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2014年02月15日号のレビュー/プレビュー

見ること・描くこと──油画技法材料研究室とその周縁の作家たち

会期:2014/01/06~2014/01/19

東京藝術大学大学美術館+陳列館+大学会館[東京都]

佐藤一郎は画家であると同時に、いや多分それ以上に研究者であり教育者であった。その成果を発表するのがこれ。佐藤が指導に当たった1976年からの油画技法材料研究室出身者の有志約150人の近作・新作に、在学生や歴代教員らを加えた200人近い作品が並ぶ。いわゆる具象絵画が中心で、さすが技法材料だけあってうまいなあと感心するが、ちゃんと抽象、立体、写真、CG、映像、絵本の原画などもある。また抗議が来そうな「食用人造少女・美味ちゃん」を出した会田誠、0.04秒で一周する歯車から22兆8800億年で一周する歯車まで37個の歯車を連動させた岡崎泰弘、旅先のお土産やペナントを手づくりして並べた小山真徳、モノクロ画面だがよく見るとカッコいい筆跡が残ってる伊勢周平、「受胎告知」の祭壇画にアニメのキャラと津波と原発事故を正方形の画面に収めた森洋史などが目を惹く。

2014/01/09(木)(村田真)

ミヒャエル・ボレマンス:アドバンテージ

会期:2014/01/11~2014/03/30

原美術館[東京都]

ベルギーのゲントを拠点とするアーティスト。2年前にゲント市内で開かれた「トラック展」には彫刻を出していたが、90年代なかばまでは写真を使っていたという。でもボレマンスといえばベラスケス調のサラッとした筆触が魅力の絵画でしょう。絵は独学で学んだそうだが、それにしては実に達者。透明の仮面をつけた顔などの描写はかなり高度な技術を要するはずなのに、こともなげに描いている(ように見える)。ゲント出身というからつい油絵の伝統と結びつけて考えたくなるけど、それより写真をやってた経験のほうが大きいんじゃないかな。リヒターのように視線が明らかにカメラアイだもん。ともあれ人気急上昇で、需要に供給が追いつかないというのもうなずける。

2014/01/10(金)(村田真)

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「戦後日本住宅展」打合せ

埼玉県立近代美術館にて、1950年代から70年代にフォーカスをあてる戦後日本住宅展の模型制作に協力してもらう研究室と打ち合せを行なう。その後、展示予定の原図を幾つか拝見する。原広司の自邸のディテールを含む大量の図面、原寸でも読めないくらい文字が小さい増沢洵の図面、伊東豊雄の中野本町の家など、手描きの図面の美しさに、みな見入る。なお、7月にスタートし、四館を巡回する同展は、丹下健三から安藤忠雄まで、16の珠玉の住宅を取り上げ、それらの原図面、写真、映像、模型などを展示する。

2014/01/11(土)(五十嵐太郎)

野口琢郎 展「箔画」

会期:2013/12/20~2014/01/12

Nii Fine Arts[大阪府]

漆と箔を用いた「箔画」という絵画表現。これは木製パネルに塗り重ねた漆に、金、銀、プラチナ箔で描いたイメージを接着させるという制作法で、京都の西陣で家業の箔屋を継ぐ野口がその技術や大学時代に学んだ絵画、写真表現などの知識を活かして自ら考案した。これまでも野口はその独自の技法を通して画面にさまざまなイメージを試みてきたが、今展で発表した作品では、箔の化学変化によって生まれる微妙な色合いも駆使しながら、いっそう実験的で伸びやかな表現を行なっていた。時間とともに移り変わる光の加減で、微妙に変化する箔の輝きや色彩等の表情もさることながら、自由闊達に表現されたイメージが爽快なほど美しく、彼の熱心な素材研究と表現制作へ気概を如実に示すようで清々しかった。今後の活躍もますます楽しみだ。


展示風景

2014/01/12(日)(酒井千穂)

路上から世界を変えていく 日本の新進作家 vol.12

会期:2013/12/07~2014/01/26

東京都写真美術館 2階展示室[東京都]

東京都写真美術館の「路上から世界を変えていく」展へ。糸崎公朗は、街の風景を撮影し、その写真群を立体的に再構成する懐かしい旧作のフォトモも出しつつ、路上の虫や動物の新シリーズを出品していた。これは普段見過ごすドキリとさせる内容だったが、彼のエリアは作品の情報量が多く、人が一番溜まっていた。また津田隆志による排除系ベンチやテントで各地を宿泊のシリーズは、拙著『過防備都市』に通じるテーマだった。

2014/01/13(月)(五十嵐太郎)

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