artscapeレビュー

2015年01月15日号のレビュー/プレビュー

注目作家紹介プログラム チャンネル5──木藤純子「Winter Bloom」

会期:2014/12/06~(12/22は屋外から見る特別展示)

兵庫県立美術館[兵庫県]

兵庫県立美術館が2010年から行なっている注目作家紹介プログラム。今年は関西を中心に活動する木藤純子をピックアップした。木藤は主にインスタレーションを手掛けるアーティストで、光や風などの自然の要素、会場の構造などにほんの少しだけ手を加えることで成立する繊細な作品で知られている。本展では、美術館のアトリエ1で冬枯れの枝を描いた壁画と時折落下する白い花びらによるインスタレーションを展示したほか、エントランスホールでは花びらが少しずつ落下する作品を設置した。また、ホワイエではグラスを底から覗くと青空が見える小オブジェをこっそりと配置し、大ひさし下では1枚の小さな花びらが風に揺られて宙を舞う作品を展示した。いずれも漫然としていたら見つけることさえ難しい作品だが、それゆえ見る側の感覚が研ぎ澄まされ、作品や場との新たな関係を見つけ出すことができる。同時期に開催中の大規模な企画展に訪れていた大勢の観客のうち、何割の人が彼女の作品に気付いたのだろう。その数は定かではないが、気付いた人はきっといままでに味わったことがない美術体験をしたはずだ。

2014/12/06(土)(小吹隆文)

小林秀雄「SHIELD」

会期:2014/12/05~2015/01/31

EMON PHOTO GALLERY[東京都]

小林秀雄が1998年に発表した「中断された場所」は印象深いシリーズだった。公園やゴミ捨て場のような日常的な場所を可動式のコンクリートの壁で遮蔽し、地下室を思わせる空間を構築して撮影する。それは「ドキュメンタリーを架空の日常空間に再構築する」という意図を、高度な技術と美意識で実現した作品で、強い印象を与えるものだった。その小林は2000年代に入って活動がやや鈍り、しばらく沈黙を守っていた。今回のEMON PHOTO GALLERYでの個展は、2003年の「trace」(ツァイト・フォト・サロン)以来のひさびさの作品発表になる。
展示されたのは「SHIELD」(2013年)と「Falling Light」(2011年)の2作品。それぞれ「シャッターを開放した状態に保ち、自らフレームの中に入ってコンパスに似た装置を使い、私は光のシールドをゆっくり描いていく」(「SHIELD」)、「水面に水を垂らすように、数千のストロボ発光を長時間露光で8×10フィルムに刻む」(「Falling Light」)というコンセプトで制作されたシリーズだ。小林の徹底したメタフィジカルな思考と完璧な技術を融合させた作品群は、日本人の写真表現の系譜においてはきわめて希少なものであり、もっと高く評価されてよいのではないだろうか。見慣れた風景を「非日常空間に転化」するという果敢な実験の積み上げが今後どんな風に展開していくのか、さらにもう一段の加速があるのかが楽しみになってきた。

2014/12/06(土)(飯沢耕太郎)

うた・ものがたりのデザイン─日本工芸にみる「優雅」の伝統

会期:2014/10/28~2014/12/07

大阪市立美術館[大阪府]

平安時代より日本の美術工芸は、源氏物語や伊勢物語、詩歌、謡曲などの文芸と密接に関わりながら多様なデザインをうみだしてきた。今展は小袖、蒔絵、料紙装飾、硯箱、刀の鞘、陶磁器など、平安時代から江戸時代までの作品約140点によって、工芸意匠と文芸との関係を探ろうというもので、国宝や重要文化財の作品も多数展示された。会場は序章「王朝のデザイン 葦手と歌絵」、第一章「和漢朗詠集のデザイン」、第二章「和歌のデザイン」、第三章「物語のデザイン」、第四章「謡曲のデザイン」の5章からなる展示構成。息をのむほど精緻な表現技術の蒔絵手箱、源氏物語の場面を表すさまざまな風物を刺繍した着物など、華麗な展示品の数々には目を奪われっぱなしだったのだが、なかでも私が惹かれたのは国宝の《葦手絵和漢朗詠集(あしでえわかんろうえいしゅう)下巻》をはじめとする「葦手」の展示だった。平安時代に流行したという「葦手」は文字を絵画化した装飾文様。物語世界の意味を伝え、謎ときのヒントとしての「語り手」でもある。詩歌の音や文字のリズムと絡みながら、植物や鳥、水といった風物のモチーフが入り混じり、流れるようにゆるやかなイメージで読み手を物語世界に誘う。知識のない私には解説がなければ何が書いてあるのかもわからないのが残念だが、遊び心に溢れた優美な造形センスとその想像力に、物語世界を思い描く作者の心を垣間見るようだった。ボリュームもさることながら全体的に素晴らしい内容だった本展。会場もわりと空いていてゆっくりと鑑賞することができたのも嬉しい。

2014/12/06(土)(酒井千穂)

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鉄道芸術祭vol.4「音のステーション」プログラム

会期:2014/10/18~2015/12/23

アートエリアB1[大阪府]

京阪なにわ橋駅の地下一階コンコースに2008年に開設されたアートエリアB1。「文化・芸術・知の創造と交流の場」をテーマに、企業・大学・NPO法人が協同で、駅という特性やその可能性に着目したさまざまなイベントや展覧会を実施している。この会場を舞台に2010年よりはじまった「鉄道芸術祭」は多様なプログラムを展開するアートイベント。第4回目となった今回は〈音・技術・ネットワーク〉をテーマに開催された。「音」にまつわる制作活動を行っているアーティストの作品展示のほか、コンサート、公開ラジオ、トークライブなど多数のイベントが行われた。なかでも斬新だったのが実際に走行する電車内でのライブ・パフォーマンス「ノイズ・トレイン」。出演アーティストの伊東篤宏、鈴木昭男、和田晋侍とともに観客も中之島駅発の貸切電車に乗り込み、出発の中之島駅から樟葉駅で折り返す電車が、なにわ橋駅に到着するまでのおよそ一時間半の公演。放電ノイズを拾って音を発する伊東のオリジナル楽器、「OPTRON」のライブが行われた車両内部は人だかりで、私はあまり接近できなかったが、車窓全てのカーテンがひかれたなかでチカチカと強い光が明滅するその怪しげな車両はノイズ音と光がスパークする強烈な空間だった。2つの車両を移動しながら行われたサウンド・アーティストの鈴木昭男の《アナラポス》演奏、和田晋侍のドラム演奏空間など、観客はアーティストたちがそれぞれライブを行う車両を自由に移動しながらパフォーマンスや空間を楽しむのだが、その時間自体が刺激的で面白い。電車の走行音や車窓を流れていく外の景色、通過する駅の様子がいつもとは違うものに感じられ、新鮮。ユニークで独創的なイベントだった。


電車公演「ノイズ・トレイン」ウェブサイトhttp://artarea-b1.jp/archive/2014/1206629.php

2014/12/06(土)(酒井千穂)

第19次笑の内閣 福島第一原発舞台化計画─黎明編─「超天晴!福島旅行」

会期:2014/12/04~2015/12/07

こまばアゴラ劇場[東京都]

東浩紀が提唱する福島第一原発観光地化計画に触発された作品であり、修学旅行先に福島を選んだ高校の職員会議の体裁をとる。あらかじめ想定される議論をトレスしながら、政争や色恋、そして歌と笑いを織り込み、最後まで飽きさせない内容だ。いや、むしろ修学旅行先を舞台にした続編を是非見たい。なお、映像で紹介された福島の訪問先候補は、ほとんど訪れていた。

2014/12/06(土)(五十嵐太郎)

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