artscapeレビュー

2011年10月15日号のレビュー/プレビュー

CAFE in Mito 2011──かかわりの色いろ

会期:2011/07/30~2011/10/16

水戸芸術館現代美術センター[茨城県]

CAFEっつったって館内にカフェを開くわけではなく、Communicable Action for Everybody(だれもがコミュニケーションできる行動)の頭文字をとったもの。これまで3回は芸術館を出て街なかで作品を展開してきたので、今回も屋外に出て行くのかと思ったら大間違いで、ほとんどが屋内での展示だった。しかもインスタレーション系が少なく、水戸芸に関係したアーティストによる絵画か写真などの平面作品が大半を占め、おまけにこれまでの展覧会のポスターやカタログまで並べている。一見ずいぶん後退したというか、後ろ向きの印象は否めないが、もちろんこれにはワケがある。東日本大震災で水戸芸も被災し、開催中および予定していた企画展やイベントはキャンセルされ、4カ月余り休館。「CAFE展」は震災後初めて開く展覧会なのだ。とはいえまだ余震が続くため、大規模なインスタレーションはひかえ、絵画や写真など壁掛けの平面作品を中心に、元気の出る作品を集めたという。いってみれば水戸芸術館の再出発のごあいさつのようなもの。それにしても「揺れる美術館」というのは比喩としてはよく使われるけど、物理的に揺れるのは致命的だなあ。しかも水戸は全国的に見れば福島に近いし。こうした条件をプラスに転化させる展覧会はできないものだろうか。

2011/09/23(金)(村田真)

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震災とクリエイティビティ

会期:2011/09/23~2011/10/11

新・港村(新港ピア) 新・港村ギャラリー(Cゾーン)[神奈川県]

新・港村の「震災とクリエイティビティ」展では、もっともでかい大ギャラリーの外壁二面を用いて、建築系ラジオ枠で、東北大五十嵐研の南相馬市/女川プロジェクト+彦坂尚嘉の巨大壁画(南相馬の集会所と同スケール)を展示することになった。これは建築と美術が複合したもので、同時に展示された建築系のアーキエイドや石巻2.0、そして美術系の開発好明や村上タカシのプロジェクトのちょうど中間の位置づけと言えるだろう。

2011/09/23(金)(五十嵐太郎)

レオ・ルビンファイン「傷ついた街」

会期:2011/08/12~2011/10/23

東京国立近代美術館ギャラリー4[東京都]

2階の一室で開かれている写真展。さまざまな国の街角で市井の人びとを撮ったスナップが35点、宙吊りに展示されている。2、3点を除いてモノクロームだ。なんの説明も聞かずにこれを見たら、無表情で無愛想な人々が写ってるだけのつまらない写真だと思うだろう。が、ルビンファインが9.11のテロをニューヨークの自宅で間近に目撃し、その体験をきっかけにテロ事件を経験した都市(東京、モスクワ、ロンドン、マドリッド、エルサレム、ニューヨークなど)の通行人を撮るプロジェクトを始めたと聞くと、これらの写真を見る目も俄然変わってくる……かもしれないが、ぼくにはやっぱりつまらない写真にしか映らなかった。テロを経験した都市といったって、たとえば東京の場合、地下鉄サリン事件が起きてから7年後に撮られものなので、写っている人はだれもテロのことなんか考えていないはず。ほかの都市も同様で、ただ無表情で不安げな通行人のスナップを撮り集めて並べただけだろう。それをもったいぶって「傷ついた街」などと深刻そうなタイトルをつけ、テロへの憎悪と危機感をあおるのはいかがなものか……という見方もできるのではないか。

2011/09/24(土)(村田真)

トリコ・Aプロデュース演劇公演2011 『和知の収穫祭』

会期:2011/09/24~2011/09/25

京丹波町下粟野観音堂[京都府]

これまで京都市内を活動の拠点に演劇のプロデュースや上演を行なってきた、演劇集団トリコ・A。和知の伝統芸能、和知人形浄瑠璃の演目・長老越節義ノ誉(ちょうろうごえせつぎのほまれ)をモチーフにした作品が、室町時代建立とされる和知町の明隆寺観音堂で上演された。この作品はトリコAの演出家であり、劇作家でもある山口茜が、和知に滞在しながら制作したもの。当日、あたりも暗くなった頃、本殿の前でハットを被った役者の「誰そ彼」という言葉の説明から始まったその劇には、地元の子どもたちも10人以上出演していた。和知町は町のほとんどが山林で会場の周辺にはなにもない。過疎化が進む限界集落でもあるのだが、当日の会場はほぼ満員。予約客ばかりでなく、当日になって町の人々がたくさん鑑賞に来ていたと聞いた。演劇の内容は、私には理解しきれず消化不良な部分もあったが、観音堂の神秘的な雰囲気が素晴らしかった。今後も和知での活動展開を考えているというトリコ・Aプロデュースに注目したい。

2011/09/24(土)(酒井千穂)

Under 30 Architects exhibition 2011 30歳以下の若手建築家7組による建築の展覧会(2011)

会期:2011/09/09~2011/10/10

ODPギャラリー[大阪府]

大阪にて、2回目のU-30展に関連したシンポジウムの司会をつとめる。今年のU-30は昨年に比べると、会場での空間インスタレーションが減り、実作を行なう若手建築家が増えていた。7組のうち、4組が公募で入れ替わる。シンポジウムは、藤本壮介や五十嵐淳らの上の世代がU-30を煽り、最後にバトルモードになったところで惜しくも時間切れとなった。それゆえ、来年は討議の時間を増やすことが検討されているらしい。

2011/09/24(土)(五十嵐太郎)

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