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2015年06月15日号のレビュー/プレビュー

中野成樹+フランケンズ「ラブコメ改」

会期:2015/04/29~2015/05/03

シアターノルン[東京都]

蒲田のシアターノルンにて、中野成樹+フランケンズ「ラブコメ改」を観劇する。彼が得意の誤意訳によって、モリエールの作品「女房学校」の本質を残しつつ、現代の悲喜劇に変えたものだ。俳優陣がつくり出す独特の間もよく、大変に面白い。登場人物のなかで、女性と金が交換されていくプロットは強力である。また、大きなベッドを舞台とする舞台美術も興味深い。

2015/05/02(土)(五十嵐太郎)

DUBHOUSE:物質試行52/映画としての音楽

会期:2015/04/25~2015/05/08

K's cinema[東京都]

新宿 K's cinemaにて、七里圭の作品『DUBHOUSE:物質試行52』と『映画としての音楽』を見る。前者は鈴木了二との共同監督であり、DUBの記録映画でもある。特に作品の前半は、ほぼ真っ黒な闇の画面が続き、音だけが響く、強烈な体験だった。こうなると、自分が鑑賞している場そのものの音響や空間に対して鋭敏になる。後者は映画史をたどりながら、やはり音の圧倒的な存在感で迫ってくる。これはただ見る映像ではなく、モノとしての映画ではないだろうか。

2015/05/02(土)(五十嵐太郎)

ボッティチェリとルネサンス

会期:2015/03/21~2015/06/28

Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]

渋谷のBunkamuraザ・ミュージアム「ボッティチェリとルネサンス」展を見る。ウフィツィ美術館などから集めた作品を紹介したものだ。文句なく美しいものから、バランスや表情が雑なものまで、絵画のクオリティのばらつきが大きい。が、逆に同時代におけるそうした違いが比較できて興味深い。時代順に追っていくと、女性=ヴィーナスの顔もだんだんキャラ化している。

2015/05/03(日)(五十嵐太郎)

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寺山歌劇★くるみ割り人形

会期:2015/05/02~2015/05/05

座・高円寺2[東京都]

楽塾「寺山歌劇★くるみ割り人形」@座・高円寺で見る。ホフマンの物語が、にぎやかなアングラ・寺山ワールドになっている。確かに力作だと思うが、同じく古典的な作品を素材とした蜷川によるシェイクスピアや、ナカフラによるモリエールでは感じなかった現代とのズレが最後まで気になった。くるみ割り人形では、高齢になった俳優たちが若々しく熱演していたが、無理をしている感もあり、むしろその老いた身体性を生かす演出はできないだろうか。

2015/05/03(日)(五十嵐太郎)

第33回 明日をひらく絵画 上野の森美術館大賞展

会期:2015/04/29~2015/05/10

上野の森美術館[東京都]

602人、854点の応募から選ばれた136点の展示。会場をざっと見回して異様に感じるのは、まず作品が過密なこと。入選作品数は昨年の半分に絞ったものの、その分これまで前後2回に分けてた会期を1回に収めたため、密度は変わらない。それに、過半数の作品が正方形のS100号であるのも異様だ。サイズは100号までという制限があるのだろう。Sサイズだと長辺×長辺なので同じ100号でも面積がいちばん広くとれるってわけだ。もうひとつ、すべてに額縁がついてること。これも条件に含まれているのかもしれないが、同じ美術館でやってる「VOCA展」はほとんど額縁なしなので、おのずと絵の目指す方向性は違ってくる。はずなのに、両者の差異は縮まってる気がする。良し悪しではなく、前後左右の違いがなくなり、似たり寄ったり化しているのだ。もっと保守本流に徹するとか、立場をはっきりさせてほしいなあ。

2015/05/04(月)(村田真)

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