artscapeレビュー

2013年09月15日号のレビュー/プレビュー

ままごと「日本の大人」

会期:2013/08/10~2013/08/15

愛知県芸術劇場 小ホール[愛知県]

あいちトリエンナーレの委嘱作品、ままごとの「日本の大人」を観劇した。小6のとき、小学26年生と出会った主人公が32歳を迎え、子どもと大人、過去と現在が交錯する物語である。柴幸男らしいリズミカルで心地よいテンポと、時空が切り替わるときのシンコペーションするような演出がよかった。そして笑いがある。「日本の大人」は、大人と子どもが一緒に見ることを想定しているが、それを大成功させた「モーレツ! オトナ帝国の逆襲」も両世代のツボを配しながら、大人になることの拒否をテーマとする。小6という設定は、マッカーサーが日本人の精神年齢は12歳と言ったことを想起させる。小学26年生のくまのさん=日本なのか。あいちトリエンナーレでは異ジャンルが共振するが、日本/女性とアメリカ/男性のオリエンタリズムからアイデンティティの揺らぎを描く「蝶々夫人」と「ゼロアワー」のように、「日本の大人」は映像プログラムの「playback」と比較できるだろう。この映画も突然大人の姿のまま高校時代に戻り、時空が交錯するからだ。

2013/08/12(月)(五十嵐太郎)

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平川恒太「Trinitite──けいしょうされぬ記憶と形」

会期:2013/08/01~2013/08/15

バンビナートギャラリー[東京都]

宮本三郎の作戦記録画や核実験のキノコ雲の写真を黒く塗り替えたような絵画と、戦中に制作されたアニメのキャラクターを拡大した作品の展示。タイトルの「トリニタイト」とは核爆発によって生成される人工鉱物の名称だが、黒い画面に付着したラメがキラキラ光るせいか、まさにイメージが結晶化したような印象だ。以前、長崎出身の彫刻家・森淳一もキリスト教の「トリニティ(三位一体)」にかけて同名の聖母子像をつくっていたが、こうして新世代に戦争や核問題を継承・形象・警鐘していってほしい。

2013/08/14(水)(村田真)

田口順一『音楽』

発行所:冬青社

発行日:2013年7月10日

高橋国博が主宰して、東京・中野でギャラリーと出版の活動を続ける冬青社からは、時折ユニークな写真集が刊行される。田口順一の『音楽』と題する写真集もそんな一冊だ。
田口は1931年、新潟県生まれだから、東松照明や奈良原一高など、VIVOの写真家たちと同世代にあたる。日本大学芸術学部音楽学科の作曲コースを卒業後、ずっと千葉県の高等学校で教鞭をとりながら現代音楽の作曲家として活動してきた。千葉県立幕張西高等学校の校長を退任後は、武蔵野音楽大学大学院の教授も務めている。その彼は、船橋写真連盟に属して写真家としても作品を発表してきた。「50年間音楽と関わり作曲活動を続けて来ましたが、その活動の足跡と共に、『今の私のあり様』をまとめて」みたのが、今回の写真集ということになる。
ページを開くと、五線譜、ト音記号、自作の曲の楽譜のコピーなどの間に、おそらく身近な場面で撮影したとおぼしき写真が並ぶ。壁、地面、コンクリートの塀などをクローズアップで撮影したそれらの写真群は、周囲の環境からは切り離されて、色彩と物質感のみの表層的なイメージとして抽象化されている。それらのたたずまいは、たしかに視覚的な「音楽」としか言いようのないものであり、田口がそこから確実に何かを聴きとっていることが伝わってくる。ありそうであまりない試みであり、実際に曲を流して、スライドショーのような形で見せても面白いかもしれないと思った。

2013/08/15(木)(飯沢耕太郎)

三陸復興国立公園指定記念「種差─よみがえれ 浜の記憶」

会期:2013/07/06~2013/09/01

青森県立美術館[青森県]

青森県立美術館の企画展「よみがえれ浜の記憶 種差」を見る。三陸復興国立公園に指定された八戸の種差海岸について、縄文から江戸、近代の歴史資料をみせる博物館的な展示と、リチャード・ロング、笹岡啓子、東山魁夷による美術の展示を組み合わせて紹介する興味深い試み。特に、空からまちを描く、吉田初三郎の鳥瞰図の数々が面白かった。

2013/08/16(金)(五十嵐太郎)

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青森EARTH2013「すばらしい新世界─再魔術化するユートピア」

青森県立美術館[青森県]

会期:[第1部]2013/6/15~9/1[第2部]2013/7/28~8/25
2016年の国際芸術祭を目指し、二度目の青森EARTH2013「すばらしい新世界ー再魔術化するユートピア」展も同時開催していた。ここでも、三内丸山遺跡の出土品と現代アートが併置される実験的な展示を楽しめる。例えば、縄文の炉と、風間サチコの描く原子炉。あるいは、ストーンサークルのような森万里子の作品。個人的には、これまであまり表に出なかった青森県立美術館の隠れた空間を使う、柳井信乃の展示場所が大発見だった。

2013/08/16(金)(五十嵐太郎)

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