2018年01月15日号
次回2月1日更新予定

artscapeレビュー

パフォーマンスに関するレビュー/プレビュー

プレビュー:京都銭湯芸術の祭り MOMOTARO 二〇一七

会期:2017/08/13~2017/08/20

梅湯、玉の湯、錦湯、平安湯[京都府]

京都市内の複数の銭湯を会場に、2014年と15年に開催された「京都銭湯芸術祭」。銭湯に美術作品を設置するという異種格闘技戦的な状態をつくり出すことにより、美術とはどういうものか、銭湯とはどういう場所かという根本的な命題に取り組んだ。2年ぶり3回目となる今回は、タイトルを若干改めたほか、パフォーマンス公演「MOMOTARO」を主軸に据えたイベントへとリニューアルしている。「MOMOTARO」は、イラクへ派遣されたスコットランド人兵士たちのインタビューを元に製作されたナショナル・シアター・オブ・スコットランドの演劇作品を、日本の文脈に沿ってアレンジしたもの。会期中に同作の公演が2度行なわれ、ほかには、インスタレーション、美術作品の展示、神輿巡行、自転車ツアー、盆踊りアワー、流しそうめん、ワークショップなどが行なわれる。銭湯とは社会での肩書や地位を脱ぎ捨てて、人間同士の裸の付き合いが行なわれる場所。そこで芸術祭を行なうことにより、芸術表現の新たな可能性を引き出すことがこのイベントの目的であろう。昨年は行なわれなかったのでこのまま自然消滅かと思っていたが、見事な復活を遂げて嬉しい限りだ。

2017/07/20(木)(小吹隆文)

プレビュー:東アジア文化都市2017京都 アジア回廊 現代美術展

会期:2017/08/19~2017/10/15

二条城、京都芸術センター[京都府]

日中韓の3カ国から選ばれた3都市が交流し、1年間を通じてさまざまな文化芸術プログラムを行なう「東アジア文化都市」。今年は日本の京都市、中国の長沙市、韓国の大邱広域市が選ばれた。「現代美術展」は、京都市のコア期間事業「アジア回廊」のメインプログラムである。会場は世界遺産・元離宮二条城と京都芸術センターの2カ所、建畠晢がアーティスティック・ディレクターを務め、参加アーティストは、西京人、草間彌生、中原浩大、やなぎみわ、キムスージャ、ヒョンギョン、蔡國強、ヤン・フードンなど25組である。昨年の日本会場だった奈良市では、東大寺、春日大社、薬師寺、唐招提寺などの有名社寺を舞台に、大規模な現代美術展が繰り広げられた。今回は2会場と小ぶりな規模に落ち着いたが、その分濃密な展示が行なわれることを期待しよう。両会場は地下鉄で行き来でき、市内中心部のギャラリーや観光名所(平安神宮、南禅寺、知恩院など)にも地下鉄1本でアクセスできる。遠方の方は、京都観光も兼ねて出かけるのが良いと思う。

2017/07/20(木)(小吹隆文)

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プレビュー:『日輪の翼』(京都公演)

会期:2017/09/14~2017/09/17

河原町十条:タイムズ鴨川西ランプ特設会場[京都府]

やなぎみわが演出・美術を手がける野外劇。台湾製の移動舞台車(ステージトレーラー)を舞台装置に用い、中上健次の小説『日輪の翼』をメインに複数の小説からの引用を織り交ぜて展開する。2016年に横浜、中上の故郷の新宮、高松、大阪と4都市を巡回し、今回、東アジア文化都市2017京都「アジア回廊 現代美術展」の参加作品として、京都で再演される。
本作の特徴は、野外劇であることに加え、音楽劇である点だ(巻上公一が音楽監督を務める)。三味線を弾きながら唄う江戸浄瑠璃新内節、御詠歌の唱和、ギターの弾き語り、激しいシャウトのデスメタルといったさまざまな楽曲に加え、終盤のクライマックスでは朝鮮半島の打楽器を打ち鳴らす一団も登場し、複数の文化的混淆を見せる。そこに、ポールダンスやサーカスの曲芸のようなロープの空中パフォーマンスといった身体パフォーマンスが加わる。移動するステージトレーラーは、単に原作に準拠した舞台装置としての役割にとどまらず、地域、民族、時代を超えて、各地の「流浪の芸能民」の系譜をつなぎ、祝祭的な場を出現させるための装置となる。
加えて今回の京都公演では、日中韓の文化交流という芸術祭のコンセプトと、在日の韓国人・朝鮮人が多く暮らす上演場所の性格に基づき、韓国からの招聘アーティストと地元の祭り「東九条マダン」が新たに参加する。鴨川の河川敷に隣接する会場の立地とも相まって、原作小説とやなぎの演出作品の持つ文脈をより深く照射する上演になるのではないだろうか。
公式サイト:http://nichirinnotsubasa.com

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『日輪の翼』大阪公演|高嶋慈:artscapeレビュー

2017/07/20(木)(高嶋慈)

プレビュー:ART CAMP TANGO 2017 音のある芸術祭

会期:2017/09/09~2017/09/24 (金・土・日・祝日のみ開催)

旧郷小学校ほか[京都府]

地域アートの隆盛の中でも、「音」にまつわる芸術表現に焦点を当てた芸術祭。「音」を主軸に、現代美術、音楽、サウンド・アート、ダンスなどの領域を横断して活躍するアーティストを国内外から招聘する。「ART CAMP TANGO」は、京都府北部に位置する京丹後市在住のアーティストと地域の有志が立ち上げた団体。2013年より活動を始め、丹後に滞在するアーティストが自然環境や風土、文化から得た体験を地域と共有するアート・プロジェクトを展開してきた。今回の「ART CAMP TANGO 2017 音のある芸術祭」の参加アーティストは、大城真、小川智彦、木藤純子、木村玲奈、鈴木昭男、三原聡一郎、宮北裕美、山崎昭典。また、香港のアートNPO soundpocketと協働し、香港を拠点とする4名のアーティスト、サムソン・チェン、アルミミ・ヒフミ、フィオナ・リー、フランク・タンが参加する。
丹後とサウンド・プロジェクトとの関わりは1980年代にまで遡る。丹後は、日本のサウンド・アーティストの草分けである鈴木昭男が、日本標準時子午線 東経135度のポイントで耳を澄ますサウンド・プロジェクト「日向ぼっこの空間」を1988年に行なった場所であり、以後、30年に渡る鈴木の活動拠点となってきた。鈴木の丹後での活動を通して海外のアーティストとの交流へと発展し、近年、若い世代のアーティストが国内外から丹後に来訪し、新たな交流が生まれている。このような経緯から、丹後の自然の中で、アーティストと一般の参加者が共にアートを体験する「ART CAMP TANGO」の構想が立ち上がったという。
メインとなるプログラムは、ローカル線 京都丹後鉄道の貸切列車内や駅舎で行なわれるオープニング・パフォーマンス「その日のダイヤグラム ─ 丹後~豊岡 パフォーマンス列車の旅」、 廃校となった旧小学校舎を会場に、音を聴く体験や音のある環境へと誘う展覧会 「listening, seeing, being there」、丹後の文化や自然が感じられる場所でのサイトスペシフィック・パフォーマンス「アートキャンプ in 丹後」。さらに、3つの滞在プログラムも組み込まれている(アーティスト・イン・レジデンス、香港から一般参加者を受け入れる「Being There Retreat Camp」、大友良英が始めた「アジアン・ミーティング・フェスティバル (AMF)」のアーティストが丹後を訪れて行なうサウンドツアー)。地域との持続的なつながりをベースに、外との交流がどう実を結ぶか、期待される。
公式サイト:http://www.artcamptango.jp

2017/07/20(木)(高嶋慈)

菅原直樹「老いと演劇のワークショップ」

会期:2017/07/09

京都造形芸術大学[京都府]

驚いたのは、演劇論(芸術性)とコミュニケーション論(社会性)が緩やかに連続していることだった。「演劇は社会の役に立つ」とはよく聞く言葉だが、こんなにはっきりとそうである方法論は珍しい。現役の介護福祉士で、平田オリザに薫陶を受けた演劇家でもある菅原直樹は「老いと演劇のワークショップ」を実施している。それは健常者が老いや認知症の理解を進めることを主たる目的としている。一例を挙げると、認知症の人が会話のグループに一人いる状態でその人を無視したならば、あるいは積極的に会話の輪に招くならば、その認知症の人はどんな気持ちになるのかを知るためのレッスンである。菅原はそれ観察する方法として、「人のテーマで会話しているなかに、漫画や戯曲のセリフしか言えない人がもし入ったら」といったインストラクションを編み出した。このとき「演じる」ことは、演技術の向上を目指すものではなく、対話を実践し、その対話で起きたことを反省するための機会として設えられている。つまりそれは、うまく「認知症患者」を演じられた、うまく「介護者」を演じられたということがゴールではなく、関係の機微を感じるところに目的がある。だからこれは演劇を借りたコミュニケーション向上プログラムだ、と言いたくもなるが、いや、そもそもよい劇とは、見事に認知症が演じられることよりも、関係の機微を観客に伝える劇を指すのである。ならば、これは正真正銘の演劇理論であり、同時にコミュニケーションの理論でもあるというわけで、両者がイコールになるような仕組みを発明したことを、何より菅原の偉大な功績と見るべきだろう。一般の参加者が鑑賞とは別の仕方で芸術に触れる「ワークショップ」という場において、社会の内に芸術的方法が力を発揮する体験を菅原はシンプルなインストラクションに結晶させることに成功したわけだ。実際、そのインストラクションが遂行されると、案外別のフィクションが発生してしまうのも楽しい。狙った「認知症の人と介助者」との対話というよりは、そのまま「漫画のセリフで会話する人」との会話としてその場が立ち上がってしまう。それでも、そんな奇妙な空間で、会話に加えてもらえない疎外感や逆に場にそぐわないひと言を受け取られてしまい、戸惑いなどが出現し、それについての丁寧な振り返りがなされる。そんなフィクションへのスライドもこのワークショップの魅力の一つだろう。


ワークショップ風景
撮影:BONUS

BONUS「未来のワークショップを創作する」ための研究会:http://www.bonus.dance/creation/46/

2017/07/09(火)(木村覚)

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