2018年04月15日号
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artscapeレビュー

2016年08月15日号のレビュー/プレビュー

enra単独公演PROXIMA仙台公演

会期:2016/07/10

電力ホール[宮城県]

各メンバーがそれぞれに専門をもち、コマ回し、バレエ、新体操、武術、パントマイムなどを担当し、背後のCG映像と連動しながら、複合的なダンスを行なう。エンターテイメントとしては十分楽しめるが、最先端ではない(先端風だけど)。あまりにも内容が断片化されすぎていることや、大きい舞台であっても、結局は彼らの動きが小さいスクリーンに縛られすぎていることが気になった。

2016/07/10(日)(五十嵐太郎)

FAKE

森達也のドキュメンタリー映画『FAKE』を見る。悪者にされた佐村河内の側から社会の反応を見ることは、オウム真理教を題材にした『A』と同様だが、この作品は夫婦の関係に焦点をあてつつ、かといって彼らが正しいと主張するわけでもなく、最後まで何が真実で、何を信じてよいかを宙吊りにして問いかける。そして音楽が本当に好きなの? という森の言葉に応じて、佐村河内が見せる衝撃の終盤のシーンをどう解釈すべきかが突きつけられる。単純に白黒つけて、面白おかしくすることだけを優先する日本メディアのまずさを改めて認識する。

2016/07/10(日)(五十嵐太郎)

よみがえれ! シーボルトの日本博物館

会期:2016/07/12~2016/09/04

国立歴史民俗博物館[千葉県]

江戸後期、2度にわたり来日し、長崎・出島のオランダ商館を拠点に日本の自然や文化を調査したドイツ人の医師シーボルト。その彼がヨーロッパに持ち帰った厖大な資料をオランダ、ドイツの各都市で展示し、西洋で初の日本紹介となった。最終的にはミュンヘンに日本博物館の建設を構想したが、果たせずに死去。同展はこれらのコレクションの一部を公開し、シーボルトが思い描いた日本像を紹介するもの。まず初めに出会うのが、胸にたくさん勲章をつけた威厳たっぷりの《シーボルト肖像》。油彩で写実的に描かれており、その後に出てくる日本人が描いたマンガみたいな《シーボルト肖像》と比べると、19世紀の日本と西洋の文化の落差に唖然とさせられる。ほかに、出島で一緒に暮らした日本人女性タキや、ふたりのあいだに生まれた娘イネ(のちに日本初の西洋医学を修得した女性医師となる)の肖像画、帰国後ふたりに宛てた手紙など。さらに、1度目の帰国後に出版した『日本』『日本植物誌』『日本動物誌』の3部作、1度目の滞在で国外退去の原因となった日本地図など。ここまでがプロローグで、本題の「日本博物館」はここからなのだが、実のところこの先は歴史博物館や民俗資料館に行けばいくらでも見られるような日用品、工芸品が並んでいて、ちょっと退屈。そりゃ19世紀のヨーロッパでは珍しがられたかもしれないけど、当時の日本人にとってはありふれたものだからね。でも洋風画を得意とする長崎の絵師、川原慶賀に描かせた《人物画帳》がおもしろい。町人、花魁、大工から盗人まで109人の日本人がフルカラーの全身像で描かれているのだ。これは必見。

2016/07/11(月)(村田真)

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安田佐智種「VOID」

会期:2016/07/04~2016/07/30

BASE GALLERY[東京都]

現在ニューヨーク在住の安田佐智種は、2012年にBASE GALLERYで開催した個展で、今回も出品された「Aerial」のシリーズを展示したことがある。その時も、高所から見下ろしたビル群をデジタル処理してつなぎ合わせた画像の、めくるめくような視覚的効果に驚嘆したのだが、それから4年が過ぎて同シリーズはさらに進化しつつある。
前回は東京、ニューヨーク、神戸で撮影された作品だったが、今回はさらにケルン、長崎、パリの眺めが加わった。高層ビルが針を植えたように林立する都市の一角を、ただ単に切り取ったというだけではなく、より地勢学的に都市全体を俯瞰する視点があらわれてきている。また、撮影の足場になる地点が「空白(VOID)」のスペースとして表示されるのが、今回の展示のタイトルの由来なのだが、そのポイントの選び方(例えば東京スカイツリーやエッフェル塔)にも配慮が行き届いている。
さらに今回の展示で重要なのは、「Aerial」のシリーズのほかに、東日本大震災の被災地で撮影された「Michi」と題する作品も出品されていることだろう。福島県南相馬市の沿岸部の、津波で流失した家屋の土台部分を撮影した写真画像をつなぎ合わせた120×420センチの大画面の作品は、家屋自体の撤去作業が急速に進むなかで、震災の記憶を保持していくためのモニュメントとしての意味を強めつつある。2013年から制作が開始され、「今後も制作続行予定」というこの作品がどんな風に姿を変えていくのか、また「Aerial」のシリーズと、どのように関連しながら展開していくのかが楽しみだ。

2016/07/11(月)(飯沢耕太郎)

太陽

入江悠監督の映画『太陽』を見る。イキウメによる同名の演劇とおおむね同じプロットだが、入江版の方がオラアこんな村イヤだ! 感が強い。すなわち、旧人類であるキュリオ側の少年が中心になっている。なお、地方の問題は、入江がこれまでの作品でも描いたモチーフであり、それが今回はSF仕立てに変換されている。またイキウメ版の方が、新人類ノクス側も昼の旧人類の行動や考えに触れて、合理的な夜の世界に疑問を抱く。そしてラストは入江版の方が救いというか、共生への希望を感じさせる。

2016/07/12(火)(五十嵐太郎)

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