artscapeレビュー

2014年10月15日号のレビュー/プレビュー

光嶋裕介新作展─幻想都市風景

会期:2014/09/03~2014/09/20

ときの忘れもの[東京都]

ときの忘れもののギャラリーにて、若手建築家、光嶋裕介の新作展「幻想都市風景」展へ。実在する建築も微妙に混じりながら描かれるドローイングによる、無限に連続しそうな建築的な世界が展開する。ここでは2度目の個展ということで、一品もの以外にシルクスクリーンの大型作品にも挑戦し、その様々なバリエーションを制作していた。

2014/09/05(金)(五十嵐太郎)

印象派のふるさと ノルマンディー展

会期:2014/09/06~2014/11/09

東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館[東京都]

また館名が変わった。当初の安田火災東郷青児美術館は見る影もない。「ノルマンディー展」は、北仏ノルマンディー地方を描いた風景画に焦点を絞った、ありそうでなさそうな、でもありそうな展覧会。廃墟、荒天、夕日といったいかにもな舞台設定を好む19世紀前半のロマン主義から、コローやブーダンら無愛想で素っ気ない曇天模様のレアリスムを経て、一気に明るいモネの風景画へ移り変わっていく。その間に海辺が日光浴や海水浴などレジャーの場と化し、娯楽や産業が栄えていくさまが絵からも読みとれる。20世紀になると点描や表現主義が襲い、風景より画家の個性が前面に出てきて絵画が大きく方向転換していく。ノルマンディーという定点を観測するだけで、この一世紀のあいだに絵画にも人々の生活にもモダニズムの大波が押し寄せたことがよくわかる展観だ。しかし最後のデュフィはどこがいいんだかさっぱりわからん。

2014/09/05(金)(村田真)

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高畑早苗「Metamorphosis」

会期:2014/08/26~2014/09/06

Galerie Paris[東京都]

一昨年亡くなった友人に捧げるオマージュ展。出品は、ボッシュかブリューゲルを思わせる楕円形の風景画に、ビザンチン風ともいうべき華麗な人物画、キャンバス地をドレス型に仕立てて絵を描いた「ウェア・ミー」シリーズ、それに小さな人物像をビーズやガラスで飾り立てたイコン風の装飾品など、形式もスタイルも多彩というほかない。ただ共通しているのは、どれも東洋的でも西洋的でもなく無国籍的であること、どれもアナクロニズム志向であること、どれもアンチフォーマルながら絵画を基本にしていること。そしてもうひとつ付け加えるなら、どれもこの世とあの世をつないでることだ。

2014/09/05(金)(村田真)

第4回産廃サミット─廃棄物を言い訳にしないデザイン展─

会期:2014/09/06~2014/09/14

プラス・ショールーム「+PLUS」[東京都]

日頃我々がゴミとして排出している“廃棄物”の素材性を活かしたアート、プロダクトなど、公募により選出された80名の作品を展示した展覧会イベント。廃棄物処理業者の株式会社ナカダイが主催する今展は、”素材=廃棄物”という見地からモノの価値や捨て方、現在の我々の生活のあり方、創造の可能性を見つめ直そうというものであった。捨てられたプラスチックの道具やおもちゃの部品など、様々な廃品から制作した派手な装飾のリヤカー《移動祭壇》を引き、街中を走るという活動を行っている石田真也が出品するというので見に行った。手芸から彫刻まで、廃品を用いたさまざまな作品とともに主催会社が扱う商品も陳列された会場は、全体には「何でもあり」の雑多な印象。興味を持つものは他にもあったが、石田の新作はだんとつに目を目を引いた。《石田延命所》という車輪付きのその作品は、これまで石田が発表してきた《移動祭壇》と同様のコンセプトで制作されたもの。しかし、主にその造形センスに注意が傾きがちだったこれまでとも異なり、今回は細部のマテリアルにもその使い方にも石田ならではのユニークな発想と工夫がうかがえて、作家の遊び心にもワクワクする興奮を覚えた。石田のアートワークは、素材集めにしろ制作物にしろ、実際に外に出ることで新たな出会いや交流を生み出すという魅力をもっている。作品自体がただ廃材を使った奇抜な「祭壇」というインパクトを超えて昇華した印象だったのが嬉しい。今後の発表活動がますます楽しみになった。


石田真也《石田延命所》

2014/09/06(土)(酒井千穂)

郊遊〈ピクニック〉

ツァイ・ミンリャンの映画「ピクニック」を見る。家なき親子と女のシンプルな物語で、ほとんどセリフもない。いや、これは映像なのか、絵/写真なのかと、つい考えてしまうような廃墟での、美しく静止した長いカットの数々が続く。こうした衝撃は、冒頭のシーンからいきなりガツンとやられる。まるで展覧会を見ているかのような映画だ。

2014/09/06(土)(五十嵐太郎)

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