2018年12月01日号
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artscapeレビュー

2016年04月15日号のレビュー/プレビュー

降り落ちるものを 今村遼佑

会期:2016/03/08~2016/03/20

アートスペース虹[京都府]

なんとも詩的なタイトルに、詩的なインスタレーション。「降り落ちるもの」、つまり時間の流れや変容を感じさせる作品が、視覚、音、匂い、手触りを刺激させながら、ゆるやかな連想を描くように配置されている。
白い地に、白や灰色、クリーム色、薄いブルーや黄色の筆致が舞うように散る絵画作品は、雪が雨粒へと変化していく様子を描いたもの。大きな雪片に見える白い塊が落下する絵画は、ハクモクレンの花びらが散る情景を描いている。雪解けと花びらの落下。冬から早春へ。その季節の移り変わりは、沈丁花が植えられた植木鉢と呼応する。白い小さな花が放つ、甘くかぐわしい香り。舞い落ちる雪が感じさせた、張りつめた空気の冷たさが、ゆるやかにほどけていく。
一方、沈丁花の植木鉢には、ミニチュアの街灯が添えられている。街灯の灯る夜の帰宅路、視覚よりもまず匂いで沈丁花に気づいたときの記憶がよみがえる。日常の中で、ふと訪れる情景の変化。別の作品では、ポリバケツの中に置かれたiPhoneの画面に、バケツに張った氷が映っている。突然、小石が投げ込まれ、ひび割れる氷の表面。液晶画面が薄い氷の層と一瞬、重なり合う。もうひとつのiPhoneの画面は、どこかの住宅の窓辺を映し出すが、静止画のように変化しない画面のフレーム外から聴こえる音が、さまざまな情景をかき立てる。車の音、子どもの遊び声、どこかから聴こえる美しいピアノ曲。日常にふと差し込んだ劇的な瞬間は、室内外の生活音にかき消されていく。傍らに吊られたカーテンが、画面の内と外、ギャラリー空間と「ここではないどこか」との境界を、一瞬、曖昧に溶解させる。
季節の変わり目が、肌で感じられながらも明確な境目として区切られないように、今村の作品世界は、部屋の内と外、昼と夜、「いま」と記憶の中の手触り、「ここ」と「どこか」が一瞬混じり合って溶け合うような体験をつくり出す。それは、仕掛けやガジェットを見せながらも、イメージの多重化や現象的なものを扱い、複数の異なる時間の流れをひとつの空間の中に呼び込み、観客の身体と五感をとおして体感させるという点で、人物は不在であっても、ある種の演劇性をたたえていると言えるかもしれない。

2016/03/13(日)(高嶋慈)

見附正康 個展

会期:2016/02/27~2016/04/09

オオタファインアーツ[東京都]

絵つけ大皿5点に蓋つき器1点。大皿は絵柄が見やすいように壁に掛けてある。どれも極細の赤い線で幾何学的パターンを描いているが、よく見ると和洋やアラベスクなど伝統的な文様だったりする。5点のうち3点は図柄が皿の中心から放射状に広がっているが、1点は図柄の中心と皿の中心がズレ、もう1点は中心のない四角いパターンになっている。いずれにせよ、よくこんな細かいの描けたなと感心する以上の感興はそそられない。

2016/03/15(火)(村田真)

MIYAKE ISSEY展:三宅一生の仕事

会期:2016/03/16~2016/06/13

国立新美術館[東京都]

内覧会の前に安藤忠雄、ジャック・ラングらそうそうたる来賓のあいさつが続き、ようやく終わったと思ったら、招待客が多すぎて入るまで20分くらいかかった。美術展には珍しいことで、一生さんの人気と底力を見せつけられる。ちなみに女性の招待客はやはりプリーツ姿が目立ち、華やか。でもね、入ったらわかるけど、展示品と見比べられちゃいますよ。さて、最初のギャラリーはランウェイを思わせる細長い空間で、段ボール製のマネキンに初期の70年代の実験的な(いつも実験的だが)ドレスやジャンプスーツなどが一列に並べられている。次のギャラリーでは、アクリル製のマネキンに80年代のプラスチックボディやワイヤーボディが展示され、ぐるっと回ると仕切りのない広大なギャラリーに出る構成。ここではさまざまなパターンの「プリーツ」シリーズをはじめ、「一枚の布」から発想された「A-POC」シリーズ、折り畳まれた布から服が立ち上がる「132 5. ISSEY MIYAKE」シリーズなどが紹介されている。会場の一画にプレス機を持ち込んで、グラフィックデザイナー田中一光とコラボしたプリーツの製作過程も見られる仕掛け。三宅一生の根本的な問いは、「三次元である身体を二次元の布でいかにして包むか」というもの。これは「三次元の世界を二次元の平面にいかにして表わすか」という絵画の根本問題にも通じ、ここから「一枚の布」というコンセプトが導き出される。そこに(身体の)動き=時間を加えることで、一生ならではのユニークな服が展開されていくのだ。服を「一枚の布」に還元し、服の概念を問い直し続けるという意味で、三宅一生の服は最良のミニマル・アートであり、コンセプチュアル・アートでもあるだろう。

2016/03/15(火)(村田真)

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浜田涼展

会期:2016/03/14~2016/03/19

藍画廊[東京都]

昔よりボケたなあ、いや作品の話。ボケてよくなったと思う。目がボケたのかな、いや頭がボケたかも。

2016/03/15(火)(村田真)

エッケ・ホモ 現代の人間像を見よ

会期:2016/01/16~2016/03/21

国立国際美術館[大阪府]

国立国際美術館の「エッケ・ホモ 現代の人間像を見よ」展は、所蔵作品を中心に第二次世界大戦後の人間を描いた作品が集結する。通して見ると、やはりアンディ・ウォーホルやフランシス・ベーコンの作品は強力だった。ほかに印象に残ったのは、小谷元彦の映像作品に、片山真里が登場していたこと。またブライス・ボーネンの顔が不気味にぶれる写真は、後のJホラーのセンスに先駆けるものがあった。

2016/03/15(火)(五十嵐太郎)

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