2018年10月15日号
次回11月1日更新予定

artscapeレビュー

2013年03月01日号のレビュー/プレビュー

高田光治 展

会期:2013/01/15~2013/01/31

ギャラリー風[大阪府]

以前見た高田の作品は平面で、作品の表面をレースの布で覆ったものだった。ところが今回の作品はまったく別物。野山で採集したキノコ、粘菌、種子、植物、昆虫などが標本よろしくスポンジ製の台座に設置され、全長2~3メートルの船型立体の上にずらりと並べられていたのだ。まるでノアの方舟である。また、平面、立体、ケース型の作品なども展示されていた。聞くところによると、作家は勤務地の美大近辺の山々で、長年にわたり採集を続けてきたという。なるほど、過去の作品にもこうした生命への関心がベースにあったのか。それにしても、この方舟の魅力的なことと言ったら。事前に内容を知らずに出かけたので、感動もひとしおだった。

2013/01/22(火)(小吹隆文)

周縁からのフィールドワーク

会期:2013/01/18~2013/02/02

ギャルリ・オーブ[京都府]

写真家の小野規が2000年代にパリ近郊の郊外団地を撮影したシリーズ《周縁からのフィールドワーク》を起点に、周縁・境界を意識して自身の表現を模索する4作家(藤本由紀夫、小沢さかえ、中川トラヲ、山本基)を加えた展覧会。日本の公団住宅で育った筆者にとって、小野が捉えたフランスの郊外団地の情景はどこか懐かしく、20世紀モダニズムの普遍性を改めて実感した。一方、パリの郊外団地と言えば、1995年のフランス映画『憎しみ』に代表される、移民の巣窟で犯罪多発地帯という印象もある。小野の作品には映画のような荒廃した空気が感じられなかったが、実際はどうなのだろう。また、本展で筆者がもうひとり注目したのは、藤本由紀夫だった。作品は彼の定番と言うべき、オルゴールを用いたサウンドオブジェだったが、胴体部分を梱包用の段ボールで制作していたのだ。ガラスや金属を用いたこれまでの作例とはずいぶん違う印象で、見慣れた作品から新たな魅力を引き出したのは見事だった。

2013/01/24(木)(小吹隆文)

路上と観察をめぐる表現史──考現学以後

会期:2013/01/26~2013/04/07

広島市現代美術館[広島県]


考現学から路上観察学会へ至る表現活動を歴史化した展覧会。大正時代における今和次郎や吉田謙吉らによる考現学にはじまり、50年代の木村荘八、岡本太郎、60年代末から70年代にかけてのコンペイトウ、遺留品研究所、そして80年代の路上観察学会、大竹伸朗、都築響一、さらに90年代のチーム・メイド・イン・トーキョー、ログズギャラリー、00年代の下道基行まで、文字どおり路上と観察をめぐる表現の系譜を描いてみせた。従来のモダニズム一辺倒の歴史観に対して、オルタナティヴな歴史のありようを提示した、きわめて画期的な展覧会である。
展示されたのは「作品」には違いないが、それは自己表現の産物としての「作品」というより、むしろ「路上」の「観察」にもとづいた「報告」に近い。だから、考現学にしろ路上観察学会にしろ遺留品研究所にしろ、それらの「作品」には非常に微細な情報が盛り込まれており、来場者はひとつずつ丁寧にそれらを読み解くことになる。その膨大な情報量は心地よい疲労感を味わわせるほどで、見れば見るほど、いや読めば読むほど、じつに楽しい。
だからといって、それらがたんなる「報告」に過ぎないかと言えば、必ずしもそうとは限らない。今和次郎や吉田謙吉らによるスケッチは構図や線、色、絵と文字のバランスなどが秀逸であるし、そうした手わざの技術的センスは写真が代行することよって次第に失われていくが、シャッターを切るべき対象を見抜く視線のセンスは、路上観察学会や都築響一、下道基行による写真を見る限り、考現学以後もたしかに継承されていることがよくわかる。平たく言えば、おもしろい物なり人なりを「発見」する研ぎ澄まされた感性こそ、路上と観察をめぐる表現史の核心なのだ。
歩行と発見、観察、記録。このような表現のありようは、現代アートにおいて自明視されている、自我の内発的な必然性から表出された自己表現という表現の様態とは、明らかに異なっている。これを、たしかな歴史的な背景とともに打ち出したことの意義はとてつもなく大きい。自己表現の隘路と限界に苛まれている私たちに、それはもうひとつの選択肢を提供するからだ。本展には含まれていなかったにせよ、たとえば現在の坂口恭平や山下陽光らによる「発見」のアートは、間違いなくこのような歴史的系譜に位置づけられるのである。
とはいえ、細部の構成については難点がないわけではない。本展において考現学のスケッチは、木村荘八や岡本太郎らによる写真に一気に飛躍するかたちで継承されていたが、この手わざと写真撮影のあいだには、じつはイラストレーションにおける豊かな成果が隠されている。60年代後半に「イラスト・ルポ」を確立した小林泰彦や70年代に「エアログラム」を制作した堀内誠一、「河童が覗いた」シリーズの妹尾河童などは、考現学的な視線と手わざの忠実な後継者として考えられるからだ。とりわけ、小林泰彦は本画とともに挿絵画家としても知られた木村荘八に私淑していたのだから(『美術手帖』2010年1月号、p.111)、木村/小林ラインの欠落は否応なく気になる。
路上と観察をめぐる表現史には、少なくとも戦後美術を再構成する契機がある。その可能性をできるだけ押し広げていくことが、本展以後の課題なのだろう。

2013/01/26(土)(福住廉)

artscapeレビュー /relation/e_00020470.json s 10078852

中西學 展 Brightness─multiple galaxy

会期:2013/01/28~2013/02/02

番画廊[大阪府]

中西が近年精力的に取り組んでいる《Luminous Flux》シリーズの新作10点を出品。同シリーズは、和紙にアクリル絵具でマーブリングを施し、表面を透明ポリエステル樹脂でコーティングした抽象的な平面作品だ。光学的な明るさ、精神の高揚、天体の運行などを意識した表現であり、人間が追求してやまない普遍的・根源的なビジョンを彼なりの美意識で具現化したものと言える。技術の向上とともに作品サイズも大型化し、本展ではF150号の大作を出品するに至った。これが滅法よい出来栄えで、同シリーズもいよいよ円熟期を迎えたのではなかろうか。中西は今年で創作活動30周年を迎えるが、まずは上々のスタートと言っていいだろう。

2013/01/28(月)(小吹隆文)

高間智子 展─積層彩磁の世界─

会期:2013/01/29~2013/02/03

ギャラリー恵風[京都府]

顔料で着色した泥漿を型に流し込み、排泥しては別の色の泥漿を流し込む作業を何度か繰り返して、複数の色層を持つ器を造形。その表面を針のような道具で掻き落として、植物柄の装飾をまとった皿、花器、ぐいのみなどの磁器作品をつくり上げている。繊細な図柄から作業の細やかさが感じられ、完成度の高さにも感心させられた。一方、これまでにない形態と彫り模様の蓋物も出品されていたが、こちらはいまだ発展途上の趣。ほかには、掻き落とした溝に釉薬を流し込んだ新作もあった。

2013/01/29(火)(小吹隆文)

2013年03月01日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ