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2016年02月15日号のレビュー/プレビュー

シカゴ川の両岸 高層建築群

[アメリカ、シカゴ]

冬のシカゴは日没が早いので、早朝に街歩きを行なう。シカゴ川の両岸に並ぶ、近現代の高層建築群は壮観である。国際コンペでモダニズムが敗退し、ゴシック様式が選ばれた《シカゴ・トリビューン》、ミース最後の《IBMビル》、リカルド・ボフィルのポストモダン、コンピュータ時代のぐにゃぐにゃビルの《アクア・タワー》など、景観的な統一性がなくても、時代の層を重ねた都市の姿は素晴らしい。

写真:左上=《シカゴ・トリビューン》、左中・左下=《IBMビル》、右上=ボフィル《Donnelley Building》、右下=《アクア・タワー》

2015/12/29(火)(五十嵐太郎)

イリノイ工科大学

[アメリカ、シカゴ]

三度目のイリノイ工科大学へ。今回は冬休みのために、ミースの建築群、OMAのキャンパスセンター、SOMやヘルムート・ヤーンらによる各施設は軒並み閉鎖していた。ミース最初のアメリカ建築となる研究施設(1943)は、戦時下にI形鋼を使用している。一方、日本は鉄を使う建築の現場を中止しており、これでは戦争に負けるわけだ。均質なデザインの建物が何の施設かわからないというチャールズ・ジェンクスの嫌みを思い出しながら、キャンパスをまわる。メンテナンスがされているからだろうが、特に建築学部棟は60年前に建てられたとは思えないほど、格別に美しい。周囲を映し込むリフレクションも印象的である。ところで、雪景色のキャンパスにシーガルの屋外彫刻があって、遠くから眺めると、ベンチに座る真白な人間は凍死かと思った。

写真:左=上から、ヤーン「イリノイ工科大学」、イリノイ州センター、チャペル、ミース《建築学部棟》 右=イリノイ州センター、ミース《研究施設》、レム・コールハース《マコーミック・トリビューン・キャンパス・センター》、シーガル

2015/12/29(火)(五十嵐太郎)

ミース・ファン・デル・ローエ《レイクショア・ドライブ・アパートメント》

[アメリカ、シカゴ]

竣工:1951年

すぐ隣にやはりミースらがかかわった一見そっくりな二棟の建築もあるのだが、傑作と比較できて興味深い。比例や細部のどこが違うと、ヘンになるかがわかるからだ。またここから彼の弟子が手がけた《レイク・ポイント・タワー》も見える。この建物は、ミースの湾曲するガラス高層のオマージュだった。

写真:左上・左中=ミース《860-880レイクショア・ドライブ・アパートメント》(1951)、右上=《900-910レイクショア・ドライブ・アパートメント》(1956)、右中=《レイク・ポイント・タワー》、《ジョン・ハンコック・タワー》からレイク・ショアの眺め

2015/12/29(火)(五十嵐太郎)

ヨーゼフ・パウル・クライフス《シカゴ現代美術館》ほか

[アメリカ、シカゴ]

竣工:1996年

立方体を反復するパウル・クライフスの《シカゴ現代美術館》へ。開催中のPOP ART DESIGN展は、美術だけではなく、ヴェンチューリ、スミッソン、イームズ、ソットサス、ホラインほかなどの建築デザインも紹介していた。またマーク・リー、ジャワルスカなどの展示は、シカゴ・ビエンナーレ国際建築展との連携企画である。近くのウォーター・タワー・ギャラリーでも、エヴロンを紹介する連携展示だった。

写真:上から=クライフス《シカゴ現代美術館》、《ウォータータワー・ギャラリー》、エヴロン

2015/12/29(火)(五十嵐太郎)

《ハワード・ワシントン図書館》

[アメリカ、シカゴ]

竣工:1991年

粉雪が降ってきたため、これまで外観のみしか見学していなかったポストモダン建築のハワード・ワシントン(初のアフリカ系市長にちなむ)図書館の中に初めて入る。装飾が随所に散りばめられ、内部も強烈なクセがある。8階には、当時話題になった図書館のコンペに提出されたさまざまな案の模型や資料を展示している。それにしても、オペラの楽譜群まで揃えた蔵書は素晴らしい。近くにあるのが、都市のど真ん中にある監獄ビル、《メトロポリタン矯正施設》(1975)だ。確かに開放的な窓はないが、外観からはそう見えない。

写真:左・右上=《ハワード・ワシントン図書館》、右下=《メトロポリタン矯正施設》

2015/12/30(水)(五十嵐太郎)

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