2018年12月15日号
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artscapeレビュー

2014年05月15日号のレビュー/プレビュー

シャルル・フレジェ「WILDER MANN」

会期:2014/03/15~2014/04/13

MEM[東京都]

「WILDER MANN(ヴィルダーマン)」はドイツ語で、英語では「WILD MAN(ワイルドマン)」、フランス語では「HOMME SAUVAGE(オムソバージュ)」と称する。冬から春にかけて、ヨーロッパ各地の村では死と復活(再生)をテーマとする民間行事が行なわれるが、そこに登場してくる山羊、熊、鹿などの動物を模した仮面、衣裳を身に着けた者たちが「WILDER MANN」なのだ。フランスの写真家、シャルル・フレジェは、2010年頃からオーストリア、イタリア、フランス、ルーマニアなどの、主に山岳地帯にある村々を訪ね、それら「獣人」たちのポートレートを撮影していった。本展は、その成果をまとめた写真集『WILDER MANN──欧州の獣人 仮装する原始の名残』(青幻舎)の刊行を機に開催されたもので、同シリーズから23点の写真が展示された。
「WILDER MANN」の姿はどことなく懐かしい。東北地方や沖縄の民間行事や宗教儀礼に登場する「カミ」や「オニ」たちにそっくりの仮装をしている場合が多いからだ。新国立美術館で開催中の「イメージの力──国立民族学博物館コレクションにさぐる」展を見たときも感じたのだが、文化と自然との境界領域に出現してくる存在を形象化するときの想像力は、世界中どんな場所でも共通しているということだろう。半分動物で半分人間という「WILDER MANN」は、その意味で普遍的なイメージであり、それらがまだヨーロッパでこれだけの生命力を保ち続けているということが、僕にとっては大きな驚きだった。
フレジェはあえて素朴な「記念写真」のスタイルで撮影することで、「WILDER MANN」たちが村の日常的な生活空間に溶け込んでいる様子を示している。その構えたところのないカメラワークが、逆にリアリティを生んでいると思う。

2014/04/01(火)(飯沢耕太郎)

ローン・サバイバー

映画『ローン・サバイバー』を見る。アクションとしては、アメリカの特殊部隊が激しい銃撃戦のなか、急傾斜の岩肌を傷つきながら転げ落ちるというような、垂直移動の痛々しさは見たことがなく、新しい映像の視覚表現を開拓していた。実話をもとにしているが、切迫した状況において、リスクを厭わず、何を「正義」と考えるかという序盤と終盤の生死を決める選択で、特殊部隊とアフガニスタン人の立場が入れ替わる設定がうまく効いている。

2014/04/01(火)(五十嵐太郎)

ロボコップ

未来を舞台にした『ロボコップ』は、もはやアフガンで兵士が戦死する必要がなくなるという理由から、ロボット導入を煽る、TVショーから始まる。生体+機械の融合、身体の解体、感情のゆらぎの描写などは、もっと即物的だったオリジナルに比べて、現代のテクノロジーの進化を受けて、バージョン・アップしている。なお、オムニコープ社の社長の部屋には、フランシス・ベーコンによる三幅対の不気味な絵画が展示されていた。

2014/04/01(火)(五十嵐太郎)

没後百年 日本写真の開拓者 下岡蓮杖

会期:2014/03/04~2014/05/06

東京都写真美術館[東京都]

日本最初の写真師のひとりで、幕末に横浜で写真館を開いた下岡蓮杖の初の本格的な回顧展。1823年生まれというから、洋画の先駆者・高橋由一や五姓田芳柳とほぼ同世代。3人とも最初は絵師を目指したが、由一や芳柳が西洋画を見て憧れたのに対し、蓮杖はたまたま目にしたダゲレオタイプに衝撃を受けて写真に転向する。こうした人生の分かれ道はほんの偶然によるものだ。とはいえようやく開港するかしないかの時代、だれも写真術なんか知らないので外国船の入る下田(出身地でもある)や浦賀をうろつき、要人に食い込んで習得したという。こうして開港まもない横浜で写真館を開業するが、明治8年に東京浅草に移転。この前後から写真館の背景画やパノラマ画を描いたり、乗合い馬車を始めたり、夫婦でキリスト教の洗礼を受けたり、洋画を展示して観客にコーヒーを振る舞う油絵茶屋を開いたり、多彩な活動を展開し、晩年は絵画制作に明け暮れたという。結局、蓮杖が写真に専念したのは90年を超す長い人生のうち、横浜ですごした10年ちょっとのあいだだけで、今回の展示の大半もその時代の写真に占められている。あとはそれ以降の水墨画や同時代の資料などだ。ヤマッ気たっぷりだったらしい蓮杖にとって、写真とはどうやらひと山当てるための商売にすぎず、人生を賭けるに足るものではなかったのかもしれない。絵画に戻り、最後まで絵を描いていたというのは示唆的だ。

2014/04/02(水)(村田真)

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ミラノ ポルディ・ペッツォーリ美術館 華麗なる貴族コレクション

会期:2014/04/04~2014/05/25

Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]

19世紀ミラノの貴族ポルディ・ペッツォーリの集めた絵画、武具、タペストリー、時計、ガラス器などのコレクションを公開。こういう貴族のコレクションを邸宅ごと公開しているところでは、やっぱり壮麗な室内空間のなかに置かれた作品をその場で見るから価値も倍増するんであって、作品だけ持ってきて見せられても身ぐるみはがされたみたいでちょっと貧相に映ってしまう。ともあれ、絵画は14世紀の祭壇画から、マンテーニャ、ポッライウォーロ、ボッティチェッリなどルネサンスのイタリア絵画が中心だが、最後のほうにフォンタネージの風景画があって不思議な感じがした。いうまでもなくフォンタネージは、明治初期に日本最初の美術学校である工部美術学校で2年間教鞭をとった画家。つまりわれわれから見れば横のつながりの人なので、こうして西洋(イタリア)美術史という縦の流れのなかに組み込まれると、外国の街で唐突に日本人と出くわしたときのように、「やあこんなところで」と親しみを覚えると同時に居心地の悪さも感じるのだ。

2014/04/03(木)(村田真)

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