artscapeレビュー

2016年01月15日号のレビュー/プレビュー

センシュアス・ストラクチュアズ──官能的な構造のために

会期:2015/12/09~2015/12/20

東京都美術館ギャラリーA[東京都]

都美の企画公募で選ばれた4人のグループ展。メンバーは市川裕司、酒井祐二、佐藤裕一郎、篠崎英介で、うち3人は日本画、ひとりは建築という構成。これはけっこうスゴイ。なにがスゴイかって、4人であの巨大な展示空間を過不足なく埋めていること。作品点数でいえば(数え方にもよるが)わずか8点しかないのにだ。いちばんでかいのは林立する樹木を描いた佐藤の《森眠る》で、高さ4.6メートル、全長なんと18.2メートルある。原寸大の静物画や人物画なら珍しくないが、これは前代未聞の原寸大の風景画。裏を見ると角材を組んでしっかり固定している。ほかに、十字形に角材を組んだり、アルミ箔を貼った数百個ものリンゴ型の球体を床に散りばめたり、高さ5メートルの墨絵を2点壁に展示したり、悪いけど大きさにばかり感心してしまった。

2015/12/11(金)(村田真)

西野壮平「Action Drawing: Diorama Maps and New Work」

会期:2015/11/26~2016/01/17

IMA CONCEPT STORE[東京都]

西野壮平は2003年以来、世界各地の都市を35ミリのモノクロフィルムで撮影し、それらをキャンバス上にコラージュの手法で貼り合わせていく「Diorama Map」のシリーズを発表し続けてきた。今回の個展では、その中から2004年と2014年に制作された「東京」の両作品、完成したばかりの「ヨハネスブルグ」が展示されていた。そのほかに、その日の移動の軌跡を身につけていたGPS装置の画像を、フォトグラムの手法でなぞって描き出した、新作の「Day Drawing」のシリーズが発表され、「ギャラリー内をアトリエとして滞在し、この秋ハバナで撮影したばかりの作品を公開制作する」という盛りだくさんの内容になっている。西野の仕事の幅が大きく広がり始めていることのあらわれといえるだろう。
これまで続けてきた「Diorama Map」は、たしかに質的にも量的にもめざましい印象を与える作品だ。ただ、この作品の魅力が、西野が実際にカメラ片手に都市の街路を歩き回り、数万枚に及ぶという写真を撮影・プリントして、鋏と糊で貼り付けていくという、身体的な行為の積み上げに支えられてきたことは否定できない。ということは、オリジナルのコラージュ作品にこそ圧倒的なパワーが宿っているはずで、今回のようにそれを「LIGHT JET PRINT」で複写してプリントしたものではその迫力は薄らいでしまうのではないだろうか。それだけでなく、今回はさらに2014年版の「東京」を素材として、それを10×16センチの720枚のプリントに分割し、参加者がそこからパソコンを使って10枚を選んで販売していた。そうなると、さらに身体性が希薄になっていくわけで、このような試みは諸刃の剣のように思えてならない。
なお展覧会にあわせて、西野にとっては初めての写真集となる『東京』(アマナ)も刊行されている。やはり分割画面をページごとに印刷したコンセプト・ブックで、オブジェとしての面白味はあるが、やはり西野の本来の作業とは微妙にずれているように感じた。

2015/12/12(土)(飯沢耕太郎)

ニッポンのニッポン──ヘルムート・シュミット

会期:2015/11/09~2015/12/22

京都dddギャラリー[京都府]

日本の日本らしさはどこにあるのだろう? その造形の源流はどこに? オーストリアに生まれ、スイスでタイポグラフィを学んだデザイナー、ヘルムート・シュミット氏は展示を通して私たちに問いかける。青年時代の彼の真摯なまなざしを通して見た「日本の美」をめぐる断章が、静謐でいて簡素な言葉と陰影に富むモノクロ写真のインスタレーションで提示される。シュミット氏が取り上げる対象は、畳・櫛・茶筅・玩具・扇・徳利と杯・竹の花生けなど日常の道具から、柳宗理や横尾忠則のデザインまで幅広い。西洋のデザイナーにかかると、なんの変哲のない「畳」は、前衛的なモンドリアンの抽象絵画に類比されるような美の奥行をもって発見され、「龍安寺」の五群の石で構成される石庭は禅の世界観を表象する独自のグラフィックデザインに変容するのである。会場内を交錯するイメージとテクストを巡り歩くと、その奥には実際のモノが展覧されてもいた。通覧後、シュミット氏とともに日本を再発見する旅に出た気分を味わえる。[竹内有子]

2015/12/12(土)(SYNK)

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パーセル作曲 オペラ「妖精の女王」

北とぴあ さくらホール[東京都]

会期:2015/12/11、12/13
歌によって物語が推進していく普通のオペラと違い、演劇と楽曲が交互に出現する形式なので新鮮である。しかも観念的な内容の歌詞のとき、物語の進行は止まってしまう。宮城聰の演出だが、シェイクスピアの同じ原作をもとにした演劇、F/T『真夏の夜の夢』において彼が見せた演出と俳優の顔ぶれは、おおむね同じだった。そこに今度はパーセルの古楽を挿入しつつ、指揮者や演奏者ともメタ的に絡む。ただし、目玉のエマ・カークビーの出番は思っていたよりも少ない。

2015/12/13(日)(五十嵐太郎)

建築系ラジオ編「建築系で生きよう。」出版記念トークイベント&パーティー

会期:2015/12/13

loftwork COOOP[東京都]

数年かかって、ようやく刊行された本の出版記念を行なう。これで音声で配信してきた建築系ラジオの活動も活字として記録されることになった。質疑応答のとき、どんな本を読んだらいいですか、という学生の鉄板の質問を受ける。個人的には、効率性で読むよりも、最初はむやみに読まないと、結局は各自に合った本はわからないと思う。おそらく、その学生もどんな音楽を聴いたらいいですか、とあまり人に尋ねないように。

2015/12/13(日)(五十嵐太郎)

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