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2011年10月15日号のレビュー/プレビュー

SD Review 2011 第30回「建築・環境・インテリアのドローイングと模型の入選展」

会期:2011/09/14~2011/09/25

代官山ヒルサイドテラスF棟 ヒルサイドフォーラム[東京都]

代官山のヒルサイドテラスにおいて、建築系若手の登竜門、SDレビュー2011を見る。今年の出展者は、知人、同僚、仕事で担当スタッフだった人、過去にコンペや卒計の審査で選んだ人が多い。作品のなかでは、へんてこなリノベーションの今村水紀+篠原勲、加藤比呂史+ヴィクトリア・ディーマー・ベネッツェン、メジロスタジオの《バルコニービル》などが印象に残る。

2011/09/21(水)(五十嵐太郎)

メタボリズムの未来都市展

会期:2011/09/17~2012/01/15

森美術館[東京都]

森美術館の「メタボリズムの未来都市」展は、戦時下の都市計画から始まり、丹下健三の戦災復興計画、広島ピースセンターや東京湾を横断する東京計画1960を経て、1960年代に一気にメタボリズムが花開く状況を紹介する。戦前と戦後を単純な断絶とみなさず、大きなヴィジョンの国土計画の連続ととらえる視点は、本展の企画監修に関わった八束はじめの著作『メタボリズム・ネクサス』と共通するだろう。紹介されているほとんどの内容は知っているが、モノとして同時に資料が一覧できる悦びは大きい。また森美術館が、黒川紀章のコレクションを集めていることもわかる。

2011/09/21(水)(五十嵐太郎)

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世界遺産 ヴェネツィア展──魅惑の芸術・千年の都

会期:2011/09/23~2011/12/11

江戸東京博物館[東京都]

なぜいまヴェネツィア展なのか。今年はヴェネツィア・ビエンナーレの開かれる年だから、ってわけではない。ビエンナーレは2年に一度開かれるんだもん。考えられるのは、ヴェネツィアも日本もいま水没の危機に直面しているということだ。しかしそんな理由で来るかね。ともあれヴェネツィア。考えてみれば、ぼくがいちばんたくさん行った海外の都市は、パリでもロンドンでもニューヨークでもなく、ヴェネツィアなのだ。もちろんビエンナーレを見に行くためだが、何度か行くうちにビエンナーレの取材より、むしろヴェネツィアという街を再訪すること自体が楽しみになってきた。そして、行けば行くほどこの街は奥深い表情を見せてくれるのだ。こうして人はヴェネツィアと恋に落ちていくのかもしれない。なーんてね。展覧会はヴェネツィアの歴史と文化を紹介するのが目的なので、ガラスをはじめとする工芸品、衣装、家具、写本などもけっこう出ている。絵画は、ヴェネツィアを代表する画家ティツィアーノが1点もないのが残念だが、ベッリーニ兄弟、カルパッチョ、ティントレット、カナレットらはある。とりわけ仮面舞踏会などヴェネツィアの風俗を描いた18世紀の画家、ピエトロ・ロンギの作品を見られたのがうれしい。

2011/09/22(木)(村田真)

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ゼロ年代のベルリン──わたしたちに許された特別な場所の現在(いま)

会期:2011/09/23~2012/01/09

東京都現代美術館[東京都]

世界12カ国からベルリンに集まった15組(10/29から18組に増加)のアーティストを紹介。映像作品が多いので閉口するが、マティアス・ヴェルムカ&ミーシャ・ラインカウフの映像は笑える。マティアスが地下鉄構内や橋などにヒモを掛けてブランコ遊びをするところを記録したもので、映像作品というよりストリートアートのドキュメンタリーになっている。ミン・ウォンはパゾリーニ映画の登場人物すべての役を自分ひとりでこなすという映像作品がメインだが、その映画のワンシーンを描いたペインティングも出していて、こちらのほうがおもしろい。ペインティングでいえば、抽象表現とグラフィティを掛け合わせたようなカタリーナ・グロッセの作品が、今後の絵画の可能性を示唆しているように思えた。

2011/09/22(木)(村田真)

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棚田康司 展「◯と?」(らせんとえんてい)

会期:2011/09/22~2011/10/14

スパイラルガーデン[東京都]

スパイラルガーデンの巨大な吹き抜け空間に、2組4体の彫刻が置かれている。奥が「風神雷神」にヒントを得た《風の少年》と《導雷少女》で、手前が《ナギ》と《ナミ》。いずれも一木づくりで表面が彩色され、台座部分は木のかたまりのままだ。奇妙なのは《ナギ》と《ナミ》の展示で、両者が向かい合うように横倒しになっているのだ。この2体、巨木を縦に割ってそれぞれに彫っているのだが、台座の大きさに比べて人物像が細くて小さいため、横倒しにすると身体部分が宙に突き出したかたちになる。つまり作品の前に立つと、両側から《ナギ》と《ナミ》の頭がニューと出ていて、まるで「風神雷神」を守る遮断機のようなかっこうになっている。しかもこの2体、身体が微妙にねじ曲がっているため波形に見える。いや波形というより螺旋を描いているというべきか。スパイラルの語源になった螺旋状の吹き抜け空間に置かれた、ゆるやかに螺旋を描く1組の人体彫刻。空間を深く読みとったインスタレーションといえる。

2011/09/22(木)(村田真)

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