2018年07月01日号
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artscapeレビュー

2014年06月01日号のレビュー/プレビュー

奥村博美 展

会期:2014/04/22~2014/05/04

ギャラリーマロニエ[京都府]

ベテラン陶芸家の奥村博美が、《火焔器》と題した新作10点を発表した。燃え盛る炎のようなフォルムとメタリックな色合いを持つ本作は、ひとつまみの粘土を平たくして次々に貼り付ける手法で造形されており、無数の突起と穴を持つのが特徴だ。また、長石と錫と鉄を独自の比率で配合した釉薬と、「還元」という焼成法を用いることにより、エナメル質の光沢と土色が混じった独自の発色に成功している。本作は胴体に無数の穴があるため実用には不向きだ。彫刻的な造形性からもオブジェと見なすのが妥当かもしれない。しかし、その条件を考慮したうえで他ジャンルのクリエーター、たとえば華道家や茶道家と共演すれば、きっと面白い効果を発揮するだろう。

2014/04/22(火)(小吹隆文)

勝正光「Pencil drawing exhibition #1」

会期:2014/04/12~2014/04/27

island MEDIUM[東京都]

大分県別府市の「清島アパート」で暮らしながら制作を続けている勝正光の個展。巨大な紙の上に鉛筆を走らせ一面の全体を黒く塗りつぶす作品を発表した。
その表面は漆黒の「黒」というより、むしろ光沢を放った「銀」。作品の前に立った人影を反映するほど黒鉛を支持体に強く塗り込めている。平面でありながら鋼のような硬質のマチエールが眼に沁みる。しかも同じ要領で支持体を塗りつぶしながら、その黒い画面の奥にエルメスのカレの文様が畳み込まれた作品もある。一見しただけではわかりにくいが、視点を変えて見ると有機的な模様が浮かび上がるという仕掛けがおもしろい。こうした工夫はややもすると全体の印象が図像のほうに引き寄せられがちだが、鉱物的な物資感が絵画的な図像の突出を絶妙に封じ込めている。
おそらく黒鉛を塗り込めるというシンプルな身ぶりだからこそ、あえて図像を混入させることで、その基本的な強度を試してみたくなるのではないか。自分で自分を追い込み、限界を突破していく。勝正光の黒い画面の奥には、昨今の若いアーティストには見受けられなくなった特徴も見通すことができるのである。

2014/04/24(木)(福住廉)

開館30周年記念企画 現代陶芸 笹山忠保 展─反骨と才気の成せる造形─

会期:2014/04/26~2014/06/29

滋賀県立近代美術館[滋賀県]

信楽を拠点に活動するベテラン陶芸家・笹山忠保が、地元滋賀の美術館で大規模な回顧展を開催している。本展では半世紀以上にわたる彼の活動を、前半と後半の2部に分けて構成。前半(1950年代~1990年代前半)はいわば前衛時代であり、直線的な構造を持つオブジェなど、やきものらしさを拒否したかのような作品が並んでいた。後半(1991年代以降)は、幾何学的な造形はそのままに信楽焼の風合いを持たせた作品が主体で、終盤に向かうにつれ単体のオブジェから空間性を意識した組作品へと変化していく。一作家の業績が非常にわかりやすく紹介されており、回顧展はかくあるべしという充実した内容であった。前半は作品を詰め込み過ぎて狭苦しさを覚えたが、同時に学芸員と作家の情熱を感じたことも付記しておく。

2014/04/26(土)(小吹隆文)

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三瀬夏之介 風土の記─かぜつちのき─

会期:2014/03/09~2014/05/11

奈良県立万葉文化館[奈良県]

本展は今年3月から行なわれていたが、気が付いたらゴールデンウイークまで見逃していた。会場へのアクセスにやや難があり敬遠していたのだが、あやうく見逃すところだった。われながら反省しきりである。本展の作品数は、《君主論》《ぼくの神さま》《だから僕はこの一瞬を永遠のものにしてみせる》などの代表作に、新作《風土の記》を加えた16点。美術館の企画展で16点は少ないと思うかもしれないが、三瀬の作品は長辺7、8メートルが普通という巨大なものであり、16点でも十分すぎるほどだった。また、彼の仕事は全体でひとつとも言え、各作品が有機的な関係性を保ったまま永遠に増殖するかのような性質を持っている。巨大な展示空間を持つ同館だからこそ、三瀬の世界を示せたと言えるだろう。筆者はデビュー時から三瀬の作品を見てきたが、彼が東北に移住して以降は機会が減っていた。本展で日頃の欲求不満を解消できたが、同時に、彼は高い所に行ってしまったと、一抹の寂しさを覚えたのも事実である。

2014/04/30(水)(小吹隆文)

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「ドキドキ・ワクワク ファッションの玉手箱──ベスト・セレクション123」展

会期:2014/04/12~2014/07/08

神戸ファッション美術館[兵庫県]

18世紀から現代までのさまざまな衣裳全般、関連資料を収集してきた神戸ファッション美術館の名品を123点公開する展覧会。展示は、18世紀ロココの時代から始まって20世紀へ、世界の民族衣装と現代というように、時代毎のファッションの変遷がわかるよう工夫されている。衣裳だけでなく靴・帽子・アクセサリーを身につけ同時代の化粧とヘアメイクを施されたマネキンによる展示(ちなみにマネキンはそれぞれが違う造形となっており、各時代を象徴する)や、絵画のなかにみられる同衣裳の表示・関連する写真・ポスター・版画・映像・雑誌等のメディアをフル活用して、各時代のスタイルの魅力を余すことなく伝えている。とくに興味深かったのは、18世紀から19世紀にかけての衣裳群とアクセサリー類。もちろんオリジナルで保存状態の素晴らしいものを、ガラスケースなしに見ることができるから、ドレスの裁縫技術や生地感・テクスチュア【テクスチャ】を目でしっかり確かめることができる。当時の丁寧な仕事ぶりと高い技術のありようが生み出す服飾の造形に、思わずため息が漏れた。[竹内有子]

2014/05/03(土)(SYNK)

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