2018年01月15日号
次回2月1日更新予定

artscapeレビュー

2013年03月15日号のレビュー/プレビュー

鈴木先生

会期:2013/01/12

映画「鈴木先生」を見る。こうした学園ものにおいて、学校という閉鎖された空間は、しばしば社会、あるいは世界を意味するだろう。生徒会の選挙と卒業生の立てこもり事件を軸に、物語は回転していくが、その根底には完全に制御された社会、すなわち他者が排除された安全でクリーンな空間への違和感が表明される。拙著の『過防備都市』ともかぶる興味深いテーマだ。この映画は批判するだけではなく、未来への一歩を感じさせる救いもある。『桐島、部活やめるってよ』といい、『悪の教典』といい、今年度は学園ものの傑作が続く。日本ならではの状況かもしれない。

2013/02/01(金)(五十嵐太郎)

青木恵美子「希望のささやき」

会期:2013/01/12~2013/02/03

ギャラリーフォゴットンドリームズ[東京都]

画面の大半を朱赤系の色彩で覆い、下部に円形の泡みたいなものを描く青木だが、今回は青緑系で覆われた作品も出している。もともと下部に形象が集中しているため風景を思わせるが、上方を青系で占められると画面が後退し、ますます風景画(水中風景も含めて)に近づいてしまう。画面が浮き立ってこないのだ。やっぱ赤だな、赤。ところで、下部の泡みたいなものがどれも中央よりやや右に寄っているのはなぜだろう。たんに右利きだからか、それとも視覚心理上の計算か?

2013/02/01(金)(村田真)

田口和奈+岩永忠すけ「THE CRIMSON SUN」

会期:2013/01/26~2013/03/02

シュウゴアーツ[東京都]

自分で描いた絵を写真に撮る田口と、筆触もあらわなペインティングの岩永による2人展。ずいぶん性質の異なる作品だから会場を分けてるのかと思ったら、ごちゃ混ぜに展示しているので驚いた。ごちゃ混ぜだから驚いたのではなく、ごちゃ混ぜなのにぜんぜん不自然に感じられないから驚いたのだ。経歴を見るとふたりは同年生まれで、同じ年に東京藝大の博士課程を修了している。今回は田口が岩永に呼びかけたそうだが、気心が知れてるとかそういうレベルでこんなに作品が解け合うものではないだろう。作品の見た目や手法の違い以上になにか共通するものがあるに違いない。

2013/02/01(金)(村田真)

『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』

「小さな大コレクター」として話題を呼んだ映画『ハーブ&ドロシー』の続編。前回は、狭いアパート暮らしのハーブとドロシー夫妻がコツコツと現代美術作品を集め、2千点以上に増えたのでワシントン・ナショナルギャラリーに寄贈したものの、その後もさらにコレクションが増え続けていくというおとぎ話のようなドキュメンタリーだった。今回は、そのナショナルギャラリーが1館では全作品を受け入れられず、全米50州の美術館に50点ずつ分配するという「50×50」プロジェクトを実施し、夫妻が各美術館を訪れるというストーリー。前回は、いかにもアウトサイダー的な風貌と嗜好をもつ夫妻の突出したキャラと、高尚で計算高いアートワールドとの対比や、ミニマル・コンセプチュアルに偏ったおびただしい量のコレクションと、カメやネコも飼ってる狭いアパートとのギャップを映し出すだけで、つまり素材の新奇さだけで十分に楽しめたが、今回はそこに「50×50」という立体的な骨組みが与えられたため、映画自体にも構造的に奥行きが出てきて見ごたえがあった。この続編の編集中ハーブが亡くなったため、急遽方向転換してつくり直し、図らずも完結編となってしまったという。ところで、映画のなかの話だが、夫妻がナショナルギャラリーに寄贈した理由のひとつは、コレクションが分散する心配がないからだったはず。それを50州に分散させてしまうというのはいかがなものか。そもそも彼らのコレクションの約8割は紙の作品(ドローイングや水彩や版画など)で、油絵や立体は2割にすぎず、それも小品に限られる。これらにどれほどの価値があるかは知らないが、少なくとも「ミュージアムピース」と呼べないだろう。しかもそのうち価値の高いものはナショナルギャラリーが取っといて、残りを50州に分けた(厄介払いした?)と陰口をたたく人もいる。まあそこまでは詮索すまい。3月30日より新宿ピカデリー東京都写真美術館などでロードショー。

公式ウェブサイト=http://www.herbanddorothy.com/jp/



ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの 予告編

2013/02/01(金)(村田真)

ccc展覧会企画公募 NCC2013第5回入賞展覧会企画

会期:2013/01/15~2013/02/16

静岡市クリエーター支援センター 2Fギャラリー・3F[静岡県]

静岡のCCCにて、公募の審査を担当したクリエイターズコンペの展覧会を見た。金箔を使う絵画の對馬有輝子「『授業風景』─野の花と青空と子供たち─」は、会場がリノベーションされた小学校だったおかげで、子ども用の机と椅子を並べる作品と空間の雰囲気が合い、独特な場を生みだしていた。一方、現代アートの長谷部勇人の《Clock base-n》は、いずれも回転する円である観覧車と時計を重ね合わせる、メカニカルな装置と映像によるインスタレーションである。ともに予想以上の出来だった。

2013/02/02(土)(五十嵐太郎)

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