artscapeレビュー

2012年06月15日号のレビュー/プレビュー

プレビュー:淀川テクニック個展「はやくゴミになりたい」

会期:2012/06/16~2012/07/08

art zone[京都府]

大阪、淀川の河川敷をおもな活動場所として、捨てられたゴミや漂流物を用いて作品制作を行なっているアートユニット、淀川テクニック(柴田英昭、松永和也)。彼らが扱うゴミという“モノ”と、ゴミという素材を扱うという“コト”に注目し、展示や参加型のイベントを通して、ゴミの問題やわれわれの生き方について考えようという展覧会。淀川テクニックと一緒に鴨川へゴミ拾いに行き、写真などの記録を取りながら、それらが辿ってきた時間を想像して「ゴミの履歴書」を作成するというワークショップが面白そう。6月17日(日)と7月1日(日)の2回開催される。

2012/05/13(日)(酒井千穂)

田中奈津子 展「豊かな絵」

会期:2012/05/08~2012/05/13

アートスペース虹[京都府]

会期:2012/05/08~2012/05/13
会場:アートスペース虹
地域:京都府
サイト:http://art-space-niji.com/
本分:花瓶やピッチャーから溢れる水と女性を描いたタブローが並んでいた。線と色彩が模様のように広がる画面は透明感があり、どれも綺麗だ。いくつかの作品は、ところどころに盛り上げられた絵の具の質感と重厚感が画面に奥行きを感じさせるもので、離れてみると印象が異なる不思議な面白さがある。小さなピッチャーから水が溢れるというイメージには、震災(の映像)とその衝撃、それ以降の思いが影響しているそうだが、描かれているものは絶望的なものではなく、ユーモアも混じるものだった。以前見た作品と比べて、画材や手法に複雑で緻密な印象を受けたが、表現そのものにはすこんと突き抜けた壮快感がある。作家自身の心境の変化も感じた個展。今後の活動がまた楽しみになった。

2012/05/13(日)(酒井千穂)

開館35周年記念シンポジウム「写真の誘惑─視線の行方」/開館35周年記念展「コレクションの誘惑」

国立国際美術館[大阪府]

会期:2012/04/21~2012/06/24、2012/5/13
国立国際美術館のシンポジウム「視線の行方」におけるセッション3「写真と建築」に参加し、近代建築のイメージがどのように写真のなかでつくられたか。あるいはカメラ・オブスキュラとしての建築など、二つのジャンルが出会うケースについての基調報告を行なう。その後、写真家の鈴木理策、建築家のヨコミゾマコトを交え、どこをどのように撮影するかをめぐっての建築家と写真家の駆け引き、CGの技術が発達したことによるデジタル時代の存在しないイメージの突出などが討議された。それにしても、開始前の館外の行列を見ると、写真の企画はとても多くの来場者が関心をもっているテーマであることがよくわかる。セッションの終了後、開館35周年記念展「コレクションの誘惑」を観る。ここのコレクションは、いまや現代美術史の貴重なアーカイブになっている。展示の第二部はシンポジウムと同様、写真の作品を特集したものだった。

2012/05/13(日)(五十嵐太郎)

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勝正光が作品を携えて、別府から神戸に船でやって来た。──神戸での制作と展示とまち歩き

会期:2012/05/10~2012/05/15

ギャラリー301[兵庫県]

神戸大学大学院生の橋本みなみの企画で開催された別府在住の勝正光の個展。私ははじめて知ったのだが、勝は鉛筆画を描いている作家で、今展はそのサブタイトルのとおり、事前に実施された神戸での「まち歩き」も彼の制作の在り方や魅力を知るための鍵になっていた。会場には、勝がそれまでに描きためてきた鉛筆画やスケッチ、今回、神戸での滞在で制作された作品などがたくさん展示されていたのだが、ひとつずつ見ていくうちにその観察力の高さと感受性の豊かさに引き込まれていく。神戸で出会った人々や、その記憶をモチーフにした作品、実際に作家が目にしたものなど、展示作品はどれも、日常の物事をこんなにもきめ細やかに見ていたら疲弊してしまうのではないかと思うほど力強く、入念な筆致だった。なかでもそのような彼の制作態度を如実に示していたのが白い紙を隅々までひたすら鉛筆で塗りつぶした(だけの)大きな作品。一面に表われた独特の光沢の迫力もすごい。モチーフも道具もシンプルだが、清々しさを覚えるものだった。


展示風景

2012/05/15(火)(酒井千穂)

報道写真とデザインの父 名取洋之助 日本工房と名取学校

会期:2012/04/27~2012/06/26

日比谷図書文化館 IF特別展示室[東京都]

名取洋之助は写真家、編集者、プロデューサーと多面的な顔を持つ人物であり、その活動も一筋縄では捉え切れない。たしかに戦前の海外向け日本文化広報誌『NIPPON』や、1950年代に全286冊を刊行した「岩波写真文庫」など、輝かしい業績を残したが、一方では対中戦争における宣伝・謀略活動への関与や、わずか2年あまりしか続かず大失敗に終わった『週刊サンニュース』(1947~49)の刊行など、ネガティブな側面もないわけでもなかった。性格的にも、明るく派手好みでありながら、感情の起伏が激しく、怨みや妬みを買うことも多かったようだ。
今回の「報道写真とデザインの父 名取洋之助 日本工房と名取学校」に展示された作品・資料もなんとも雑駁に広がっていて、名取の仕事のとりとめのなさをよく示している。だが、その1点1点に目を向ければ、細部まで手を抜かずに仕上げられたクオリティの高さは驚くべきもので、まぎれもなく名取の優れた才能と美意識の産物であることがよくわかる。『NIPPON』のデザインやレイアウトなどは、当時の日本の水準をはるかに超えており、ヨーロッパの出版物と肩を並べる(時にはそれすら凌駕する)レベルに達している。
むしろ名取洋之助という希有な存在は、一個人としてよりは、1930~60年代の日本の写真家、デザイナー、編集者たちのネットワークの結節点(ハブ)、として捉えるべきなのではないだろうか。その意味で「日本工房と名取学校」という本展の副題は的を射ている。土門拳、藤本四八、三木淳、長野重一(以上写真家)、亀倉雄策、山名文夫、河野鷹思、熊田五郎(以上デザイナー)──綺羅星のように並ぶ若き俊英が、「名取学校」からその才能を開花させていく。その様はまさに壮観と言うしかない。

2012/05/15(火)(飯沢耕太郎)

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2012年06月15日号の
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