2018年10月15日号
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artscapeレビュー

2012年03月15日号のレビュー/プレビュー

女子美スタイル2011

会期:2012/02/10~2012/02/13

BankARTスタジオNYK[神奈川県]

女子美の卒業・修了制作選抜展。設営中にチラッとのぞき見したらちょっとおもしろそうだったんで、あらためて来てみたらそうでもなかった。チャラいというか。大先輩の松井冬子を見ならいなさい。

2012/0/13(月)(村田真)

杉本博司──はじまりの記憶(試写)

会期:2012/03/31

渋谷シアター・イメージフォーラム[東京都]

手づくりの放電装置で印画紙の上に雷を発生させた放電写真、たしか鮭とブロッコリーがおかずの自作弁当、けっこうプリミティヴな手描きのアイディアスケッチ……。試写を見てから3週間後の現在、記憶に残っているのはこの3つぐらい。写真の可能性を限界まで追いつめ、近年は能や建築にまで触手を伸ばす希代のコスモポリタン杉本博司を撮ったドキュメンタリー映画にしては、やけに印象が薄い。それはおそらく、この映画に撮られていることはだいたい知っていたし、それをなんのてらいもなくストレートに撮っているので記憶に引っかからなかったからだろう。逆の見方をすると、記憶に残っているこの3つにはこれまで知らなかった杉本の素顔や、杉本らしくない意外な側面が映し出されているのかもしれない。たしかに仕事場に弁当持参というのは杉本らしくない意外な素顔だが、では放電装置とアイディアスケッチはどうだろう。たぶんこの3つに共通するのは「手づくり」ということではないかしら。杉本の作品や展覧会を見て驚くのは、一分のスキもなくきっちり完璧に仕上げられていて、まるで手の痕跡が感じられないこと。だからこの映画のように杉本の手づくり感を見せられると、わずかながらも心がざわめくのだ。おそらく杉本の完璧な仕上がりを支えているのは、こうした職人的な手づくりの積み重ねなのかもしれない。この映画自体も、よくも悪くも手づくり感にあふれている。

2012/0/13(月)(村田真)

安田佐智種「AERIAL」

会期:2012/01/13~2012/02/29

BASE GALLERY[東京都]

安田佐智種は1968年生まれ。東京藝術大学大学院修了後に渡米して、現在はニューヨークを拠点に活動している。彼女の初期作品に、透明なガラスの板のようなものに支えられた足の裏から、上空を見上げるアングルで撮影されたシリーズがあり、その身体を介した視点の転換の鮮やかさを印象深く覚えている。この新作「AERIAL」も、その延長線上の作品と言えなくもない。今度は旧作とは逆に、高層ビルのような高い場所から下を見おろす視点をとる。しかもそうやって撮影された300~500枚の画像を、コンピュータによる画像処理でコラージュし、ビル群が針の山のように地面から空中に突き出ている様を、圧倒的な視覚効果で定着している。安田のアイディアを形にしていく能力の高さがよく示されている作品と言えるだろう。
ただその処理の仕方が、あまりにも手際がよすぎるので、高所から下を見おろしたときの目眩や恐怖をともなう身体感覚が、やや希薄になっているように感じられた。画像処理がパターン化して、デザイン的に見えなくもないのだ。よく見ると、針のように突き出ているビル群の根元のところに、四角い空白のスペースが残っている。これがつまり、安田が下を見おろす基点となる場所ということだろう。足場となる場所が不在の空白として表現されてしまうというのは、なかなか面白いパラドックスだ。そのことを逆手にとって、その真白のスペースをより強調する表現のあり方も考えられるのではないだろうか。

2012/02/01(水)(飯沢耕太郎)

今道子「IMPACT」

会期:2012/01/26~2012/02/12

B GALLERY[東京都]

マッチ&カンパニーの「M/Light」レーベルから出た『IMPACT』は、今道子のひさびさの写真集。1970年代のキャベツのシリーズから2010年の近作まで35点が、大判のページにゆったりとおさめられている。その刊行を記念して新宿BEAMS JAPANのギャラリー・スペースで開催されたのが本展。写真集に収録された作品に加えて、2011年12月の飯沢耕太郎との二人展(銀座・巷房)で初めて公開された新作「鰯+眼+障子」のシリーズと、「めまいのドレス」も展示されていた。
今道子は一貫して、魚や野菜などの食物を素材にしてマニエリスティックな「ありえないオブジェ」をつくり上げて撮影してきた。その食感と触感を刺激しつつ、観客をリアリスティックな幻想の世界に引き込んでいく強度は、まったく衰えていないどころか、さらに強まっているようにも見える。だが、新作にはこれまでにない要素も加わってきている。「鰯+眼+障子」の障子の格子模様はどこか和風のテイストだし、「めまいのドレス」にはこれまでの彼女の作品には考えられない「ブレ」が効果的に使われているのだ。今はプライベートな事情もあって、2000年代のはじめから10年あまりほとんど作品を発表できなかった。その間に蓄積していた表現のエネルギーが、いま一挙に解放されようとしているのではないだろうか。基本的な制作の姿勢は変わらないだろうが、これまでにない要素が加わってくることで、作品世界のスケールが一回り大きくなってくることが期待できそうだ。

2012/02/01(水)(飯沢耕太郎)

没後150年 歌川国芳展

会期:2011/12/17~2012/02/12

森アーツセンターギャラリー[東京都]

会期も終盤だったため、平日の昼間だというのにかなりの人出。しかもこうした展覧会場に大量発生しがちな有閑おばちゃんより、なぜか若いカップルやおっさんが多い。これは国芳ならではの特異性なのか、単に仕事のないヒマ人が増えただけなのか。おそらく両方でしょうね。出品作品421点は尋常な数ではないが、前期・後期でほとんど入れ替わるため実際に展示されているのは200点強。それでも多いな。困ったのは、大半が浮世絵版画だからサイズが小さいうえ図柄も細かく、おまけに今日は混んでいるため頭越しにしか見られないこと。国芳の活躍した江戸時代(幕末)には浮世絵はひとり手にもってながめるもので、美術館みたいな会場に展示することを前提に描いてなかったからな。もともと巨大な空間で大人数に見せるものではないのだ。だから《宮本武蔵の鯨退治》や《鬼若丸の鯉退治》など大判三枚続の大画面があるとホッとする。バケモノの絵にホッとするというのも妙なものだが。

2012/02/01(水)(村田真)

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