artscapeレビュー

2013年12月01日号のレビュー/プレビュー

プレビュー:MIO PHOTO OSAKA

会期:2013/12/04~2013/12/08

天王寺ミオ本館12階ミオホール、11階ライトガーデン[大阪府]

新たな才能の発掘・発信を目的に、1998年に「ミオ写真奨励賞」として始まった同展。2011年までは公募展だったが、昨年から内容を一新。翌年の個展開催の権利獲得を目的とした公開ポートフォリオレビューと、新進作家の個展を中心とした2本立てのイベントとなった。今回は、東京都写真美術館の笠原美智子と、大阪新美術館建設準備室の菅谷富夫を招いてレビューを開催。個展は、昨年のレビューで選ばれた、谷口正彦、安成珍、横山大介が登場する。

2013/11/20(水)(小吹隆文)

プレビュー:iTohen開設10周年記念作品展

会期:2013/12/11~2013/12/28

iTohen[大阪府]

大阪市北区のiTohenは、2003年12月に開業したスペースで、書店、ギャラリー、デザインオフィスが融合した形態となっている。扱うジャンルは多様だが、ファインアートとコマーシャルアートの中間領域を積極的に取り上げるのが特徴だ。関西では2000年代の初頭に同様のスペースが数多く誕生したが、月日とともに淘汰された。iTohenはアーティストと観客双方から信任を得た幸福な一例と言える。彼らが、開設10周年を記念した展覧会を開催する。内容は、過去に展覧会を行なった作家たちの小品展だ。画廊の軌跡を振り返りつつ、ギャラリーというシステムの今後を考える場としたい。

2013/11/20(水)(小吹隆文)

室伏鴻『リトルネロ──外の人、他のもの』(室伏鴻プロデュース「〈外〉の千夜一夜」

会期:2013/11/23

横浜赤レンガ倉庫1号館3階[神奈川県]

室伏鴻本人のプロデュースによるイベントでのメイン公演。僕も大谷能生さんとトークのイベントで参加したので、本イベントの〈外〉の人とは言えないのだけれど、あくまで批評の人間としてこの作品について考えたい。1時間弱の舞台。室伏の身体は、彼らしい身振りを絶えず繰り出した。突拍子なく不意に背中から倒れたり、首で支える逆立ちの状態で脚と腕を上げて「万歳……」を連呼したり、ぽろぽろと口から言葉をこぼしたり、舞台の脇で服を脱ぐと素肌を曝して壁にぶつかったり、四つん這いになって獣のごとく徘徊し口で真鍮板をくわえたり。すべてが室伏印の振る舞いだった。前半には、アップテンポの曲にノリノリになるなんてところもあって、新味な場面もなかったわけではない。だけれども、なんだか、空で対象を掴みそこねたように、どの動作もどこか頼りない。力がみなぎっていないというか、「ため」に乏しく、力の入れどころが見出せないまま時間が過ぎてしまったかのようだ(意図的なもの?とも想像させられたが、そう断定することもできなかった)。もちろん、それでも、ありふれた舞踏の、「自己嘲弄的」とでも非難したくなる弛んだ舞台とは比べものにならない、テンションの高さは保持している。けれども、考えていることから動作へと移る際の連動が早すぎて、気づくと予期せぬ事態が目の前で起こっていて、めまいを起こしてしまうといった感覚、室伏の舞台でしかえられないあの感覚が見ているぼくの内に訪れることはなかった。早さの欠如は、もっと際立つと、大野一雄がそうだったように、ダンサーが心に抱く踊りのイメージと実際の踊りとのあいだのズレが大きくなって、それはまた新たな踊りのニュアンスを生むのかも知れない。いまの室伏の肉体はその境地に立つにはまだ若い。それでも、やはり終幕でぼくは感動していた。たんなる「踊りの上演」ではなかった。獣になって四つん這いで口だけで真鍮板をくわえ、床に敷くと体をそこに沿わせたり、ユリの花を食いちぎって、客席のほうに放り投げたりといったラストは、「鎮魂」なんて言葉が頭に浮かんでしまう時間だった。ライオンになってしまった自分が人間だったころの微かな記憶にせき立てられて思わず行なってしまった儀式。そんな連想を抱かされてしまうほどの迫真性は、室伏にしか達成できないことであるのは間違いない。

2013/11/23(土)(木村覚)

プレビュー:チェルフィッチュ『地面と床』

会期:2013/12/14~2013/12/23

KAAT神奈川芸術劇場[神奈川県]

チェルフィッチュの『地面と床』が今月のレコメンド作品です。サンガツが音楽を担当するのみならず、「音楽劇」と銘打って音楽と劇との対等な関係を模索するということが、岡田利規本人の言葉として語られています。このあたりのアプローチは、かねてから岡田が試みてきたことの延長上にあるものとも思えるのだけれど、今回ではどんな表現で新たな指針を示してくれるのか、楽しみだ。いや、そういった穏当な期待だけではまずいだろう。どうも、これまでずっとチェルフィッチュを牽引してきた俳優・山縣太一が今回を最後に劇団を離れるようなのだ。詳細は不明だが、山縣本人のFacebookでのコメントを見ると、劇団やプロダクション側とうまくいっていないなどの話が綴られている(部外者が口を出すことではまったくないのだけれど、彼が訴えている役者の地位向上については、舞台関係者は真剣にその改善の可能性について考える必要があるだろう。なんといってもこれだけの成功を収めているチェルフィッチュの役者が訴えていることなのだから)。山縣のパフォーマンス=チェルフィッチュと思う部分もあったので、このことが事実ならばとても残念なことだし、山縣の出演するチェルフィッチュを見るひょっとしたら最後の機会となる可能性があるので、その意味でも、見逃すことはできない。

2013/11/29(金)(木村覚)

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