2017年11月15日号
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artscapeレビュー

2014年05月01日号のレビュー/プレビュー

続 木内貴志とその時代~さようならキウチさん~/続続 木内貴志とその時代~帰ってきたキウチさん~

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続 木内貴志とその時代~さようならキウチさん~(2014/03/21~2014/04/06、Gallery PARC[京都府])
続続 木内貴志とその時代~帰ってきたキウチさん~(2014/03/24~2014/04/12、GALLERY wks.[大阪府])

美術家の木内貴志が、京都と大阪で同時に個展を開催した。木内は美術史や自分自身のプライベートを素材に、ベタな笑いと自虐精神に満ちた、批評的かつコンセプチュアルな作品で知られている。今回のダブル個展では、京都と大阪で内容が対照的だった。京都は新作中心で、作品を整然と並べるオーソドックスな展示であったのに対し、大阪は過去作品中心で、会場に作品が散乱していたのだ(画像)。この二重人格的な構成により、観客は木内の多面性と一貫性を知ったであろう。同時に、木内貴志というシャイで実直なアーティストが放つ美術への愛の深さにも気づいたのではないか。

2014/03/24(月)・2014/03/25(火)(小吹隆文)

How is this connected to that?/山本雄教 展

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会期:2014/03/21~2014/03/31

つくるビル[京都府]

若手画家の山本雄教が、アトリエを構えるビル全体を使って大規模な個展を開催した。会場は1階から4階まであり、1階の空き部屋以外は廊下での展示である。作品は、米粒をモチーフにしたシリーズ、ブルーシートに描いた富士山、1円玉をフロッタージュして描いた肖像画、点字ブロックなどの同一モチーフを集積して風景を表現したシリーズなど。各作品には詳細なキャプションが添付され、作品の意図や関係性が詳しく説明されている。つまり、山本のこれまでの歩みを一望するプチ回顧展なのだ。彼が本展に込めた意図は何か。一見無秩序に見える作品の関係を明らかにし、作家像を明確にしようと思ったのであろう。細部まで心配りされた質の高い展覧会であり、同年代の若手にも示唆に富む機会であった。

2014/03/25(火)(小吹隆文)

光山明 写真展 消えたこと/現れること

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会期:2014/03/18~2014/03/29

gallery 福果[東京都]

「ニッポン顔出し看板紀行」シリーズを手がけている光山明の個展。これは観光地によくある顔出し看板を歴史的な事件の現場に設置して撮影した写真のシリーズで、今回は光山がもっとも関心を注いでいる足尾鉱毒事件を主題にした作品を発表した。
撮影地は事件の源となった足尾銅山をはじめ、そこから排出された鉱毒を沈殿させるために廃村にさせられた谷中村の跡地につくられた渡良瀬遊水地と谷中湖、そして請願のために上京しようとした農民を警察が弾圧した川俣事件の出発地である雲龍寺など。看板には、「強制破壊」や「谷中村廃村100年」、「鉱毒除外」という言葉とともに当時の事件が描かれており、いずれにも部分的に顔出しのための穴が開けられている。事件の痕跡を見出すことが難しい現在の風景に、光山は「顔出し看板」というキッチュな文化装置によって歴史を召喚しているのである。
なかでも今回とりわけ注目したのが、《川俣事件逮捕の図》である。副題に「小口一郎へのオマージュ」とあるように、この作品は同事件を主題にした小口一郎の版画を引用したもの。ただ、これまでの作品と異なっているのは、顔出しのための穴を開けるのではなく、画中で逮捕され連行される農民が被っている深編笠を半分に割り画面上に貼りつけている点だ。つまり画面の中の顔を見ることも、自分の顔を画面にはめ込むこともできないのである。
顔のはめ込みが現在に召喚した歴史を我有化することを意味しているとすれば、この《川俣事件逮捕の図》は、そうした歴史と現在の接点が失われているように見えなくもない。しかし別の見方をすれば、顔の入る余地がないがゆえに、逆説的に私たちの想像力が喚起されるとも言える。逮捕された農民たちは深編笠の下でどんな表情だったのだろうか。私たちはどうすれば苦難の歴史を分かち合うことができるのだろうか。むろん完全に同一化することはできないにせよ、光山が示しているのは、想像力によって歴史と向き合う姿勢や構えにほかならない。私たちにとって必要なのは、その身ぶりである。

2014/03/26(水)(福住廉)

銀座地下街ラジオくん 声のアーカイブ展

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会期:2014/03/19~2014/03/26

KANDADA 3331[東京都]

「銀座地下街ラジオくん」とは、取り壊しが決定している銀座4丁目の三原橋地下街を取材したラジオ番組。本展は、学生放送局「ざぎんWAVE」が同地下街の店主や常連客、周辺の画廊主らにインタビューして採集したさまざまな「声」を紹介したもの。
展示は、しかし、実際に音声が再生されていたわけではない。その点は惜しまれるが、それでも文字や写真、記事、図面などによって語られた地下街への思いを読むと、そこが多くの人びとにとっての憩いの場であったことがよくわかる。三原橋地下街は、次々と資本が投入される銀座の街中にあって、例外的にかつての時代の空気を吸える安息の場所だったのだ。
こうした問題はいまに始まったことではない。銀座のみならず、全国の都市は、かつてもいまも、スクラップ・アンド・ビルドの論理によって急速に塗り替えられている。むろん、その速度に相乗りする類のアートがあってもいい。だがその一方で、その奔流に打ち込まれる楔こそアートとして評価しなければならない。なぜならアートとは支配的な見方とは異なる別の視点を提供するものであり、その視角から見たもうひとつの世界のありようを私たちに垣間見せることができるからだ。きらびやかな銀座だけではない、庶民的な銀座の街並みが実在しており、しかも多くの人びとに求められているという声を紹介した本展は、そうしたアートの働きを存分に示した。

2014/03/26(水)(福住廉)

アパートメント・ワンワンワン~中之島1丁目1-1で繰り広げる111日~

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会期:2014/03/29~2014/07/06

アートエリアB1[大阪府]

大阪を拠点に活動するgraf(クリエイティブ・ユニット)とIN/SECTS(編集プロダクション)が協同し、アートエリアB1内に複数の小屋と通路、グラウンド等から成る空間「アパートメント・ワンワンワン」をつくり出した。それぞれの部屋や空間にはアーティストが入居し、さまざまな表現活動の集合空間が形成される。第1期(3~4月)の入居者は、飯川雄大(美術家)、倉科直弘(写真家)、鈴木裕之(イラストレーター)、高島一精(ファッションデザイナー)、MASAGON(アーティスト)、203gow(編み師)の6組。今後、第2期(4~5月)、第3期(5~6月)と作家が入れ替わっていくが、空間には前の期の痕跡が部分的に残されるという。そういう意味で本展は、往来的なグループ展やコラボレーションとは異なる新たな試みと言えよう。

2014/04/02(水)(小吹隆文)

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