2018年07月01日号
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artscapeレビュー

2016年06月15日号のレビュー/プレビュー

光の巡回展「Nightscape 2050─未来の街・光・人」

会期:2016/05/14~2016/06/10

TEMPORARY CONTEMPORARY[東京都]

LPAの「Nightscape 2050」展は、ベルリン、シンガポール、香港と巡回し、各地で内容が変化・成長している。単なるLPAの作品紹介ではなく、三部構成の映像、子どもとのワークショップなどを通じて、世界の都市の光環境を考える展示である。そして最後のパートは、東京を舞台に、地下空間、隅田川、コンビニ、防災の照明の未来を独自に提案する。ちなみに、月島の会場テンポラリーコンテンポラリーは昔、筆者がよく通っていたところで、リノベーション・スタディーズの連続シンポジウムを企画し、2冊の本を刊行したほか、キリンアートプロジェクト2005で石上純也のテーブルを世界初披露した場所でもある(その設営のために、現場で徹夜するはめになったが)。

2016/05/13(金)(五十嵐太郎)

福山えみ「岸を見ていた」

会期:2016/05/11~2016/06/18

POETIC SCAPE[東京都]

福山えみの同会場での個展は、2012年以来4年ぶりになる。前回は、旧作のヨーロッパのシリーズを出していたのだが、今回は新作の展示だった。といっても、作品の成り立ち、画面の構成の仕方にそれほどの大きな違いはない。
6×7判のカメラで折りに触れてシャッターを切る。被写体の幅はかなり広いが、特徴的なのは画面の手前にフェンスや建物の一部、植え込みなどがぼんやり写っていて、それら越しに奥を見渡すような写真が多いこと。撮り手がどこにいるのかというポジショニングが、手前の写り込みによって強調され、何かに視線を向けているという出来事の意味(といってもごく日長的なものだが)が強調される。もうひとつは、歩行中、あるいは移動中の車や電車から撮ったと思しき写真がけっこう多くあることで、一所に留まることなく通過していく視点のあり方が目についてくる。11×14インチサイズに引き伸されたモノクローム・プリントを含めて、その視覚形成と画像定着のシステムは、ほぼ固定されてはいるが、そのなかで独自の進化を遂げ、洗練の度を増してきている。
そのこと自体に問題はないのだが、このまま続けていけばいいのかといえば、やや疑問が残る。ひとつのシステムに依拠して作品をつくり続けるのは諸刃の剣で、せっかくの写真家としての優れた資質を、充分に発揮しきれていないもどかしさも感じる。昨年体調を崩して、しばらく写真が撮れなかったとそうだが、従来の写真制作のシステムをもう一度見直して、新たなチャレンジをするいいチャンスではないだろうか。スナップショットの偶発性の呪縛から、いったん自由になるのもいいと思う。なお、展覧会にあわせて、同名の写真集(自費出版)が刊行されている。

2016/05/14(土)(飯沢耕太郎)

没後50年“日本のルソー” 横井弘三の世界展

会期:2016/04/17~2016/06/05

練馬区立美術館[東京都]

目黒区美でやってる 島野十郎とほぼ同時代に生きた、でも画風は 島とは正反対の画家、横井弘三の回顧展。高島と同じく横井も絵は独学だが、華々しいデビューを飾ったのは横井のほうだ。初出品した二科展に入選し、若手の有望画家に贈られる樗牛賞を受賞、翌年には二科賞を受賞するなど快進撃。受賞作は残っていないが、その絵は「日本のルソー」と呼ばれるようにプリミティブ。在野の二科展は文展(文部省主催)との差異化を図るため、素人らしい絵も積極的に評価したという。やがて二科会から離れて前衛美術団体を立ち上げたりしたが、第2次大戦後は故郷の長野に居を構え、ひとりで制作に打ち込む。板を横につないで大画面にしたり、板の表面を焼いて効果を出したりいろいろ試みたが、絵は終始一貫してプリミティブだった。まあ 島のようなねじれた魅力はないけれど、埋もれたままでいい画家ではない。区美も捨てたもんではない。

2016/05/14(土)(村田真)

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Mrs. Yuki 足跡

会期:2016/05/13~2016/06/12

駒込倉庫[東京都]

Mrs.Yukiは平嶺林太郎と大久保具視によるユニットで、ヘビを使った作品を展開している。今回はコンクリートのような凝固する流動体にヘビを入れ、のたうち回った軌跡を定着させたレリーフ作品。ヘビはいってみれば手足のない1本の線なので、砂紋や流水跡のような比較的美しい軌跡が残る。でも流動体の硬さを調整したり、ヘビに思ったような動きをしてもらうのが難しいそうだ。まあいろんなアートがあるもんだ。

2016/05/14(土)(村田真)

高橋一平《Casa O》

[東京都]

竣工:2014年

高橋一平による小さな家のリノベーション、《Casa O》を見学する。木密地域の近接性ゆえに、隣家の古びた外壁が、室内の色と共鳴しつつ内壁のように見え、その隙間の上部から光がさす。いわゆるコミュニケーションとしての窓とは違う、拡張された壁をつくる大きな窓である。また家が小さいために、手前の開口から奥の開口が近く、正面のアプローチから家の向こうの風景までが通常とは違うスケール感をもち、家をすり抜けていくかのようだ。そして異界の2フロアを切断しつつ、曲がった階段が両者をつなぐ。

2016/05/14(土)(五十嵐太郎)

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