artscapeレビュー

2014年10月15日号のレビュー/プレビュー

村野藤吾──やわらかな建築とインテリア

会期:2014/09/03~2014/10/13

大阪歴史博物館[大阪府]

大阪の歴史博物館にて、「村野藤吾──やわらかな建築とインテリア」展を見る。大きく言うと、3つの特徴をもっている。第一に、孫へのデザイン性の高い海外土産やお茶を習うなど、村野の私生活を紹介していること。第二に、手すりなど解体物件の一部や家具などの1/1の実物展示。そして第三に、大阪に所縁のある作品を詳しく紹介している。

2014/09/10(水)(五十嵐太郎)

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東北大学五十嵐研究室ゼミ旅行(1日目)

会期:2014/09/10~2014/09/11

[兵庫県]

神戸で集合した後、21名で三台に分乗し、研究室のゼミ旅行で淡路島をまわる。初日は、屋根がゆるやかな曲線を描く隈研吾の《淡路サービスエリア》(1998)、阪神淡路大震災の記憶を残すべく、自然の断層をそのまま現地で保存する《野島断層保存館》(昭和設計/1998)、安藤忠雄による《本福寺の水御堂》(1991)と、だいぶ植物に覆われるようになった《夢舞台》(2000)の建築群をまわる。こうした安藤建築のコースは、筆者にとって15年ぶりくらいでとても懐かしい。夕食は淡路ワールドビレッジにてバーベキューを行なう。ここは高床式住居、パオ、蔵、アフリカの家、トレーラーハウスなどがあり、それらに宿泊可能な場所だった。夜は、安藤忠雄による《TOTOシーウインド淡路》(1997)に泊まり、毎年恒例の研究室コンペを開催する。今回は東北大の学園祭における五十嵐研の展示計画がお題であり、5案から2時間かけて佐々木瞭案に絞る。


《野島断層保存館》


安藤忠雄《本福寺の水御堂》


安藤忠雄《夢舞台》

2014/09/10(水)(五十嵐太郎)

東北大学五十嵐研究室ゼミ旅行(2日目)

会期:2014/09/10~2014/09/11

[兵庫県]

まわりが何も見えない夜に着いたため、朝起きて初めて、《TOTOシーウインド淡路》から海の絶景を堪能する。そして海に向かうプールやテラス(これを眺めながら朝食をとる)。ロビーでは、お得意の大階段と大本棚が出迎える。安藤のドローイングが飾られた各部屋も広く、ベネッセハウスに近い経験を味わえるが、ここは割安な感じで楽しめるので、ここのホテルはおすすめである。
久しぶりに訪れた大塚国際美術館(徳島県鳴門市/1998年3月開館)にて、約3時間の名画鑑賞を行う。世界の有名美術館のコレクションを集めたベスト・オブ・ベストである。すべて複製の陶板画とはいえ、額縁付きで1/1のスケールで展示され、システィナ礼拝堂の天井画など、モノによっては空間ごと再現しているのが良い。小さく縮小された本の図版ではわからない細部も確認できるからだ。今回、研究室では美術と建築の本に関わるので、美術史のおさらいするために訪れた。ところで、国際美術館の向かいに、琵琶湖ホテルとよく似た大塚製薬の迎賓館がある。これも1930年代の国策による国際観光ホテルかと思いきや、職員にたずねると、1980年代頃につくったという。そうだとすれば、建築もコピーである。
遠藤秀平による福良港の《淡路人形座》(2012)と《うずまる》(2010)を見学する。いずれも津波を想定した建物だ。途中、瓦の素材で一面が覆われた《甍公園》(エイトコンサルト設計/2001)に立ち寄り、畑に点在するネギ小屋、遠景で丹下健三の《戦没学徒記念若人の広場》(1967)を眺めた。福良港の水門ほか、淡路島では瓦の使用率が高いが、これらと比較すると、改めて遠藤や安藤は外観のデザインに使わない選択をしたことがわかる。ゼミ合宿の最後は、いるか設計集団が手がけた《岩屋中学校》(1993)へ。ていねいに各部屋を案内していただく。屋根が傾斜することで、どこにいても屋根を意識させる空間、瓦屋根の集落的な風景、にぎやかな装飾的な細部は、象設計集団による沖縄の建築やポストモダンの時代を想起させる。ちなみに、少子化の影響で在校生が減少し、当初に比べて、空間の使い方はいろいろ変化したという。

2014/09/11(木)(五十嵐太郎)

Tokyo Rumando(東京ルマン℃)「Orphée」

会期:2014/09/03~2014/09/20

ZEN FOTO GALLERY[東京都]

前作の「REST 3000~ STAY5000~」で、ラブホテルでさまざまな人格に変身するという興味深いセルフポートレート作品を発表したTokyo Rumandoが、東京・六本木のZEN FOTO GALLERYで意欲的な新作を発表した。
今回はジャン・コクトー監督・脚本の映画「オルフェ」(1950年)に題材をとり、「鏡」をテーマとして取り上げている。魔界、あるいは死の世界への入口と思しき丸い鏡に、Tokyo Rumandoが自ら扮する妖しいキャラクターが、あらわれては消えていく。ボケや揺らぎなど、鏡に映し出されるイメージにふさわしい効果を巧みに用いることで、現実世界にいる彼女自身との対比がもくろまれているのだ。コクトーへのオマージュを込めた、ややクラシックな雰囲気のモノクロームの画像がなかなかうまく効いていて、ユニークな作品として成立していた、
ただ、あまり大きくないプリントがフレーミングされて並んでいるだけの展示(映画「オルフェ」が壁面にDVD上映されてはいたが)は、ややもったいなかった。せっかく4~6枚のシークエンス作品として制作されているのだから、複数の写真を同じフレームにおさめるとか、鏡そのものを写真と組み合わせてインスタレーションするとか、何か一工夫ほしかった気がする。「鏡」というテーマそのものは普遍的なものなどで、さらに別な形で展開していく可能性を持っているのではないだろうか。なお展覧会にあわせて、ZEN FOTO GALLERYから同名の写真集が刊行されている。

2014/09/12(金)(飯沢耕太郎)

2014年度日本建築学会大会[近畿]

会期:2014/09/12~2014/09/14

神戸大学国際文化学部(鶴甲第1キャンパス)ほか[兵庫県]

建築学会の大会で、神戸大学に訪れる。今年は研究室から6名が発表した。また学生コンペで、1名が公開審査に進む。空き時間に、坂を上りながら、神戸大学の《本館》(文部省営繕設計/1932)、《講堂》(文部省営繕設計/1935)、《図書館》(文部省営繕設計/1933)、《兼松記念館》(文部省営繕設計/1934)、《武道館》(文部省営繕設計/1935)を見学した。1930年代の建築がよく残り、周辺の現代建築も、当時の外壁のテイストをあわせている。これだけ建築関係者が全国から集まりながら、意外にここを見る人がいないことは気になった。

学会の後、学生とともに、久しぶりに大阪の中崎町へ。山崎亮に連れていってもらい、初めてこの場所を訪れ、アジアならともかく、日本でもこんな場所が成立するのかと感心したのが、10年くらい前だったと思う。住宅地とリノベーションによる小さな店舗が混在し、独特のコミュニティをつくる界隈である。以前から減ったお店もあるし、増えたお店もあり、やはり変化しているようだ。

上:神戸大学講堂 下:図書館

2014/09/12(金)(五十嵐太郎)

2014年10月15日号の
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