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2016年11月15日号のレビュー/プレビュー

アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち

会期:2016/10/22~2017/01/15

国立国際美術館[大阪府]

新国立美術館での展示を思い出しながら、2度目の鑑賞である。イタリアのルネサンス絵画は特に色彩が美しい。目玉のティツィアーノの絵画《受胎告知》の両側に、古典主義風の柱を展示デザインとして入れているが、わりと細部までよくできているもののなんかヘンだ。教会での展示写真と比較すると、やはりイオニア式オーダーの渦巻きを省略していた。古典主義建築の文法にとっては、一番肝心な部分なのだが。

2016/10/29(土)(五十嵐太郎)

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THE PLAY since 1967 まだ見ぬ流れの彼方へ

会期:2016/10/22~2017/01/15

国立国際美術館[大阪府]

国立国際で同時開催の「The play since 1967」展がめっぽう面白い。僕の生年に始まった関西を拠点とする前衛芸術集団ザ・プレイは、残るモノをつくるのではなく、体験の場や状況を生み出す。いわばイベント参加型の地域アートでもあるが、行政の芸術祭という縛りがなく、自主的に遂行しているので、結構やんちゃだ。イベント型アートの資料を考える国立国際のシンポジウムがちょうど開催されており、THE PLAY展の企画にかかわった橋本梓による趣旨説明と平井章一による具体やグループ「位」に関する報告までを聴講した。位の「芸術」を疑う非人称芸術も興味深い試みだ。なお、現物がない彼らの回顧展示の難しさは、建築展にも通じる問題だ。

2016/10/29(土)(五十嵐太郎)

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Under 35 Architects exhibition 2016 記念シンポジウムII

大阪駅中央北口前 うめきたシップホール[大阪府]

毎年秋の恒例になったU-35建築展@シップホール。今回は五十嵐淳が公募から選んでいるが、いつもとは違い、実施作のみではなく、プロジェクト段階の建築も入っているのが特徴だ。川嶋洋平は、道路に線を引く修士設計から、リニアな空間単位を組み合わせた集合住宅までを紹介する。小引寛也+石川典貴は、土木、公共への視野を打ち出しつつ、石巻の石の祈念堂を展示する。酒井亮憲はイギリスから輸入した椅子とその配置、床パターンから教会のあり方を考える。竹鼻良文は幾何学的な造形によって他分野との交流を積極的に展開しながら、同時に街づくりなどさまざまな活動に取り組む。前嶋章太郎は、ぶどう畑の原風景を抱きつつ、グリッドに基づく、ポリカーボネイトに囲まれた軽やかな野菜畑の倉庫や住宅を提示する。松本光索は、3カ月住み込みながらの民家リノベのギャラリーを1/1スケールで切り取りながら展示を行なう。高池葉子は準備できない状況となったらしく、残念ながら欠席だった。U-35の記念シンポジウムでは、前半はまず、伊東豊雄のレクチャーが行なわれ、2勝4敗のコンペ事例を紹介する。続いて出展者がプレゼンを行ない、後半は討議となった。伊東は建築が内向せず、社会に開き、接続することで次世代の建築を見せて欲しいとメッセージを送る。そして、伊東賞は、ヘンに力まない、さわやかな畑の倉庫の前嶋に贈られた。

写真:左=上から、川嶋洋平、小引寛也+石川典貴 右=上から、竹鼻良文、前嶋章太郎、松本光索

2016/10/29(土)(五十嵐太郎)

フェスティバル/トーキョー16 パク・グニョン×南山芸術センター「哀れ、兵士」

会期:2016/10/27~2016/10/30

あうるすぽっと[東京都]

現代の韓国兵脱走事件、太平洋戦争で特攻を志願した朝鮮人、イラク戦争時に殺害された韓国の食品業者、2010年の哨戒艦沈没という4つの出来事が交差しながら、国家や政治に翻弄された死者を描く力作である。いずれも歯車となった兵士の悲しい運命をたどるが、唯一フィクションとして描かれた脱走のエピソードだけは、制度から逃がれる道かと思いきや、結局、自死に近いかたちでのみ解放されていたのが重い。

2016/10/30(日)(五十嵐太郎)

GOOD DESIGN EXHIBITION 2016

会期:2016/10/28~2016/11/03

東京ミッドタウン[東京都]

グッドデザイン賞2016のベスト100に残った建築/住宅のセクションは、形態のデザインよりも社会的なプログラムの面白さで選ばれた作品が多いのだが、プロダクトの実物がずらりと並ぶ全体の展示から見ると、どうしてもインパクトが弱い。伝え方の工夫が必要かもしれないが。ミッドタウン・アトリウムユニットにて、15の審査報告会、ならびにこのジャンルのベスト100の受賞者プレゼンテーションに立ち会う。さすがに100に残ったプロジェクトは、どれも聞きごたえがあり、審査委員として選んでよかったと思える。特に多くの廃校があるなかで入念な校歌リサーチをして開催したウダーベ音楽祭はもっと上位に上げられたかもしれない。

2016/10/30(日)(五十嵐太郎)

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