2014年4月15日号:号で見る|美術館・アート情報 artscape

2018年08月01日号
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artscapeレビュー

2014年04月15日号のレビュー/プレビュー

蟻塚学《くぼみの家》(第7回 JIA東北住宅大賞2013)

[青森県]

今年もJIA東北住宅大賞の現地審査を行なう。まず弘前に向かい、蟻塚学の《くぼみの家》を見学する。黒い2つの直方体のヴォリュームが並ぶ印象的な外観だ。これがピュアに幾何学的に立ち現われるのは、通気笠木や暖房器具などの要素を厚みをもたせた開口部のくぼみで吸収しているからである。東北地方で納谷兄弟は断熱性能を空間の構成によって確保すべく入れ子の平面パターンを生み出したが、ここで蟻塚は巧く形を整える外観デザインのアイデアを提案している。

2014/03/01(土)(五十嵐太郎)

中崎透×青森市所蔵作品展「シュプールを追いかけて」

会期:2014/02/08~2014/03/16

国際芸術センター青森 ギャラリーA[青森県]

国際芸術センター青森で開催していた中崎透×青森市所蔵作品展「シュプールを追いかけて」へ。安藤忠雄がデザインしたカーブする大空間に、博物館から借りた雪にまつわる道具を大量に展示しながら、前半は青森とスキーの関係史をたどり、折り返して後半は展覧会のメイキングを紹介する。あいちトリエンナーレ2013では長者町の偽史として架空の撮影所を捏造したが、今回は本当の歴史だ。そしてスキーも文化なのだと実感する。

2014/03/01(土)(五十嵐太郎)

「ヴィジョン・オブ・アオモリ vol.10」小山田邦哉 展 PLANET

会期:2014/02/08~2014/03/16

国際芸術センター青森 ギャラリーB[青森県]

国際芸術センター青森のギャラリーBでは、小山田邦哉の「PLANET」展を見る。超有名な観光名所を撮影した写真のシリーズだが、地平線から上を真っ黒に消失させる加工を行なう。地面のみだと、その場所を言い当てるのは困難になる。かろうじて、キャプションから場所を特定できても、不在になった風景しかない。画面に黒が多いだけで、世界は不穏になる。

2014/03/01(土)(五十嵐太郎)

アール・ブリュット☆アート☆日本

会期:2014/03/01~2014/03/23

ボーダレス・アートミュージアムNO-MA+近江八幡市内[滋賀県]

滋賀県近江八幡の伝統的建造物保存地区にあるアール・ブリュット(アウトサイダー・アート)の専門館、ボーダレス・アートミュージアムNO-MAが開館10周年を迎え、市内6カ所の会場に日本と台湾の500点を超すアール・ブリュット作品を展示している。あいにくの小雨だが、駅前で自転車を借りてまずはNO-MAへ。伝統的な和室に絵や陶芸が置かれているが、アール・ブリュット特有の濃密さや荒唐無稽ぶりに欠ける作品があるなあと思ったら、日比野克彦の作品だった。日比野ではかなわないか。ほかにヴェネツィア・ビエンナーレにも参加した澤田真一、台湾の林 萱の出品。以下、元呉服屋だったという奥村邸では、女性器や乳房をオブセッショナルに描いた 万里絵、糸を切って結んでつなげていく作業を繰り返す似里力ら、旧造り酒屋のまちや倶楽部では、紙を継ぎ足して約10メートルにもなった画面に建物や戦車や観覧車などを描き続けている古久保憲満、飛行中の飛行機の絵だけに執着する西澤彰ら、築100年の旧吉田邸では、カラーボールペンで広告チラシみたいなクセのあるイラストを描いてる中田勝信、さまざまなバリエーションのサトちゃん人形を集めた横山篤志ら、元材木商のカネ吉別邸では、雑誌やチラシを何百枚もコラージュしてるうちに立体になってしまったという金崎将司、何十年も前の記憶を元に歪んだ遠近法で子供時代の室内風景を描く秦野良夫ら、そして瓦の博物館かわらミュージアムでは6人の台湾の作品が展示されている。凡人の予想をはるかに超える作品もさることながら、100年を超える展示空間のアウラも身に染みて日常では得がたい体験だった。

2014/03/01(土)(村田真)

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阿部直人《喜久田の家》/五十嵐淳《HOUSE H》(第7回 JIA東北住宅大賞2013)

[福島県]

JIA東北住宅大賞の審査二日目は、郡山にて、阿部直人が設計した喜久田の家を訪れる。住宅地にあって周囲の家と正面から向き合うのを避けつつ、斜めに配置したプランをつくり、その全体にシンボリックな大屋根をかける。室内では吹抜けのまわりに小部屋群がレベルを変えながら付随するが、個別の空間も大屋根の一部として天井が続く。その後、同じ住宅地に震災前に見学した阿部による住宅があり、その増築部分も見学した。3.11後、放射線の影響を考え、子どもが遊べる開放的な室内空間を庭側に継ぎ足すというもの。夜に行なわれた福島部会の建築家との懇親会でも、除染ほか、さまざまなレベルで原発の影響が現地の活動に影を落としていることがよくわかる。
五十嵐淳によるいわき市のHOUSE Hを見学した。北海道の作品に比べて、ここでも放射線への意識的な影響を考え、緩衝空間も備えた、より閉じた箱型の住宅だった。隣接する川に対してもあまり開かず、開口部もわずかである。中に入ると、大きな倉庫を住宅にリノベーションしたような独特のワンルーム空間が展開する。施主がコレクターでもあり、陳列棚に置かれたグッズを見ていると、ショップにいるような気分にもなる。室内では、大空間ながら、デッキや階段、あるいは段々に下降する床によって、同時にさまざまな場が展開されている。

写真:上=《喜久田の家》、中=阿部による住宅の増築部分。下=《HOUSE H》

2014/03/02(日)(五十嵐太郎)

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