artscapeレビュー

2015年07月15日号のレビュー/プレビュー

鈴木崇「Form-Philia」

会期:2015/05/29~2015/07/12

IMAギャラリー[東京都]

これはどこから説明していけばいいのか。微視的レベルからいえば、さまざまな色とかたちのスポンジを組み合わせた写真で、背景は真っ黒。それが縦10センチほどの小さなパネル仕立てになっていて、長さ10メートルほどの壁に300点近く並んでいる。個々のイメージは構成主義的でありながらカワイイし、小さな箱のような1点1点の作品もフェティッシュな欲望を刺激し、全体のインスタレーションもミニマルで美しい。3段階に楽しめる作品だ。その横には建築や都市風景を横につなげた写真や、ペットボトルの影のような写真もあって、3人展かと思ったら個展だった。建築的思考も備えた写真家だ。

2015/06/17(水)(村田真)

富山大学芸術文化学部 貴志雅樹・横山天心研究室《新高岡駅高架下利便施設》

[富山県]

竣工:2015年

開通してから初の北陸新幹線に乗る。富山駅は整備され、雨に濡れず、すぐライトレールに乗り継げる明快な交通システムを強調していたが、なるほど、これは便利である。多くの観光客で賑わう、高岡の瑞龍寺を見学する。印象的な回廊を巧みに配しながら、多くの要素=棟が統合された、見事な伽藍配置だった。外観は禅宗様、和様を使い、中央の仏殿の内部はダイナミックな構造である。新高岡駅の高架下の空間は、横山天心が設計し、土木スケールを建築スケールに調整するデザインだった。

写真:上=《瑞龍寺》、下=新高岡駅の高架下

2015/06/17(水)(五十嵐太郎)

荒木経惟「Birthday 75齢 2015.5.25 写狂老人A 鏡の中のKaoRi」

会期:2015/05/25~2015/06/20

タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム[東京都]

恒例の荒木経惟のタカ・イシイギャラリーでの「Birthday」写真展である。今年は例年に増して意欲作が並んでいた。
展示作品は、室内でオブジェを中心に撮影したカラー作品53点と、日付入りコンパクトカメラによるモノクロームの「私日記」119点。鏡文字のタイトルにあわせるように、プリントもすべて左右逆になっている。つまり「鏡の中」の世界を撮影したということだが、実際にはプリントする時にネガを「裏焼き」しただけのようだ。とはいえ、この単純な仕掛けによって、虚実が逆転して奇妙な浮遊感を感じさせる反世界に引き込まれるような気がしてくる。モノクローム作品には、さらに工夫が凝らされていて、画像は全部反転しているのに、日付だけが正像、しかもすべて「25 2 21’」になっている。この日付をどうやっていれたのかが、どうもよくわからない。「’12 2 52」と入れて撮影したのかと思ったのだが、「2」を鏡文字で入力するやり方がわからないのだ。小さな思いつきを積み重ねていきながら、見る者をいつの間にか魔術的な世界に引き込んでいく荒木の手腕が、いつも以上に絶妙に発揮された作品群といえるのではないだろうか。昨年以来の創作意欲の高まりが、まだ続いているということだろう。
なお、展示にあわせて『アサヒカメラ』6月号が荒木特集を組んでいる。また、タカ・イシイギャラリーから同名の写真集も刊行された。352ページ、173点を収録。小ぶりなソフトカバー写真集だが、町口覚のデザインワークが冴え渡っている。
(タイトルは鏡文字)

2015/06/18(木)(飯沢耕太郎)

マイケル・シェンカーズ・テンプル・オブ・ロック

会期:2015/06/17~2015/06/19

中野サンプラザ[東京都]

マイケルはえらいニコニコしながら、観客とのコミュニケーションを楽しみながら演奏し、UFOやスコーピオンズ時代の曲が多かった。なんといっても、見せ場は、MSGとして元メンバーのグラハム・ボネットとの競演を二曲したこと。昔はマイケルの早弾きや泣きのチョーキングを聴いていたが、左手の握力が強そうなフレーズ、正確な音程とリズムが印象に残る。

2015/06/18(木)(五十嵐太郎)

アンブロークン

エミレーツ航空で、アンジェリーナ・ジョリー監督『アンブロークン』を見る。不屈のイタリア男のオリンピック(ドイツや日本との関わりにも触れる)、1カ月半の過酷な海上漂流サバイバル生活、そして日本軍の虐待が、物語の骨格となっている。が、これで反日映画とされ、公開中止か? という状況に改めて驚く。ただ、映画作品としては必ずしも傑作でない。

2015/06/18(木)(五十嵐太郎)

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