artscapeレビュー

2013年06月15日号のレビュー/プレビュー

あいちトリエンナーレ2013 現代美術作品第1号「昭和時代階段」

会期:2013/04/27~2013/05/10

伏見地下街とその地上出入口(名古屋市中区内)[愛知県]

あいちトリエンナーレ2013の最初のプロジェクト、打開連合設計事務所による伏見地下街のリノベーションを研究室で手伝う。東北大の五十嵐研からは11名が参加した。彼らが得意とするブループリントのシリーズで使う手法、すなわち青く塗り、稜線に沿って白いラインを引いていく作品である。またこの地下街が誕生した昭和時代をテーマに掲げている。制作途中からテレビや新聞など、各種のメディアが紹介していたように、実際、フォトジェニックな作品であり、見る角度によって透視図法が像を結び、実空間に異空間が重なるため、さらに視点を移動しながら見ると面白い。また夜にはキュレーターや長者町のスタッフらが、制作ボランティアに食事をふるまい、苦労をねぎらう。リノベーション・プロジェクトは、ほぼ完成し、すでに見ることができる状態になっているが、あいちトリエンナーレが始まる8月まで隠される秘密の部屋もある。また、オープニングの直前絵が少し追加されるという。なお、鑑賞は夜に青く光る出入口の状態もおすすめである。

2013/05/03(金)(五十嵐太郎)

トーキョー・ストーリー2013 第2章「アーティスト」

会期:2013/05/02~2013/07/07

トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]

1年ぶりに再開したTWS渋谷では、先月見たTWS本郷に続き、2013年度のクリエーター・イン・レジデンスの成果を問うオープン・スタジオが開かれている。アーティストは足利広、遠藤一郎、栗林隆の3人で、彼らは同時期にレジデンスを体験したことで意気投合し、「アーティストとしての生き方」「アーティスト自身」を提示するところからプロジェクトを始動したという。それはいいんだけど、作品は各展示室に置かれた鉄の檻(客も入檻できる!)と、メインルームで3面スクリーンに映し出される林や祠や鳥居の映像くらいしか見当たらない。これだけ? ショボすぎないか? 本郷の「第1章」では各自精一杯つくっていて見ごたえあったのに、これはないだろ。と思ったら、会期中「作品」であるアーティストが会場を変容させていくと書いてあった。そうか、お楽しみはこれからなのね。どうやら来るのが早すぎたようだ。

2013/05/04(土)(村田真)

フィギュア誕生30周年「海洋堂フィギュアワールド」

会期:2013/05/02~2013/05/07

東急東横店西館8階催物場[東京都]

東急東横線の渋谷駅が廃止されたと思ったら、東急東横店の入口も閉鎖されてるではないか。50年前から変わらぬ渋谷駅を知ってる者としては寂しい限り……と思ったら、閉館したのは東館だけで、西館はまだ現役ピンピン。ってほどでもないけど、海洋堂のイベントをやっていたので行ってみた。海洋堂のフィギュアで思い出すのが、レオナルドとミケランジェロが繰り広げたといわれる「絵画と彫刻、どっちがエライ?」論争だ。ミケランジェロが「絵画はイリュージョンにすぎないけど、彫刻は実在だぜ」とケンカ吹っかけたのに対し、レオナルドは「彫刻は奥行きや状況描写ができないけど、絵画ならできるもん」と答えたという。本当にあったかどうかもわからない論争だが、海洋堂のフィギュアはレオナルドの反論に対する反証になっているように思えるのだ。まずフィギュアは、2次元でしか表わせなかったキャラクターの画像を、かなり強引に3次元に起こしてみせた。いってみれば多焦点的なピカソの絵を立体化したようなもんだ。さらに海洋堂は踏み込んで、火や水といった流動物の固定化や、遠近感をともなう背景描写、動きや変化などの時間表現までちっちゃなフィギュアに採り込んでしまう。レオナルドをして彫刻には不可能だといわしめた状況描写を、海洋堂はいともたやすく(でもないだろうけど)フィギュアで実現してみせたのだ。ぼくがフィギュアに関心をもつのはその1点のみだ。

2013/05/04(土)(村田真)

SICF 14

会期:2013/05/03~2013/05/06

スパイラルホール[東京都]

各50人×2日間=計100人のクリエーターが狭いブースで繰り広げるスパイラル・インディペンデント・クリエーターズ・フェスティバル(SICF)の前半。アーティストではなくクリエーターを対象としているせいか、チャラチャラした工芸やイラストが多くていたたまれず、帰ろうとしたら目に飛び込んできたのが橋村至星の絵。正方形のキャンバスにそれぞれパック入りの肉、野菜、魚、果物などを描いて並べ、チープな蛍光灯をつけてブース全体をお店屋さんに仕立てている。おやじ好みな作品。これも村田真賞だ!!

2013/05/04(土)(村田真)

愛知産業大学 言語・情報共育センター

[愛知県]

studio velocityが手がけた愛知産業大学 言語・情報共育センターを見学する。薄くて白い天井をはりめぐらせ、スチレンボードの模型がそのまま建築になったようだ。大学の校舎に囲まれた立地環境は、彼が所属していた石上純也のKAIT工房と似ているが、現地を訪れると、地面が大きく傾斜し、それに合わせて屋根も一定に傾き、それが大きな違いをもたらしている。晴れの日には、室内と中庭が一体化し、気持ちがいい場を提供していた。

2013/05/04(土)(五十嵐太郎)

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