2018年06月15日号
次回7月2日更新予定

artscapeレビュー

2012年12月01日号のレビュー/プレビュー

森山大道「Mesh」展

会期:2012/10/20~2012/11/11

GUCCI新宿 3階イベントスペース[東京都]

森山大道がGUCCIで新たな作品を見せた。会場の壁や柱には、網タイツをはいた女性の脚をクローズアップでとらえたモノクロのシルクスクリーンが隙間なく貼りめぐらされ、その合間に森山の写真作品が展示された。シルクの粘着性と森山写真のザラついた表面。それらが奇妙に調和することによって、濃厚なエロチシズムと殺伐とした荒涼感が同時に迫ってくる。いつも以上に、退廃的な空気感を醸し出していた点が、これまでの森山写真からすると新しい。従来の形式を踏まえながらも、その先を切り開こうとする貪欲な精神には、見習うべきところが多い。

2012/10/24(水)(福住廉)

キュレーターからのメッセージ2012 現代絵画のいま

会期:2012/10/27~2012/12/24

兵庫県立美術館[兵庫県]

現代における絵画の諸相を、14作家の仕事で紹介している。作品傾向はバラエティに富み、いわゆるタブロー(居城純子、渡辺聡、彦坂敏昭、丸山直文、横内賢太郎、奈良美智、法貴信也)から、超大作(平町公)、壁画(野村和弘)、映像を駆使したもの(大﨑のぶゆき、石田尚志)、その他(和田真由子、三宅砂織、二艘木洋行)と、実にさまざまだった。また、いわゆるタブローとグルーピングした作家も、その作風には多様性が見られた。質の高い作品が揃ったので見応えがあり、現代の多様な状況が窺える展覧会だったのは確かだ。ただ、同種の企画展にありがちなことだが、総花的な紹介に終始し、明瞭に「現代絵画とは〇〇だ」というような見解が示されることはなかった。それが非常に困難なことは理解しているが、今、あえてそこに踏み込む勇気を見せてほしいとも思った。

2012/10/26(金)(小吹隆文)

深い闇の奥底 フランソワ・ビュルラン展

会期:2012/10/26~2012/11/18

ギャルリー宮脇[京都府]

薄茶色の包装紙をつなぎ合わせた画面には、創造主を思わせる牙とあごひげの人物(時には数名)と、魚、鳥、獣、有翼の天使(?)などが描かれ、同心円が余白を埋めている。また、牙とあごひげの人物から吐き出された白い線が、まるでエクトプラズムのように画面上を漂っていた。一見して思い出されるのは、ラスコーやアルタミラなど先史時代の洞窟壁画だ。無限の闇に引きずり込まれるような恐怖感と生命への賛美がないまぜになった、一言では言い表わしにくい感情が身を包んでいく。呪術的な魅力を備えた作品であることは間違いない。私はこの作家を本展で初めて知った。海外作家なので滅多に見ることはできなさそうだが、今後も機会があれば必ずチェックしておきたい。

2012/10/30(火)(小吹隆文)

エマージング・ディレクターズ・アートフェア「ウルトラ005」[オクトーバー・サイド Oct. side]

会期:2012/10/27~2012/10/30

スパイラルガーデン[東京都]

典型的な現代アートの見本市だが、会場でひときわ異彩を放っていたのは、「ヴォルカノイズ」の伊藤誠吾。拠点としている秋田の各地で繰り広げたパフォーマンスの映像と、それらを見せる小さな空間を幼少時の写真や当時獲得した表彰状などによって構築した。
いずれもバカバカしいテーマをひたすらバカバカしく追究しているところがまたバカバカしいが、その一方で安易に他者との関係性やコミュニケーションをねらわない潔さが清々しい。なかでもビデオカメラを無言のまま、ただひたすら目前の相手に向け続け、顔面をクローズアップで撮るだけの映像作品は、被写体とさせられた人が笑顔の隙間に一瞬垣間見せる不快感やわずかな攻撃性をあぶり出す傑作だが、しだいにビデオカメラという暴力装置の(というより、正確にはそれを駆使する伊藤自身の)不気味な迫力に、映像を見る側がいたたまれない気持ちになってくる。難癖をつけるチンピラの視線に同一化してしまったような居心地の悪さを感じてならないのである。
これだけ映像作品が氾濫している昨今、幸福なコミュニケーションをねらう映像は数あれど、これほど挑発的でこれほど悪意の込められた映像はほかにない。しかし、人間のコミュニケーションがディスコミュニケーションとつねに表裏一体の関係にある、きわめて危ういものだとすれば、伊藤の挑戦的な映像は、私たちのコミュニケーションを裏側から鋭く突き刺す鋭利な刃物なのだろう。その類まれな鋭さを評価したい。

2012/10/30(火)(福住廉)

開館記念展 I 横尾忠則 展「反反復復反復」

会期:2012/11/03~2013/02/17

横尾忠則現代美術館[兵庫県]

横尾忠則が兵庫県に寄贈・寄託した約3,000点の作品と膨大な資料を中核に、11月3日に開館した横尾忠則現代美術館。場所は神戸市灘区の原田の森ギャラリー(旧兵庫県立近代美術館)西館で、村野藤吾が設計したモダン建築の名作を一部改修して復活させたものだ。開館前日の開館式&パーティーには溢れんばかりの招待客が訪れ、同館並びに横尾への期待の高さが感じられた。こけら落しの本展は、横尾作品にしばしば見られる同一モチーフの反復をテーマにしたもの。1960年代と2000年以降の作品を組み合わせるなど、異なる年代の作品を並置することにより、彼の芸術の基盤と変遷を明らかにした。今後同館は、もっぱら横尾作品を展示する場になると思われる。しかし、せっかく兵庫県に現代美術館ができたのだ。近い将来には他の作家の個展やグループ展も開催し、文字通り兵庫県の現代美術の要となってほしい。

2012/11/02(金)(小吹隆文)

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