2018年01月15日号
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artscapeレビュー

2015年03月15日号のレビュー/プレビュー

パリよ、永遠に

映画『パリよ、永遠に』(監督:フォルカー・シュレンドルフ)を見る。ナチスが占領していたパリから撤退する前に、オペラ座、ルーブル、エッフェル塔、駅や橋などを含む、有名建築を爆破せよというヒトラーの命令が出された。そこで、これを止めさせるべく、ホテルにいるドイツの将軍のもとにスウェーデンの総領事が訪れた。その二人の駆け引きの一夜を描いたものである。舞台となるホテルにも、ナポレオンの歴史的なエピソードが付随していたように、建築や都市は記憶を集積する空間の器だ。しかも、二人の会話は、まちは誰のものか、という問いかけをはらむ都市論にもなる。幸い、パリは破壊されずに、われわれが花の都を享受しているように、未来に生きているわれわれのものでもある。ところで、中東の人質事件を受けた日本の立ち振る舞いに、果たしてこのインテリジェンスはあったのだろうか?

2014/02/03(火)(五十嵐太郎)

大谷幸夫《千葉市美術館・中央区役所》ほか

[千葉県]

ダン・グレアム展以来だから、12年ぶりくらいに大谷幸夫の設計による《千葉市美術館・中央区役所》(1994)を訪れた。完成当初、旧川崎銀行千葉支店(1927)をまるごと、入れ子状に包みながら、近代建築を保存するダイナミックな鞘堂形式の空間が話題だったが、いま見ると、装飾的なポストモダンの残り香をあちこちに見出すことができる。流行が変わると、渦中の時代だと見えないものが、後から見えてくるのは興味深い。続いて、《千葉県立中央図書館》(1968)と、段差のある地形をいかしてホールをおさめる《千葉県文化会館》(1967)を見学した。いずれも大高正人のデザインである。特に前者は力強いフレームが空間を規定し、メタボリズム的な延長可能性も想像させるだろう。ともあれ、1960年代の建築が、いまも現役で使われており、好感がもてる。今後も長く残ってほしい建築だ。

写真:上=大谷幸夫《千葉市美術館・中央区役所》 中=大高正人《千葉県立中央図書館》 下=大高正人《千葉県文化会館》

2014/02/07(土)(五十嵐太郎)

天空からの招待状

台湾の空撮シーンだけで制作された映画『天空からの招待状』(監督:チー・ポーリン)を見る。製作総指揮は、ホウ・シャオシェン。険しい自然から農業、そして都市へ。空からしか認識できない驚くべきかたちが次々にあらわれるのが楽しい。映画館ならではの視覚の体験を味わえる。建築学生も、卒計の傾向と対策みたいな流行のデザイン以外の形を見てほしい。ただし、映画は途中から、環境問題に焦点をあてるようになり、語りがやたら説教ぽくなるのが残念だった。最後まで、映像の美だけでも十分にいけた作品だと思うのだが。

2014/02/08(日)(五十嵐太郎)

陸にあがった海軍─連合艦隊司令部日吉地下壕からみた太平洋戦争─

会期:2015/01/31~2015/03/22

神奈川県立歴史博物館[神奈川県]

神奈川県立歴史博物館の「陸にあがった海軍」展は、興味深い視点だった。そもそも、谷口吉郎の建築がある慶應の日吉校舎と周辺に、戦争の末期に追いつめられた海軍の地下壕がつくられていたことを知らなかった。こういうレアなテーマをネタにした卒計を見たい。展示は、地下壕のアミダクジ型(!)のプランに力点を置いていなかったが、このプランを考察すると興味深い。大空間をつくれないから、通路がすべてオフィスになる。また、使い方が決まる前に掘り始めたために、中心性を設けず、さまざまに伸ばすことの可能性などを想定して、地上ではありえないアミダクジ型の平面になったのではないか。

2014/02/08(日)(五十嵐太郎)

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アイサ・ホクソン「Death of the Pole Dancer」

会期:2015/02/08~2015/02/09

KAAT神奈川芸術劇場 小スタジオ[神奈川県]

TPAM/国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2015は、ほとんどスケジュールが合わず、アイサ・ホクソンの「Death of the Pole Dancer」のみ鑑賞することができた。約15分かけて、ポールをじっくりと組立て、垂直に立てる。そしてしばらく柱を憎むかのように激しく身体を叩きつけてから、上下回転しながらポール・ダンスを踊るのが、20分ほどのパフォーマンスだった。最後は尽き果てたように床に倒れ込み、そのままずっと動かなくなる。結局、立ち上がらないまま、終演となる終わり方が印象的だった。

2014/02/08(日)(五十嵐太郎)

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