2013年11月15日号:号で見る|美術館・アート情報 artscape

2018年08月01日号
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artscapeレビュー

2013年11月15日号のレビュー/プレビュー

2013 GOOD DESIGN AWARD グッドデザイン賞 受賞「S-meme」

せんだいスクール・オブ・デザインのメディア軸で制作している前衛装幀の文化批評誌「S-meme」が、グッドデザイン賞を受賞した。以下が講評文である。「極めて質の高い、かつ独創的な装丁デザインで、Webや電子書籍の時代にあえて紙に徹底的にこだわっている。紙とのインタラクションの新規性という観点からも評価できる」(http://bit.ly/GzDZCn)。紙しかない時代には当たり前だと思われていたことも、ネットメディアの時代になったからこそ、逆説的にその特徴がより強く感じられるようになった。「S-meme」は、そうした意識を反映した雑誌である。

2011/10/02(水)(五十嵐太郎)

郷司理恵「SENSO」

会期:2013/09/30~2013/10/08

ポスターハリスギャラリー[東京都]

耽美的なエロティック・アートを得意としているポスターハリスギャラリーにふさわしい展示と言えそうだ。日本での初個展を開催した郷司理恵の写真の主なテーマは花々や果実だが、多種多様なアクセサリーに彩られ、時には羽根や生肉等で象嵌されたその作品世界は一筋縄ではいかない。深紅の花弁は、内蔵やある種の器官のように艶かしくうごめき、果肉ならぬ「花肉」と言えそうな趣を呈している。郷司が本格的に写真作家として活動し始めたのは2003年頃だというから、まだキャリアは長いとは言えない。だが、すでに独特の芳香を放つ領域に踏み込みつつあるのではないかと思う。
今回の展示に並んでいる作品の大部分は小品だが、近作だという大判サイズの作品に、これまでとは違った可能性を感じた。花そのものの官能美に収束していくような、やや求心的な作品群とは異なる、より広がりのある空間へと向かう志向があるように思えたからだ。ゴージャスな色彩と奇妙なフォルムを備えた花々を組み合わせて、オペラの舞台のような雰囲気を醸し出す舞台装置をつくり上げることができるのではないか。
今後さらに試みていってほしいのは、物語(できれば自作の)の要素をより積極的に取り入れた連作である。だが、すでにベルリンでは「卒塔婆小町」に題材をとった作品を発表しているとのことで、心配しなくてもそちらの方向に進んでいくのではないだろうか。

2013/10/02(水)(飯沢耕太郎)

野村誠 個展「オルガニック・ベジタブル」

会期:2013/10/01~2013/10/06

アートスペース虹[京都府]

鍵盤ハーモニカの奏者でありピアニストでもある音楽家の野村誠。幅広い活動を展開しているがギャラリーで個展を開催するのは今回が初めてだそう。今展では野菜を育てるなど、野村が世話をしている畑(の作物)と音楽、美術をつなぐことをテーマに作品展示が行なわれた。同ギャラリーのオーナー宅に40年間眠っていたという古い足踏みオルガンが中心に置かれた会場には、ドローイング、マケットで叩く打楽器としての瓦、五線譜を刺繍した数十メートルの布に植物の種子などを音符として配置した「楽譜」の作品などがインスタレーションされていた。会期中、野村はほぼ毎日在廊。私が訪れたときも和やかな雰囲気のなかでオルガンの即興演奏が行なわれていたのだが、ここでは一緒に聴いていた人たちが野村の演奏にあわせ、側にあった瓦を叩いてセッションを始めるという場面にも遭遇。楽しくて私もついマケットを手に取って参加してしまった。新たな音楽や交流が生じることの幸福感もさることながら、インスピレーションの連鎖反応を誘発する展示空間が新鮮で愉快だった展覧会。


会場風景

2013/10/03(土)(酒井千穂)

鶴井かな子 展

会期:2013/10/01~2013/10/06

ギャラリーモーニング[京都府]

京都精華大学大学院に在籍する鶴井かな子。会場にはまさに人間模様というドラマがぎっしりと織り込まれている絵画が並んでいた。作品は庶民的な日常感にあふれたモチーフばかりなのだが、どの画面にもたくさんの人物が描かれていて、そのなかには動作や表情が狂気的で不気味だったり、滑稽だったりするものなどが潜んでいた。見入ってしまう強烈なインパクトが先に立つような作品だが、繊細で鋭い観察眼を垣間みるユーモアにも才気を感じる。今後の発表も楽しみだ。

2013/10/03(土)(酒井千穂)

印象派を超えて──点描の画家たち

会期:2013/10/04~2013/12/23

国立新美術館[東京都]

タイトルが「印象派を超えて」と「点描の画家たち」の2段がまえのうえ、「クレラー=ミュラー美術館所蔵作品を中心に」「ゴッホ、スーラからモンドリアンまで」という長ったらしいサブタイトルもつく。それだけ見どころが多いともいえるが、焦点が絞りきれていないとも考えられる。展示は、モネやシスレーらの感覚的な点描に始まり、スーラ、シニャックらが確立した科学的点描(分割主義と呼ぶ)、その影響を受けたゴッホやゴーギャン、さらにベルギーとオランダの分割主義を経て、モンドリアンの抽象にいたる流れをたどるもの。これを見れば、20世紀美術を決定づけた抽象の源流のひとつが点描にあると受け止めることもできるだろう。その意味ではよく練られた展覧会といえるが、しかし見せたいのは個々の画家や作品ではなくモダンアートの流れそのものなので、見せ場がモネ、スーラ、ゴッホ、モンドリアンなどいくつかに分かれてしまった。タイトルがひとつに絞りきれないのもうなずける。

2013/10/03(木)(村田真)

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