2018年01月15日号
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artscapeレビュー

2013年05月15日号のレビュー/プレビュー

クラウドアトラス

会期:2013/03/15

『クラウドアトラス』を見る。複数の物語を織り交ぜると言えば、『インセプション』が多重の入れ子構造であるのに対し、これは6つの異なる時空が連鎖しながら、同時存在するようにも見える感じだった。ただ、『インセプション』が過去の記憶の深層に向かっていく一方、『クラウドアトラス』は、人々が輪廻転生を繰り返しつつ、自由な未来に向けて、少しずつ世界をよりよいものに変えていこうとするメッセージを込めている。

2013/04/01(月)(五十嵐太郎)

ジャンゴ 繋がれざる者

会期:2013/03/01

タランティーノ監督の『ジャンゴ』は、『イングロリアス・バスターズ』が映画を使ってナチスをやっつけたのに続き、アメリカの奴隷制度に立ち向かう作品。既存ジャンルの遺産を最大限に利用しながら、引用とオマージュにとどまることなく、かつて成立することがなかった唯一無二の映画に仕上がっている。ある意味、物語の展開は無茶苦茶なんだが、それを突っ込むのが野暮だと思う勢いをもった映画批判になっているのが痛快だ。

2013/04/01(月)(五十嵐太郎)

型絵染 三代澤本寿 展「民藝とともに──暮らしによりそう色と形」

会期:2013/01/24~2013/04/02

神戸ファッション美術館[兵庫県]

長野県松本市生まれの染織工芸家・三代澤本寿(1909-2002)。型絵染の人間国宝として知られる芹沢銈介との出会いにより型絵染の道を志し、民藝思想にふれて柳宗悦とも親交を深め、松本の民藝運動を牽引した人でもあるのだが、3年前に松本市美術館でその展覧会が開催されるまでは地元でも知る人ぞ知る存在だったという。関西では初めてまとまった数の三代澤の仕事が紹介される機会となった今展には、屏風やパネル、帯地や着物といった、初期から晩年までの作品と、取材を兼ねた海外旅行で三代澤が収集した染織品などが展示された。作品のモチーフは、日本の伝統的な文様や抽象パターン、動植物、風物などをモチーフにした可愛らしいものまでさまざま。そのなかでもキリスト教の成句(文字)を文様的に配した《モサラベ》というシリーズや、《カンタータ》《パラードA》など音楽をタイトルにした抽象的なイメージの作品群はとくに魅力的だった。ダイナミックでリズミカルな画面の構図、絵柄、色彩など、それらどれもがこの作家独自のセンスと技術力を感じさせる。クラシック音楽にも造詣が深く、歴史好きで、頻繁に出かけた旅行では旅先の歴史的背景を調べるのも楽しみだったという三代澤。表現力豊かな作品から彼の体感したものを追体験するような心地よい興奮を覚え、これまで三代澤についてあまり知識がなかった私もすっかりファンになってしまった。

2013/04/02(火)(酒井千穂)

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物質と彫刻──近代のアポリアと形見なるもの

会期:2013/04/02~2013/04/21

東京藝術大学大学美術館陳列館[東京都]

藝大彫刻科主催の企画展。1997年に始まり今回8回目というから、約2年にいちど開いてきたわけだ。まず入って右の部屋には、角田優の放射線を感知して視覚化する装置が置いてある。この装置自体を彫刻と見るか、宙を行き交う放射線を彫刻行為ととらえるか、視覚化された放射線を彫刻とするか。なーんて考えながらしばらく見ていたが、なんの変化もなかったので放射線は検出されなかったようだ。故障してたのかも。福島にもっていけばもう少し活躍するかもしれない。宮原嵩広の《リキッド・ストーン》は、表面に透明樹脂を塗った4枚の正方形の大理石を床に並べたもの。台座のようでもあるが、床に置いた額縁絵画にも見えなくはない。そのうちの2枚は中央に穴が開き、乳白色のシリコンが満ちたり引いたりしている。これはちょっと揺さぶられるなあ。森靖による木彫のサンタクロースみたいなおっさん像もすごい。よく見るとヒゲの下から巨大なペニスが生え、突き上げた両親指は乳房になり、脚は4本も生えている(これは安定を保つため?)。こういう陽気でキッチュでグロテスクな彫刻ってあまり見ないなあ。オイルの匂いが漂う2階には袴田京太朗による「複製」シリーズが並んでいる。これはバットや布袋さまの置物をいくつかに分割し、欠けた部分に色鮮やかなアクリル板を補って再生したもの。つまりクローンのように同じようなもの(材質は違う)を増やしてるわけだ。遺伝子再生にまで思いが飛ぶ。いちばん奥の部屋には匂いの発生源である原口典之のオイルプールがドーンと置かれている。表面が一分の狂いもなく水平を保ち、圧倒的迫力。もう何度も見ているのにあらためて感心してしまう。同展はタイトルともどもこの作品のために企画されたといっても過言ではないだろう。

2013/04/03(水)(村田真)

トーキョー・ストーリー2013 第1章「今、此処」

会期:2013/03/09~2013/04/29

トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]

2012年度のTWSのクリエーター・イン・レジデンスに参加したオル太、二藤建人、潘逸舟という3組のアーティストによる成果発表展。オル太は相変わらずプリミティヴでダイナミックなパワーにあふれている。《大地の消化不良》というインスタレーションは、「歯並び」で囲った領域に塩を敷きつめ、水を噴き出す便器や、真っ二つに切った牛(ハリボテ)や、フジツボにおおわれた「貝爺」などを配したもの。便器はデュシャン、真っ二つの牛はデミアン・ハーストを連想させる。第1次産業的労働から一歩アートに近づいたけど、妙に洗練されることもなくワケのわからないパワーが健在でなによりだ。潘は2本の映像作品。ひとつは、岩山のような大きな石がわずかに動くという映像で、これは自分と同じ重さの石を身体の上にのせて撮ったという。もうひとつはその石を船にのせて撮ったもので、これは石は動かず、背景の海がゆっくり動く。思索的なモノクローム映像だが、こういうのは70年代にさんざん見た。二藤は直径5メートルほどの巨大な器を出品。その内側には手足の凸型が浮き上がってちょっとグロだが、凸型ということは砂か泥の山に手足を突っ込んでその上から石膏をかぶせて型どったものだろう。こいつもオル太に劣らずダイナミックだが、二藤のほうがより彫刻原理に肉薄している点でアート濃度が高い。


"大地の消化不良" オル太 [at TWS本郷]

2013/04/03(水)(村田真)

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