artscapeレビュー

2011年12月15日号のレビュー/プレビュー

谷尻誠 展覧会「Relation」

会期:2011/10/25~2011/11/13

ビームスジャパン B GALLERY[東京都]

建築を浮かせたら、ということで、そのイメージによるインスタレーションの作品。一般の人にもわかりやすい、空中都市の模型である。部屋に入り、おお、どうやって浮かんでいるのかなあと見ていると、中央の微小なたわみと、小さな支持体が目にとまり、逆説的に重力の強さを感じる展示でもあった。

2011/11/11(金)(五十嵐太郎)

シンポジウム 次世代の表現と可能性5「アジアに飛びだす建築家が提示する新しい造形」

会期:2011/11/11

建築会館ホール[東京都]

年末に行なう恒例のシンポジウムの第5回。今度はグローバリズムに絡めて、アジアをテーマとした。高雄などの国際コンペで前衛的な造形を提示する平田晃久、台湾と日本、あるいはデジタルとリアルを行き来する豊田啓介、上海に拠点を置く佐伯聡子=KUUらがその活動を語る。現在の日本にはない、新しいチャンスがあるアジアの建築界を知るよい機会となった。

上:豊田啓介《GRAVITY-FIELDS》
下:KUU《マイナスKハウス》(上海)

2011/11/11(金)(五十嵐太郎)

《ソニーシティ大崎》

[東京都]

竣工:2011年3月

《ソニーシティ大崎》の見学会に参加した。駅前の140m四方に及ぶバイオスキンのファサードでは、多孔質な陶器製管内を雨水がめぐり、打ち水効果で都市を冷やす。悪者扱いされがちだが大きな建築だからこそできることを逆に考えたという。しかも、それによって多くの樹木を都市に植えたような効果をもたらす、オフィスビルである。内部は《ポンピドーセンター》のように無柱の大空間が広がっている。

2011/11/12(土)(五十嵐太郎)

『アンダーコントロール』

会期:2011/11/12

シアター・イメージフォーラム[東京都]

すでに政治的な決定により、原発を全廃することになったドイツの原発ドキュメント映画である。賛成とか反対のイデオロギーを出さず、淡々とその内部空間とシステムを描く。原発解体の現場や、廃墟になった原発はすごい迫力である。また建設途中で廃棄されることになった未完成の原発が遊園地に転用された事例では、なかなかシュールな風景が生まれていた。

2011/11/12(土)(五十嵐太郎)

日常/ワケあり

会期:2011/10/18~2011/11/19

神奈川県民ホールギャラリー[神奈川県]

江口悟、田口一枝、播磨みどりの3人のインスタレーション展。いずれもニューヨークで活動する30代のアーティストだが、ぼくはひとりも知らなかった。江口は机や椅子、棚、柱、バッグといった日常品を並べたインスタレーション、と思ったら、これがすべて着彩したハリボテ。たしかフィッシュリ&ヴァイスにも似たような作品があったなあと思って隣の部屋に行くと、前の部屋と瓜二つの机や椅子が配置を変えて並んでいるのでメマイがしそう。田口はプラスチックフィルムをさまざまなかたちに曲げ、そこに照明を当て光を乱舞させる作品、播磨は紙で馬や犬や鳥をつくり表面にその写真を貼りつけたり、大きな家のモデルに光を当てて幻想的な情景を生み出している。3人それぞれやりたいことは異なるが、作品の印象はどこか共通したものがある。それはハリボテ感が強く、実体感が希薄なこと。だから見ていてなにかずっしりとした手ごたえのようなものが感じられないのだ。これは9.11以降のニューヨークの傾向なのか、それとも30代の日本人アーティストの特徴なのか。

2011/11/12(土)(村田真)

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