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2013年06月15日号のレビュー/プレビュー

あいちトリエンナーレ2013 宮本佳明「N-shadow(仮称)」制作

愛知芸術文化センター[愛知県]

福島第一原発のヴォリュームを愛知芸術文化センターに仮想的に転送し(実は等スケールですっぽり入る)、空間の内部に重ね合わせる宮本佳明のプロジェクトがすでに動きだしており、少しだけ見ることができた。建物の各階のあちこちに、原発の壁や炉心を示すラインが散りばめられ、頭の中で統合すると、普段は近づくことも、触ることもできない福島原発の大きさがイメージできる。またこれは都心に原発を置くことも想像させるだろう。

2013/05/06(月)(五十嵐太郎)

あいちトリエンナーレ2013 ダン・ペルジョヴスキ作品制作

愛知芸術文化センター 11F 展開回廊[愛知県]

同じくトリエンナーレの出展作家としては、愛知芸術文化センターの11階、L字の展望回廊では、ルーマニアの作家、ダン・ペルジョヴスキがガラスにドローイングを描き、作品が完成した。政治や社会的なメッセージを含む、わざわざ翻訳する必要がないシンプルな言葉遊びや絵が、名古屋の街の風景と混ざりあう。これまでに描いた絵もあるが、日本版の絵も幾つか。例えば、「FUKUSHIMA」→「FUKU・SHAME」などである。

2013/05/06(月)(五十嵐太郎)

ドラマチック大陸─風景画でたどるアメリカ

会期:2013/01/12~2013/05/06

名古屋ボストン美術館[愛知県]

名古屋ボストン美術館の「ドラマチック大陸」展を見る。新大陸のアメリカで発見された、ヨーロッパにはない雄大な「自然」を描く風景画の歴史をたどるもの。例えば、ナイアガラの滝やグランド・キャニオンなどである。トーマス・コールらの絵画や写真を通じて、いかにアメリカ的なものが発見されたのかがわかる。もっとも、アメリカ的な題材である一方、時代ゆえに、その表現にはヨーロッパの近代絵画の影響も認めることができる。

2013/05/07(火)(五十嵐太郎)

特別展覧会「狩野山楽・山雪」

会期:2013/03/30~2013/05/12

京都国立博物館[京都府]

桃山時代から江戸時代初期の狩野派の絵師、狩野山楽・山雪の大回顧展が京都国立博物館で開催された。二人は狩野永徳の画系を継ぐ「江戸狩野」に対し、京の地にとどまり永徳の弟子筋によって展開された「京狩野」と呼ばれる。今展はその京狩野草創期に焦点をあて、初代山楽、二代山雪の生涯と画業を紹介するというもので、海外から里帰りした山楽の4件の作品のうち、初里帰りとなる《群仙図襖》(ミネアポリス美術館)と《老梅図襖》(メトロポリタン美術館)も見どころのひとつとなっていた。それらはもともと表裏一体だった襖絵。今回は50年ぶりの“再会”で、元の状態に復した展示となった。重要文化財13件、新発見9件、初公開の6件を含め、80件あまりが公開された大規模なものだったので混雑も予想していたのだが、意外にもゆっくりと見ることができ嬉しい。会場は山楽から山雪へと時代を移しながら二人の作品を辿っていくという構成。展示は、豊臣残党狩りの標的になった山楽が、類い稀なその画才と二代将軍秀忠や九条家に助けられて一命をとりとめ生き延びたという解説も興味深く、画風の変遷にも注意して見られるようになっていたのがとても良かった。山雪は《長恨歌図巻》や《雪汀水禽図屏風》など、その作品群から、細部まで徹底的にこだわる姿勢や、妥協を許さない気質も伝わってくる。ところがほんわかとした雰囲気の《猿猴図》など、意外にも素朴でとても可愛らしい作品も描いているからそれもまた魅力的だ。それぞれのキャラクターと時代の流れがよくわかる展示構成だったのが素晴らしかった。見応え十分だったのはもちろんだが、このような規模で見られる機会も貴重だっただろう。良いものを見ることができて大満足。

2013/05/10(金)(酒井千穂)

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JIA東北建築家フォーラム2013 基調講演「アートミーツアーキテクチャ」

会期:2013/05/10

せんだいメディアテーク 1F オープンスクエア[宮城県]

せんだいメディアテークにて、高橋匡太の講演と彼を囲むシンポジウムを行なう。これまで丹下健三、菊竹清訓、安藤忠雄、高松伸らのすでに存在する建築に対し、光のアートワークを試みたが、最近は西沢立衛の十和田市現代美術館やアトリエ・ワンの建築における常設作品、平田晃久らのインスタレーションなど、これからつくるプロジェクトに関わり、まだ存在しない空間について、建築家と直接やりとりしながらのコラボレーションに移行している。やはり、実験の積み重ねと現場の試行錯誤が重要なようだ。また光が多すぎる場所では、減らすことも作品になるというのが印象的だった。あいちトリエンナーレ2013では、多くの人を巻き込みながら、都市空間を活用した作品を構想中とのこと。

2013/05/10(金)(五十嵐太郎)

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