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2014年10月15日号のレビュー/プレビュー

岡村昭彦の写真 生きること死ぬことのすべて

会期:2014/07/19~2014/09/23

東京都写真美術館[東京都]

岡村昭彦の「生きること死ぬことのすべて」展は、国際的に活躍したフォト・ジャーナリストの回顧展である。ベトナムの報道写真で一躍注目されるも、しばらく入国を禁止され、アイルランドを拠点にナイジェリア、ドミニカ、アメリカなどの現場をまわる。世界各地の争いの記録から、20世紀の一断面が生々しく垣間見える。

2014/09/06(土)(五十嵐太郎)

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フィオナ・タン まなざしの詩学

会期:2014/07/19~2014/09/23

東京都写真美術館[東京都]

フィオナ・タン「まなざしの詩学」展は、メディアの差異や、アイデンティティと記憶の問題をテーマに扱う。とくに《インヴェントリー》(2012)は、筆者の好きなロンドンの建築家ジョン・ソーンの自邸に展示された古代遺物を6種類の映像メディアで記録したものである。建築空間の説明はなく、コレクションを断片的かつ複合的視点で表現していた。またフィオナ・タンのドキュメンタリー映像《興味深い時代を生きますように》は、面白くて60分、つい最後まで見る。アジアと西洋のハーフとして生まれた彼女のルーツをたどるべく、オランダ、オーストラリア、インドネシア、香港、ケルン、そして起源となる中国のタン族の村へとたどりつく。華僑の移動とネットワーク力に感心させられた。

2014/09/06(土)(五十嵐太郎)

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あなたの都市の上に草は生える

会期:2014/09/06

都内某所[東京都]

札幌国際芸術祭で見逃したアンゼルム・キーファーのドキュメンタリー映画を、内々で上映するというので見に行く。林のなかに小屋が点在する風景が映し出される。アトリエなのかギャラリーなのかわからないが、作品らしきものが置いてある。重機を使って穴を掘り、地下神殿のようなグロッタをこしらえている現場も映し出される。途中キーファーへのインタビューが差し挟まれ、最後はコンクリートを積み上げて不安定な塔を建てておしまい。なんだこれ? 後にこれらが南仏アルデシュ県バルジャック村に構えた35ヘクタールに及ぶアトリエの一部であることがわかって、おったまげる。35ヘクタール? 想像がつかんが、うちより広い。ところでバルジャックといえば、20年ほど前に先史時代の壁画(ショーヴェ洞窟壁画)が発見されたヴァロン・ポン・ダルクの渓谷のすぐ近く。キーファーが移り住んだのも同じころ。とすれば、敷地内に洞窟を掘ってるのは偶然ではないだろう。

2014/09/06(土)(村田真)

『旅行記 [前編]』佐藤貢出版記念展

会期:2014/08/27~2014/09/07

iTohen[大阪府]

毎年恒例となっている、名古屋を拠点にしている作家の新作発表展。
今年はなんと自伝的な内容の本を自費出版。本の1行目から「餓鬼」という言葉が登場するなにやら不穏な幕開け、漠然と大阪から船でインドに向かうなど、連なった文字のその質感は、まさに彼の拾得物などを使った郷愁の漂うざらざらとしたインスタレーションの質感と重なっていた。

2014/09/09(日)(松永大地)

ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展

会期:2014/06/28~2014/09/15

世田谷美術館[東京都]

某文化講座の仕上げに再訪。講座では印象派を中心とする西洋絵画への日本美術の影響を語ったが、実のところ、今回の目玉であるモネの《ラ・ジャポネーズ》は、日本の芸術文化を採り入れたわかりやすい例であり、ジャポニスムの広がりのなかでは初歩的なものといっていい。もう少し影響が内面化していくと、どこがどれほど日本美術の影響なのかわからなくなるくらい自分のものにしてしまう。そこまできてようやく西洋が日本美術を血肉化したといえるのだ。その過程を示すのが「ジャポニスム展」の醍醐味であり、また難しいところでもあるだろう。特設ミュージアムショップには金平糖やらオリジナルふきんやらさまざまな便乗商品が売られていたが、なぜか特製レトルトカレーもあって「なんでだろう?」と思ったら、「カレーなるジャポニスム展」だからだ。なにかどんどんハードルが下がってきてる感じ。

2014/09/09(火)(村田真)

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2014年10月15日号の
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