artscapeレビュー

2012年06月15日号のレビュー/プレビュー

眞壁陸二「time after time」

会期:2012/04/06~2012/05/31

ベイスギャラリー[東京都]

画面を縦や横に分割し、樹木のシルエットを描いた作品。2010年の「瀬戸内国際芸術祭」では男木島の路地に壁画を描いて話題になったが、たしかにこれは装飾的に見えるせいか、タブローより木塀などに描いたほうが見映えがする。それを意識したのか、細い木の板を並べた作品もあるが、これは遠目には、かつての彦坂尚嘉の「ウッド・ペインティング(PWP)」シリーズを想起させる。まだまだ展開の余地はありそうだ。

2012/05/24(木)(村田真)

宗廣コレクション:芹沢 介 展

会期:2012/04/07~2012/06/03

京都文化博物館[京都府]

柳宗悦や浜田庄司、河井寛次郎らとともに民芸運動を主導した作家で、型絵染の人間国宝として知られる芹沢 介(1895~1984)。この展覧会は、郡上紬の作家である宗廣陽助(むねひろ・ようすけ)氏が所蔵する芹沢作品を紹介するもので、代表作の屏風や暖簾、反物、染め絵をはじめ、ガラス絵、素描など150点が展示された。文字自体を文様化した《風の字文のれん》や《丸紋伊呂波屏風》、文字の周囲に草花や鳥を配した飾り文字作品《春夏秋冬》など、色彩と遊び心に溢れた型絵染作品の楽しさもさることながら、会場にはこれまであまり目にする機会のなかったガラス絵や板絵、肉筆絵、下図なども数多く展示されており、作家の人となりや日頃の視点が伝わってくるような内容だったのが嬉しい。また、芹沢がよく好んで描いていたモチーフや、色違いの作品なども紹介されていた今展。一人のコレクターの、作家と作品への慈しみがいたるところに感じられる素敵なものだった。

2012/05/24(木)(酒井千穂)

artscapeレビュー /relation/e_00016360.json s 10032840

SSD 2012年度春学期 Interactiveレクチャー「境界線上のインテリアデザイン」♯1|SSDハウスレクチャー「倉俣史朗論」鈴木紀慶

会期:2012/05/24

阿部仁史アトリエ[宮城県]

せんだいスクールオブデザインにて、編集者の鈴木紀慶さんを招き、彼の手がけた2冊の倉俣史朗本をベースにレクチャーをしていただく。高松次郎や横尾忠則など、60年代におけるアートとのコラボレーションを行なったインテリア、ミニマリズム的な展開、カラフルでセンスあふれるポストモダン、後の建築界の動向に大きな影響を与えたであろう軽さと透明感への志向など、経験に頼らず、彼が新境地を開拓した軌跡/奇蹟を追う。

2012/05/24(木)(五十嵐太郎)

安村崇「1/1」

会期:2012/05/13~2012/06/10

MISAKO & ROSEN[東京都]

安村崇のデビュー作「日常らしさ」(1999)はとても興味深いシリーズだった。彼の身の回りの日常の場面で見慣れた事物を、大判のカラーフィルムで精密に撮影・プリントする。ところが、それら蜜柑、ケーキ、ホッチキス、ホースなどは、あまりにも本物らしいがゆえに、逆にどこか偽物めいた雰囲気(「日常らしさ」)を露にし始めるのだ。視覚的に正確に撮影すればするほど、心理的な真実からは隔たってしまう──そんな写真特有の二律背反が見事な手際で暴かれていたといってもよい。
それから10年あまりが過ぎ、安村は淡々と、だが着実に写真の「見え方」の探求を続けていった。その成果がひさびさの新作として発表されたのが、今回のMISAKO & ROSENでの個展「1/1」である。壁に並んでいる11点の作品は、いわば「色面の研究」の成果といえる。赤、緑、青、黒など壁面、階段、柱などの一部が、抽象的なパターンとして切り取られて画面の中に配置されている。タイトルの「1/1」というのは、「現実とそれを表わしたものとの関係」ということのようだ。つまり、被写体と写真の画像がほぼ同じ大きさであるというだけではなく、「カメラを通したもうひとつの『1』」として定着されているのだ。奥行きのある三次元空間を捉えた「日常らしさ」とはかなり違っているようで、この一見平面的、装飾的なシリーズでも、安村のアプローチは一貫している。ここに浮かび上がってくる「色面」も、その微妙な陰影やテクスチャーへのこだわりによって、やはり「色面らしきもの」に置き換えられているのだ。
ただ、今のところ、その探求の道のりはまだ半ばであるように感じた。「日常らしさ」のような鮮やかなどんでん返しに至るまでには、もう少し別な(細やかな)操作が必要になってくるのかもしれない。

2012/05/25(金)(飯沢耕太郎)

荒木経惟「過去・未来 写狂老人日記1979年-2040年」

会期:2012/05/25~2012/06/23

Taka Ishii Gallery[東京都]

荒木経惟が元気だ。このところ、以前にも増して精力的に写真集を刊行し、写真展を開催している。IZU PHOTO MUSEUMでも、これまで刊行した写真集450冊(!)あまりを一堂に会する「荒木経惟写真集展 アラーキー」(2012年3月11日〜7月29日)を開催中だ。72歳の誕生日のお祝いを兼ねた「過去・未来 写狂老人日記1979年-2040年」のオープニングにも、元気な姿を見せていた。2008年に前立腺癌の手術を受けて以来、お酒や肉を控え、健康に気を使うようになっているようだ。まだまだ、やりたいことがたくさんあるということだろう。
今回の個展に展示されているのは、お馴染みの「写狂老人日記」のシリーズ。だが、単純に近作を並べているだけでなく、その構成には工夫が凝らされている。「過去」のパートでは、1970〜90年代の日付入りモノクローム・プリントが並ぶ。『荒木経惟の偽日記』(1980)、『写狂人日記』(1992)などに収録された名作のオンパレードだが、あらためて見直してみると荒木の前を通過していった人、事、物の膨大な集積が、実に味わい深い各時代の見取り図を描いていることが見えてくる。
「未来」のパートは、6,000枚近いというカラー・ポジフィルムを、自ら鋏でカットし、並べ直した三面マルチ作品。巨大なテーブルに蛍光灯を仕組み、内側からフィルムを透過光で照らし出すようになっている。これだけの量、しかも小さな35ミリポジフィルムの群れを見続けていると、頭がクラクラしてくる。女、空、食事、花、バルコニー、そしてふたたび空──飽きもせず同じ被写体を撮り続けるエネルギーには驚嘆するしかないが、ここにもいかにも荒木らしい仕掛けが凝らされている。最後のあたり、日付入りコンパクトカメラで撮影されたカットの、その日付の表示が「2040」になっているのだ。2040年といえば、荒木が100歳の誕生日を迎える年。ぬけぬけと「未来の写真」まで展示しているわけだが、それがあながち冗談とも思えなくなってくる。100歳の荒木が、なおも淡々と「写狂老人日記」を撮り続けていそうな気もしてくるのだ。

写真:荒木経惟「過去・未来 写狂老人日記」2040年、35mm カラーポジフィルム
Courtesy of Taka Ishii Gallery

2012/05/25(金)(飯沢耕太郎)

2012年06月15日号の
artscapeレビュー