artscapeレビュー

2012年04月15日号のレビュー/プレビュー

郷津雅夫「WINDOWS」

会期:2012/03/09~2012/04/07

KOKI ARTS[東京都]

郷津雅夫は東洋美術学校を卒業後、1971年に渡米し、ニューヨークを拠点に活動してきた。近年はニューヨーク郊外に移り、石彫作品を中心に発表している。それ以前は、取り壊された家の窓枠を周囲の煉瓦ごと組み立て直してインスタレーションする作品を制作していたが、その発想の元になったのが今回展示された「WINDOWS」のシリーズである。渡米直後からニューヨークのダウンタウンの窓にカメラを向け、パレードを見る人々を撮影したこのシリーズは、郷津の初期の代表作であり、今見ても色褪せない魅力を発している。
異邦人である郷津にとって、ニューヨークの「窓」は、文字通り目の前で閉じられているように感じていたに違いない。それらが大きく開け放たれ、住人たちが姿を現わす瞬間を撮影することは、心が大きく弾むような歓びを与えてくれたのではないだろうか。どちらかといえばあまり裕福ではない人々が多く住む地域で撮影しているにもかかわらず、そこには彼らとのポジティブな心の交流が感じられるのだ。
「WINDOWS」のシリーズは、1980~90年代にアメリカと日本で何度か展示され、『IN NEW YORK』と題されたアーティストブックとして、郷津自身の手で三度にわたって出版された。今回展示された大判ヴィンテージ・プリント(20×16インチ)には、その頃の空気感が凝縮して封じ込められているように見える。あらためて高く評価してよい作品ではないだろうか。

2012/03/09(金)(飯沢耕太郎)

踊りに行くぜ!!II[セカンド]vol.2 京都公演

会期:2012/03/10~2012/03/11

京都芸術センター[京都府]

コンテンポラリーダンスの普及を目的に10年間開催されてきた「踊りに行くぜ!!」がリニューアルして2010年にはじまったプログラム。新作のアイデア公募により作品およびアーティストを選出し、8月~12月にかけて制作、完成した作品が全国を巡回上演する。公演にはAプログラムとBプログラムの2種類があり、Bプログラムは開催地ごとに上演作品が異なるため、各会場によって内容の趣きも違うものになるという。京都では初公演であった今回は、Aプログラムに青木尚哉、菅原さちゑ(東京)の2作品、Bプログラムには坂本公成(京都)が鳥取のコミュニティダンスチーム“とりっとダンス”と制作した作品が上演された。コンテンポラリーダンスについてはまったく門外漢なのだが、この日一番に上演された菅原さちゑの『MESSY』は特に印象に残った。色とりどりの服やハイヒールが散乱するステージで3人の女性がじゃれ合ったり(?)暴れながら服を脱がし合っていくパフォーマンス。捲し立てる勢いの長いセリフも、登場する3人の女性のやりとりもユーモラスで激しい印象なのだが、アイデンティティや自分と他者との判然としない関係について思いを巡らせる作品で、後からいくつもの場面を思い起こすものだった。

踊りに行くぜ!! II [セカンド] vol.2 京都公演 予告編

2012/03/10(土)(酒井千穂)

3.11東日本大震災の記録 DVD上映会&講演会/ハノイ建築めぐり

会期:2012/03/10

ベトナム国立図書館[ベトナム・ハノイ]

ベトナム国立図書館にて、震災復興セミナーを行なう。まず震災と復興、世界への感謝と観光を呼びかけるDVDを上映し、高成田享による震災の教訓について講演、そして筆者の3.11以降の建築と都市のレクチャーが続く。午前8時スタートというのは、今まで経験したこの手のものとしてはもっとも朝が早いが、会場は満員だった。ベトナムに地震や津波の自然災害はないが、原発の事故には大きな関心があるようだった。
午後はハノイの建築めぐり。劇場や大聖堂など、フランス仕込み様式建築や近代建築がよく残っている。エルネスト・エブラールらの建築家が挑戦した、ゴシックや古典主義と、ベトナムの現地スタイルを折衷させたデザインも興味深い。

2012/03/10(土)(五十嵐太郎)

パラモデル展

会期:2012/02/17~2012/03/11

国際交流基金ベトナム日本文化交流センター[ベトナム・ハノイ]

国際交流基金の建物では、ちょうどアーティストのパラモデルの展示を開催中だった。彼らが屋内だけではなく、外壁もいっぱいに使い、プラレールをつなぐ作品を展開したのは、初めてのようである。

2012/03/10(土)(五十嵐太郎)

「東京国立博物館140周年記念グッズ」報道発表会

会期:2012/03/12

東京国立博物館[東京都]

東博が創立140年を記念してなにをやるかと思ったら、海洋堂と組んでフィギュア製作だと。フィギュアってひとことでいえばニセモノ。東博たるもの、なにが悲しうてニセモノづくりにはげむのか、なんてことはいわない。ぼくもフィギュア好きだもん。今回フィギュア化されるのは遮光器土偶、埴輪、銅鐸など6種の考古遺物。3月20日から館内に設置したカプセルマシンで1回400円で買える。記者会見では、東博の担当者が細かい点まで再現してもらうためしつこく注文をつけたというが、海洋堂にしてみればイヤなクライアントだったに違いない。これが「第1集」なので2集、3集と続いていくらしい。ぼくとしてはぜひ「踏絵」をフィギュア化してもらいたい。携帯踏絵、かわいくね? あ、プレスリリースを見たらフィギュアだけじゃなく、凸版印刷とコラボした「洛中洛外図屏風(舟木本)」の高品位複製(なんと300万円! ただし来年3月までは特別定価250万円、ってだれが買う!?)や、資生堂パーラーと製作した「見返り美人のチーズケーキ」も館内で発売するという。昔の東博だったら考えられないことだが、おそらく独立行政法人化以降のことだろう、いまや白昼堂々と民間企業と手を組むようになった。老いてますます盛ん、東博もさらに「でんぢゃらすじーさん」を目指してほしい。
URL=http://www.tnm.jp/modules/r_event/index.php?controller=dtl&cid=5&id=5850#goods

2012/03/12(月)(村田真)

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