2018年06月15日号
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artscapeレビュー

2014年04月01日号のレビュー/プレビュー

第6回恵比寿映像祭 トゥルーカラーズ

会期:2014/02/07~2014/02/23

東京都写真美術館[東京都]

注目したのは、カミーユ・アンロによる《偉大なる疲労》(2013)。インターネット上から博物学的ないしは宇宙論的なイメージを渉猟し、それらを再構成することで創世記の神話を物語った。
複数のウィンドウが重なるディスプレイを画面に導入したり、ヒップホップのラッパーに神話を唄わせたり、いかにも今日的な映像の質が興味深い。いかなる物語であれメディアが時代にそぐわなくなれば伝達力を急速に失ってしまうことを思うと、おそらく神話の最適化を図ったのだろう。
ただ、問題なのはその内容の大半をすでに覚えていないことだ。確かに映像というメディアにリアリティはある。けれども、その一方で氾濫する映像はたちまち忘却の彼方に消え去ってしまう。イメージは辛うじて残るかもしれないが、言葉や意味はほとんど残らない。
おそらく作者はそのことを重々承知しているのだろう。皮肉に富んだ作品のタイトルは、編集作業に費やした膨大な時間と労力に加えて、報われにくい映像の特性をも暗示しているように思われた。

2014/02/21(金)(福住廉)

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玉本奈々 向き合う時間

会期:2014/02/28~2014/03/12

枚方市立サンプラザ生涯学習市民センター 市民ギャラリー[大阪府]

画面に布やガーゼ、衣服などを貼り込み、鮮烈な色彩とともに表現することで、生命感あふれる空間をつくり出す玉本奈々。彼女の大規模な個展が、現在の居住地である大阪府枚方市の公立ギャラリーで行なわれた。枚方市では、昭和14年3月1日に旧陸軍火薬庫の爆発事故が起きたことから、同日を「枚方市平和の日」に定めており、毎年さまざまな記念事業が行なわれている。本展もその一環として企画されたが、展覧会自体にイデオロギー色は薄く、彼女の作品に備わる生命礼賛的な要素をクローズアップしたものとなった。出品作品数は36点。新作、近作が中心だったが2000年代初頭の初期作品も含まれており、モチーフや色使いなど彼女の画業の変遷が伝わる構成となった。玉本作品を見慣れない者にとって、格好の入門編となったであろう。また、本展のために地元の小中学校、養護学校と行なったワークショップの記録映像と作品も展示されていた。玉本自身、この経験には感じるところがあったようで、今後の制作になんらかの影響を与えるかもしれない。

2014/02/28(金)(小吹隆文)

眞田岳彦ディレクション/作品「ウールの衣服展──源流から現在」

会期:2014/01/24~2014/03/25

神戸ファッション美術館[兵庫県]

ウールは獣の毛である。編むでも織るでもなくして、繊維を絡み合わせるだけで布(フェルト)になる。
眞田岳彦の作品において、フェルトはもっとも重要な素材のひとつである。本展も、代表作の《聴く/話す》をはじめフェルトによる作品を中心に構成されている。作品はいずれも人の背丈を超えるような規模の大きさで、フェルトはその量感と質感をもって見る者に迫ってくる。
かつてヨーゼフ・ボイスは、フェルトと脂肪をもって立体作品とした。戦時中ボイスがフェルトと脂肪によって生命を救われたという逸話はあまりにも有名だ。ボイスの作品ではフェルトは体温を保ち生命を守るものであって、獣とヒトをつなぐものだった。そして、彼の作品を前にして、見る者とフェルトの塊の間に立ち現われるのは神話めいた物語だった。眞田の場合、それは衣服である。彼は自ら「衣服造形家」を名乗る。自らの作品を「コンセプチュアル・クロージング(考える衣服)」と位置づけて作家の思想を最優先させた衣服と規定し、その役割は「人の心を開き、人を育む」ことにあるという★1。なるほど、ボイスの作品ではフェルトはじっとりと脂をふくみ熱を蓄えて重く沈むのに対して、眞田の作品の、なかに空気を含んで立ち上がったり浮き上がったりしているフェルトには素朴さと広がりがある。それは痛みや凍えといった個人の身体的経験ではなく、地球上どこの国にもどこの地域にもあるようなヒトの営みの表われであり、そこにはおおらかでゆるぎない作者の目線が感じられる。
本展のもうひとつの見どころは、神戸ファッション美術館所蔵品を中心としたウールを用いた古今東西の衣服の数々。6世紀のコプト織のチュニックから現代の著名デザイナーによるファッションまで、さまざまな衣服の展示にはヒトがウールという素材に託してきた身体を守り飾ることへの飽くなき欲望を思い知らされる。そして、神戸ファッション美術館でなくては実現しえなかったであろう展示には、その力量を再確認する思いがした。[平光睦子]

★1──眞田岳彦『考える衣服──Conceptual Clothing』(スタイルノート、2009)、125~126頁

2014/02/28(金)(SYNK)

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橋本大和 写真展 秘密

会期:2014/02/25~2014/03/09

NADAR/OSAKA[大阪府]

写真家の橋本大和は、過去に3度個展を行なっている。4度目となる本展がそれらと違うのは、新作ではなく過去15年間に撮影した作品のなかから選んだ約20点を展示していることだ。そのきっかけは、彼がカラー写真の自家プリントを始めたことである。今までプリンターに託していた部分を自ら行なうようになったことで、改めて自分の世界を再構築しようと思ったのかもしれない。そのニュープリントは三原色がやや強めに発色しており、過去に見た同じ作品とは少し印象が違っていた。筆者自身は今回の方が好きである。また、本展ではそれぞれの作品が元々持っていた文脈が切断・再編集され、新たな世界を構築していた。それらは具体的な物語を綴っているわけではないが、短編小説のような趣をたたえており、作者の編集力が感じられた。

2014/03/04(火)(小吹隆文)

東學 墨絵展─墨の糸が織りなす、愛しき命たち─

会期:2014/03/04~2014/03/19

あべのハルカス近鉄本店ウイング館9階 SPACE 9[大阪府]

あべのハルカス近鉄本店(百貨店)のグランドオープンにより、新たに誕生した多目的空間「SPACE 9(スペースナイン)」。そのオープン第2弾として開催されたのが本展だ。東は演劇や舞台のポスター等で知られるアート・ディレクターであり、同時に墨画師としても活躍している。墨画は主に妖艶な女性たちによる耽美的な世界を描いており、面相筆による繊細な描写力と、迫力ある大画面の構成力が特徴である。本展でも全幅約11メートルの大作《花戰》をはじめとする大作5点と小品が展示されており、やや詰め込み過ぎではあったが、彼の世界を堪能することができた。これまでの仕事の関係か、彼の個展は演劇系の空間で行なわれることが多い。今後は美術館やギャラリーでも彼の大作を見たいものだ。

2014/03/07(金)(小吹隆文)

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