artscapeレビュー

2012年11月15日号のレビュー/プレビュー

操上和美「時のポートレイト」

会期:2012/09/29~2012/12/02

東京都写真美術館 2階展示室[東京都]

操上和美は言うまでもなく、1960年代から日本の写真界の最前線で活動してきたひとりである。広告や雑誌の仕事だけでなく、コマーシャルフィルムの制作にも積極的に取り組み、2008年には初監督作品の映画『ゼラチンシルバーLOVE』も発表した。だが、50年あまりプロフェッショナルな映像作家として活動を続けながら、彼はむしろ自分自身のための写真の撮影にこそ情熱を傾けてきたのではないか。今回、東京都写真美術館で開催された「時のポートレイト」展には、それら日々の「眼の鍛錬の記録」と言うべき写真群がずらりと並んでいた。
展示されていたのは「陽と骨」「NORTHERN」の2シリーズ。1970年代からトイカメラを使って撮影されている「陽と骨」は、粗い粒子、コントラストの強いモノクロームの画像で日常の断片を切りとっている。「NORTHERN」は、1994年の父親の死をきっかけに、故郷の北海道を集中的に撮影した写真群で、92年と94年のロバート・フランクとの旅の写真も含まれている。両者に共通するのは、光と影の交錯、生と死の気配、現実と夢の境界領域などに鋭敏に反応する、まぎれもなく写真家特有の研ぎ澄まされた生理感覚と言うべきものだ。操上の仕事の写真は、クライアントの要求に充分に応える職人的なプロフェッショナリズムの産物と言えるが、これらのシリーズでは、あくまでも自分の見方に固執し続けている。その頑固な姿勢は潔いほどであり、仕切りを全部取り払って、周囲の壁にゆったりと作品を配置した会場構成にも、「これしかない」という揺るぎない確信を感じとることができた。

2012/10/04(木)(飯沢耕太郎)

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田中一光とデザインの前後左右

会期:2012/09/21~2013/01/20

21_21 DESIGN SIGHT[東京都]

21_21はいつもあっさりとした展示が多いが、今回の「田中一光とデザインの前後左右」展は豊富な資料を揃えた濃密な内容だった。彼が具体美術と吉原治良の影響を受けていたことを知る。また、とくにブックデザインの紹介が楽しい。かたちがなくなる情報化時代を迎えたことで、改めて文字と写真が本というモノとしてパッケージ化されていたことを強く再認識した。会場構成とデザインは弟子の廣村正彰が担当している。

2012/10/04(水)(五十嵐太郎)

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メトロポリタン美術館展「大地、海、空──4000年の美への旅」

会期:2012/10/06~2013/01/04

東京都美術館[東京都]

最初に「メトロポリタン美術館展」を見たのは高校生のとき。ボナールのバラ色の絵が美しかったなあ。以来40年、何度開かれたことだろう。メトロポリタンに限らず、ルーヴルもエルミタージュも数年に一度はコレクション展が開かれている。彼らは数十万から数百万点ものコレクションを持っているから、毎年100点ずつ違う作品を選んでも1万年は続けられる計算だ。でもそれじゃあ芸がないので毎回テーマを立てることになる。ちなみに40年前の初の「メトロポリタン美術館展」のときはテーマなし、サブタイトルもなしの名品展だったが、それでも30万人もの人が集まった。今回はテーマが「自然」、サブタイトルは「大地、海、空──4000年の美への旅」というもの。これは西洋美術の紹介としては王道からはずれるけど、自然と親しんできた日本人向けには妥当な設定かもしれない。作品は、理想化された風景や人の手の入った農村風景、動植物を描いた絵や工芸、自然をとらえた写真など、時代もジャンルもさまざまで、プッサン、レンブラント、ターナー、ドラクロワ、ミレー、モネ、ゴッホと、巨匠たちの作品もそろってる。また、日本向けを意識したのか、ティファニーのガラス工芸やカエルをモチーフにしたお盆、エミール・ガレの飾り棚など、日本美術の影響を受けたジャポニスム系の作品も目についた。そうやって見ると、ゴーガンの《水浴するタヒチの女たち》もジャポニスム色の濃い絵であることに気づく。いろんな意味で楽しめる展覧会。残念なのは、メトロポリタンはフェルメール作品を5点も持ってるのに1点も来てないことだが、「自然」がテーマだから仕方がないか。

2012/10/05(金)(村田真)

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建築新人戦 2012

大阪梅田スカイビル ファンファンプラザ5階展示場(タワーイースト5階)、空中庭園展望台ギャラリー[大阪府]

建築新人戦に審査員として参加した。現在、梅田スカイビルでの巨大化したイベントになっているが、京都工繊の教室を使った第1回の立ち上げの展示と審査を見ていたので、その急成長ぶりがよくわかる。応募総数も500を超え、あきらかに水準が上がっている。海外枠も今だからこそ、中国や韓国の学生が一緒に発表していることは意義深い。
今回、すぐれたセンスと人を真似ない独自性から、早稲田大学の田代晶子による小学校を推そうと最初から決めていたが、最後まで残って1位になった。筆者の投票はシンプルだ。完成度が高くても、楽しそうな空間でも、流行の何かに似てるものは基本的に選ばない。既存のモデルを下敷きにすれば、優秀なものはつくりやすいからだ。また自分の考えを補強する案よりも、むしろ自分が考えていなかったような視点をくれる案を好む。

2012/10/06(土)(五十嵐太郎)

タケヤアケミ──SOSに関する小作品集

会期:2012/10/05~2012/10/07

BankARTスタジオNYK[神奈川県]

大野一雄フェスティバルのプログラムで、映像と言葉と身体を絡めたパフォーマンス。スクリーンに数秒ごとに映し出される「SURPRISE OR SHOCK」とか「SPIRIT OF SAMURAI」とか「SOUND OF SILENCE」(はなかったかも)といった言葉にタケヤが反応し、なかば即興的に言葉と動きを紡ぎ出していく。これを何度か繰り返すうち、3文字のイニシャルがタイトルにもなってる「SOS」であることに気づく。というと、知的なコンセプチュアル系のパフォーマンスに聞こえるかもしれないが、実際にはひっくり返ったり、しどろもどろになったり、素っ裸になったりする天真爛漫なタケヤの性格に負うところの多いパフォーマンスであった。ところで「タケヤアケミ」の名前に記憶があったので、ひょっとしてと思い終演後に聞いてみたら、やっぱり! 彼女は25年前に横浜の開港記念会館で開かれたパフォーマンス・フェスティバル「メイ・ガーデン」に、いまは亡きアーティストの村上達人が連れて来た新人ダンサーだった(当時は竹谷明美)。そのとき、ぼくがこのイベントのコーディネーターをやり、またBankART代表の池田氏はPHスタジオのメンバーとして参加していたのだ。ああ、なんかひとまわりしてつながった感じ。

2012/10/07(日)(村田真)

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