artscapeレビュー

2016年10月15日号のレビュー/プレビュー

喫茶「丘」

[愛知県]

岡崎へ。喫茶「丘」にて、モーニングを食べる。在野の大竹伸朗とでも言うべき100均ショップの素材による目もくらむ内装と二重の音源が重なる空間は、ヘタなアート作品よりもはるかにインパクトがある。斜め前のMasayoshi Suzuki Galleryにて、鈴木正義氏から岡崎の状況を詳しくうかがう。前回のあいちトリエンナーレ2013に参加した藤村龍至が岡崎に出入りしていることもあり、今回のトリエンナーレ期間中も、ギャラリー前のEurekaの移動する家具、403architectureによる松本町の木造アーケードの櫓、studio velocityの川辺の作品など、若手建築家のプロジェクトがいくつか動いている。またリノベーション・スクールを通じて、岡崎のあちこちで再生された物件を鈴木氏に案内してもらう。前回のトリエンナーレ会場も解体されずに、活用されている事例があって嬉しい。狭い路地が蛇行する六供町エリアを探索する。「岡崎まち育てセンター・りた」の天野氏から、橋と川辺の活用について話をうかがう。岡崎はシビコの展示面積が減ったが、むしろ前回のトリエンナーレ以降、いま街中で実際に進行しつつある建築や都市のプロジェクトやリノベーションが熱い。

写真:左=喫茶「丘」 右=上から、移動する家具、岡崎まち育てセンター・りた

2016/09/25(日)(五十嵐太郎)

Eureka《Dragon Court Village》

[愛知県]

竣工:2013年

Eurekaが設計した住宅地の《Dragon Court Village》へ。思っていたよりも大きく、7軒の賃貸集合住宅が中庭やデッキを通じて立体的に絡み合う。アジアの街並的空間のスケール感と地方都市の車社会のシステムを接続しつつ、コミュニティの生き生きとしたアクティビティを生む。訪れた日がちょうど月イチのマルシェで、近隣住民が見事に使い倒す、驚くべき状況に立会うことができた。

2016/09/25(日)(五十嵐太郎)

あいちトリエンナーレ2016 ラウラ・リマ《フーガ》ほか

会期:2016/08/11~2016/10/23

水上ビル[愛知県]

2周目の豊橋会場へ。前回は見る時間を確保できなかったラウラ・リマの鳥小屋と開発ビルを見る。前者は15分ほど行列に並んで入ると、ミニ川俣正的なインスタレーションが続き、4階建ての屋上まで空間を体験できるのが楽しい。ヒッチコックの映画『鳥』くらい、無数の鳥がいるかと思いきや、さすがにそうではなかった。後者は想像以上に広く使い、展示作品も粒ぞろい。以前、筆者が関わったキリンアートアワードで選ばれた佐々木愛も大作を制作し、がんばっていた。

写真:左=ラウラ・リマの鳥小屋 右=上から、《開発ビル》、佐々木愛

2016/09/25(日)(五十嵐太郎)

ヘリ・ドノ展「HERIDONOLOGY」

会期:2016/09/12~2016/10/22

ミヅマアートギャラリー[東京都]

ヘリ・ドノはインドネシアを代表するアーティスト。日本で東南アジアの現代美術が話題になり始めた90年代初頭から、インドネシアの伝統的な影絵芝居ワヤン・クリを現代風にアレンジする作家として名前を聞いていた。なにしろアピチャッポン・ウィーラセタクンとは違って名前が覚えやすいからね。今回は絵画と動く彫刻の発表だが、伝統的な物語を描いたプリミティブな絵画は、顔がふたつあったり、目が3つも4つもあったり、鼻や舌の先に顔がついてたりする妖怪どもを勢いのある筆致で描いている。さすが腕達者、絵がうまいので驚いた。

2016/09/26(月)(村田真)

銭湯絵師 丸山清人個展

会期:2016/09/22~2016/10/02

ギャラリービブリオ[東京都]

いまや風前の灯の銭湯のペンキ絵。大学を出て銭湯絵師の下に弟子入りした人もいるにはいるが、銭湯そのものが絶滅寸前だから生き残り策を考えなければならない。希望者の風呂場に赴いて描く出張ペインティングというテもあるが、より現実的なのはペンキ絵を縮小して商品として売ることだ。国立のギャラリービブリオは1軒屋の畳部屋を改装したもので、現役最年長の丸山清人がボードに油性ペンキで描いた富士山の絵を30点余り並べている。奥には大作が2点あって、1点は昨日ライブペインティングで描いたものだそうだ。30×40センチほどのサイズが1点18,000円で、見たところザッと半数が売れている。悪くないではないか。

2016/09/26(月)(村田真)

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