクープして人が集まり始めたため、テナントは手のひらを返すように続けてほしいとお願いしたらしい。ともあれ、川俣はその直後ACCの奨学金で渡米し、3年後にはドクメンタ8に参加。その年に出版した初の作品集はドクメンタの出品作品を表紙に使い、タイトルを『工事中 KAWAMATA』とした。「工事中」は初期の川俣にとってエポックメーキングなプロジェクトだったのだ。
あれから33年、「工事中」を「再開」するという。なぜいま? と訝しく思うが、「再開」にいたるまでにはいくつかの伏線があった。まずひとつは「代官山インスタレーション」の終焉。これは1999年からヒルサイドテラスを中心とする代官山界隈を舞台に、隔年で開催されたサイトスペシフィックなインスタレーションの公募展。企画はやはりアートフロントギャラリーで、「工事中」に刺激されたであろうことは審査員のひとりに川俣が選ばれたことからもうかがえる。さらに川俣のように都市と切り結ぶアーティストを発掘したいとの思惑もあっただろう。だが、目標は達成されたとはいいがたく、そこそこ楽しめる作品はあったものの、とびきり優れた作品もアーティストも輩出することなく4年前に幕を閉じてしまう。きっと川俣は歯がゆく思ったに違いない。「自分ならこうするのに」と。
ふたつ目は、ヒルサイドテラスの前に架かる歩道橋がこの秋、撤去されることになったこと。それがなぜ「工事中」の再開につながるのかというと、今回は建物の内外ではなく屋上に材木を組んでいるのだが、屋上でやるのは上からの視点を想定しているということであり、件の歩道橋の上から眺めるために制作したということだ。こうして川俣のインスタレーションを見るためにみんな歩道橋に上り、歩道橋の存在も記憶に刻まれるというわけだ。
そしてもうひとつ、この夏、「東京インプログレス」の一環として6年前に南千住に建てられた汐入タワーが解体され、廃材が大量に出たこと。この廃材が代官山に運ばれ、インスタレーションの材料として使われることになった。こうしていくつかの偶然が重なり、たまたま2017年の夏に実現することになったわけだ。実際に歩道橋の上から見ると、こんもりと材木が盛り上がっている感じ。カチッとしたモダン建築にザラッとした大量の材木が積み重なっているさまは、なにか心をざわつかせる。もはや陳腐なたとえだが、津波で流された廃材が建物に引っかかっている光景を彷彿させないでもない。屋上に上がってみると、材木を組んだ内部は人が動けるくらいの空洞になっていて、重なった材木越しに代官山の風景を見ることができる。1階のギャラリーには84年の「工事中」の写真・資料も展示され、アートフロントの北川フラムさんも、写真家の安斎重男さんも、PHスタジオの池田修(現BankART代表)も当たり前だが若い。池田くんなんか体積が半分くらいしかない。

2017/08/18(金)(村田真)

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