artscapeレビュー

2013年03月15日号のレビュー/プレビュー

ワンダーシード2013

会期:2013/02/02~2013/02/24

トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]

2003年から始まった小品の公募+展示+即売会。10号(53×45.5センチ)未満の作品が3万円以下で売られている。ザッと数えてみると、100点中79点が売約済みだから、開催2週間でおよそ8割の売れ行き。これはかなりの高確率だ。ぼくの記憶では、始めたころは半分以上売れ残っていたのに、2007~08年ころはプチバブルのせいか、開催直後に売り切れてちょっと話題になっていた。それがリーマンショック後は再び売れ残りが目立つようになったものの、最近はまた復活し始めている感じ。たった10年でこんなに浮き沈みがあったんだと再認識した。まあ今年はイラストっぽい絵が減ってレベルアップしたから売れ行きも伸びたのかな、とも思ったけど、必ずしも作品の質的レベルと売れ行きは関係あるとは限らないことがわかる。

2013/02/16(土)(村田真)

アクションドローイング ヒーロー

会期:2013/01/26~2013/02/24

六本木ブルーシアター[東京都]

韓国からやって来た4人のドローイング野郎ども。歌って踊れるじゃないけど、踊って笑って絵も描く珍しいエンターテインメントショーだ。最初は日本人へのサービスなのか、坂本龍馬のポートレートに始まり(さすがに伊藤博文じゃなかった)、4人がそれぞれ描いた絵を合わせるとマイケル・ジャクソンになったり、黒い画面に黒い絵具で描いてサッと揺するとブルース・リーの顔が表われたり、積み上げたルービックキューブをいじるとスーパーマンの顔になったり、客を舞台に上げて伝言ゲームをしながらウルトラマンの姿を浮かび上がらせたり、「ヒーロー」のテーマに沿って観客を楽しませてくれる。絵もダンスも笑いも二流だけど、もの珍しさも手伝ってあっという間に1時間半がすぎてしまった。こういうアートをエンターテインメントとして見せるショーは、70~80年代にニューヨークのザ・キッチンあたりでもやっていたかもしれないが、忘れたころに韓国から飛び出してきたのが驚きだ。でも比較するのもなんだが、ローリー・アンダーソンのショーなんかに比べれば思想性も批評性もなく、あくまでエンターテインメントに徹している点がいっそ潔いというか。そういえば『誰でもピカソ』をグレードアップさせればこんな感じかも。

2013/02/17(日)(村田真)

加賀美健「SPICY!!!」

会期:2013/01/25~2013/03/03

ナディッフギャラリー[東京都]

作家も作品も知らずに行ったら、ウンコチンコ系の作品がところ狭しとひしめいている。これは想定外。なんというか、ウンコやチンコに異常な興味を抱く肛門期をそのまま大人まで引きずってしまったような作品、といったらいいか。十字架にパンティをはかせたり、ぬいぐるみの動物のお尻から巨大ウンコが出ていたり、ブラピやディカプリオの顔写真つきビニール袋にウンコ(模型)を入れたり、躊躇とか深慮とかまるで感じられず、嬉々としてつくっている様子なのだ。とはいえ、作品間の距離が一定に保たれていたり、なにをどこに配置するかもそれなりに計算した形跡がうかがえ、作家としての強い意識が感じられる。

2013/02/17(日)(村田真)

岡崎和郎/大西伸明

会期:2013/02/02~2013/03/03

MA2ギャラリー[東京都]

《HISASHI》をはじめ工芸的な仕上げの彫刻で知られる岡崎と、限りなく緻密なフェイク作品で知られる大西という異色の2人展。世代も背景も異なる作家の組み合わせだが、昨年に続き2回目だという。金属棒を握った手腕の骨のフェイク、開いた手のひら型の皿、握った手のひらの隙間を型どった透明オブジェ(握り心地がよさそうだ)など、手を巡る精妙な作品が多く、それがまたふたりを結びつけてもいるだろう「テクネー」を想起させる。手によるテクネー、テクネーによる手。

2013/02/17(日)(村田真)

京都市立芸術大学作品展(学内展)

会期:2013/02/13~2013/02/17

京都市立芸術大学[京都府]

京都市美術館と大学構内の2会場で開催される恒例の京都市立芸術大学の作品展。残念ながら時間が足りず美術館の展示はあまり見れなかったが今年も最終日に運行されていた美術館からの直通バスに乗って学内展を見に行った。各々の展示スペースも広く、美術館よりも展示の自由度が高い学内展ならではの醍醐味は、発表する学生たちだけでなく見る側にとっても期待が持てる。けれど今年は、技術面やコンセプトに注目するものはいくつもあったのが、強いインパクトのある作品や表現にあまり出会えなかった。というよりも全体的に元気が足りない印象でいまひとつもの足りない気分だった。もっとも記憶に残っているのは油画コースM1の笹岡由梨子のショートムービー。怪し気な音楽にのせて操り人形がテンポよく繰り広げる実写合成の劇がじつに滑稽なのだが、一方ふわふわとしたその動作とユーモアには頼りなく儚げな雰囲気もあり、惹き付けられる魅力があった。

2013/02/17(日)(酒井千穂)

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